子どもの学校選びは親にとって、大きな決断です。
幼稚園に入れるのか?保育園がいいのか?
どんな施設が我が子にとって一番ふさわしいのか?
義務教育の間は公立でも、高校は?大学は?
それとも中学校から私立に入れるべきか?
家庭事情も含めて、本当に難しい決断です。
18歳までの子供たちの人生は、ほぼ家と学校の往復です。
子どもが学校で過ごす時間はかなり長いのです。
基本的に、私は教育の責任は親にあり、家庭教育が一番重要と考えていますが、学校から受ける影響、友達や先生から学ぶものは、子供の人格、性格、習慣、情緒まで大きく左右します。
だからこそ、親は子供の学校えらびに神経を使います。
どうやって子供の学校を選べばいいのか。
長男が幼稚園に入ったのは、私が子連れでアメリカのスタンフォード大学に留学したときでした。
右も左も分からない新しい土地で、我が子の最初の教育施設を探すのは怖かったです。
スタンフォード大の先生にアドバイスを受けて、教会の裏にあるモンテッソーリ式の幼稚園に長男を入園させました。
とっても親切な園長先生でした。
でも、長男は幼稚園に行くのを目いっぱい抵抗しました。
毎日泣きました。家を出る時に泣き、幼稚園の前で泣いて、迎えに行った時も、私の顔を見た途端に大泣きします。
「初めてですから。慣れますよ」と園長先生は言いました。
先生は幼稚園が終わった後に、家までに来てくれて、長男と遊んで、幼稚園生活になじんでもらうよう大変に努力してくれました。
それでも長男は泣き続けました。
そこで、私は長男に理由を聞きました。
「幼稚園に行くのが嫌いなの?」
彼は首を横に振りました。
「先生が嫌いなの?」と聞いたら、
また首を横に振りました。
「じゃ、なんで行きたくないの?」と聞いたら、
目を丸くして、理由が言えなかったのです。
私は考えた末、
「別の幼稚園に行ってみようか?」と聞いたら、
激しく縦に首を振り、笑顔を見せてくれました。
なぜ嫌いなのかは分からないけど、長男にとって、その幼稚園は肌に合わなかったようでした。
その後、私は長男を連れて、保育園と幼稚園巡りをしました。
ある日、スタンフォード大学内にある、大学院生の宿舎の近くにある小さな幼稚園を見にいきました。
着いた途端に、長男は自ら園内に入っていきました。
先生と挨拶をする時に、彼は照れずに自己紹介ができました。
滑り台を見て、すぐ子供たちのところに走り寄って行き、子供たちに声をかけました!
今までなかったことです。
しばらくして、私はそばに寄って、「ここがいい?」と長男に聞きました。
彼は満面の笑みで「ここがいい!」と目を輝かせながら、うなずきました。
私はすぐに申し込みをして、そこに彼を通わせました。
そうしたら、長男は毎日欠かさずに喜んで幼稚園に行ってくれるようになりました。幼稚園が大好きになりました。
いまだに、なぜ長男にとって、そこが良かったのか分からないのです。
特別に遊具がいいのではないし、スペースも決して大きくなかったです。
長男に聞いてみても、彼は全く覚えていません。
不思議な出来事でした。
それを教訓に、子供たちの学校を決めるときには、必ず本人をその学校に連れていき、見せてから決めるようにしました。
次男の時にも、三男の時にも、幼稚園に連れて行って見せました。
小中学校を決めるときも頻繁に見学に行きました。
本当にその学校が好きであることを確認して入れたのです。
結局3人とも同じ小中学校(インターナショナルスクール)に通いました。
3人とも学校が大好きで、「今日は休もうか」と冗談で言うと、
「行きたい!」と叫ぶほど学校が好きでした。
■アメリカまで学校見学に
長男が高校に進学する時、また学校選びが課題になりました。
通っていた学校は中学校までしかなく、次にどこの高校に行くかを決めないといけませんでした。
様々な候補校を見にいきました。
しかし長男はどれも気に入らなかったのです。
そして、
「ママ、アメリカの高校に行きたい」と言い出したのです!
15歳で留学!「早すぎるよ」と私は賛成ではありませんでした。
家族会議を開き、「まずは学校を見に行きましょう」という結論が出ました。
「わざわざ遠い国まで行かなくても、インターネットで見れば十分」という考えもありました。でも、自分の体で感じることの大切さを長男の幼稚園の時に知りましたから、無理をしてでも、彼を連れてアメリカの全寮制の高校を見に行くことにしました。
スタンフォード大学教育学部の私の学友から、おすすめ高校のリストをもらって、休みをとって、高校巡りをしました。
その上で、長男が気に入った複数の高校に申し込みをして受験しました。
長男はそれらの高校に合格!
「一番ランクの高いところに行くのだろう」と私はひそかに思っていました。
ところが、彼が選んだのはカリフォルニアの郊外にある自然に囲まれた高校でした。牧場のようなところにあって、馬の世話をするのが教育の一部になっているのです。キャンプにも出かけたりするワイルドな教育方針でした。
私は死ぬほど心配でした。
「なぜそこがいいの?」と聞いたら、「あそこは天気がいいし、面白そうだから」と言うのです。
馬の世話ができるようになっても、希望する大学に入れなかったら…と私は大きな戸惑いがありました。
でも、子供の意見を尊重するのが我が家の教育方針だったので、その高校に行く事を了承して、送り出しました。
弟たちはお兄ちゃんのその大冒険を見て、その高校に行くことが夢になりました。「いい点数をとって、お兄ちゃんの学校に入る」を合言葉に頑張るようになったのです。
それでも、次男が進学するとき、同じようにアメリカ中の高校を見に行きました。でも最終的に、やっぱりお兄ちゃんと同じ学校を選びました。
3人が大学を選ぶときも大学巡りをしました。
3人とも自らスタンフォード大学を選び、一生懸命努力して、合格しました。
最終決定を子供達に任せるのは怖いけど、利点がいくつもありました。
子供達に決める権利を与えると、子供は熱心に調べるようになります。
見にいけない学校まで、ホームページを見て、自分に合うかどうかを確認していました。
自分で選んだ学校に合格するために、勉強にも熱心になります。
合格すると、その喜びはすごく大きかったです。
親が選んだ学校とは、きっと達成感が違うと思います。
彼らが行くことになった高校も優秀な学校ですが、
それより上のレベルの高校にも合格しています。
親としては、せっかくアメリカのナンバーワンの高校に合格できたのだから、そこに行って欲しいと思いました。
しかし結果として、馬の世話をしながら、希望大学にも合格したので、子供達の方が正しかったのです。
子ども3人ともがアメリカの高校に行くという我が家の学校選択が一般的でないことはわかっています。
しかし、学校を決めるときには子供達とよく相談して、子供の感覚を大事にするということは、お勧めです。
社会の目より子供の感覚を大事にする事で、子供は小さい時から自分の未来を自分が責任持って決めていくことを実感できるのです。
その子の良さが発揮できる環境を一緒になって探すのが学校選びです。
そのために、住まいを変える事もあります。
私たちは新婚当時から横浜に住んでいましたが、長男が小学校に上がると同時に、思い切って彼が行きたかった東京の学校の近くに引っ越しました。学校まで歩いていけて、友達が家に寄れる距離のところに引っ越したのです。
私の友達は、子供が気に入った区立の学校に入るために、家を売って、学校の近くにアパートを借りて住みました。
「生活スペースは狭くなったけど、子供のためにやった事なので、後悔はしていません」と言います。
また、ある友達は子供が学校でいじめられているとわかって、引っ越しました。
「別の学校で、のびのびと子供はやっています。貯金は減りましたが、子供の笑顔が最高な宝です」と言います。
もう一人の友達は孫のために、自分の家を息子に譲り息子の家族に住んでもらって、自分は小さなアパートで一人暮らしをしています。
「嫁は同居を嫌がっています。孫の教育のために、私は家を出ました」と言います。
彼女らの共通点は、生活を変えたことを犠牲と思っていないのです。
子供を最優先にした生き方です。
私はそれを素敵な考えだと思います。
人にはそれぞれの家庭事情があります。
でも学校は子供達の青春そのものです。
親としては、最大の努力をしたいものです。
丁寧に候補を探し、真剣に調べ上げて、子供と一緒に相談しながら学校を選びましょう。
そのプロセスがどんなに面倒でも、決して無駄にはならないのです。
子供はそのプロセスで、なぜ学校に行くのか、どんな環境で学びたいのか、家の経済的な状況はどうなのか、自分の実力はどんなものなのか、将来に何になりたいのか、と真面目に考えるようになるのです。
それは子供の夢を形にするプロセスでもあるのです。
子供にぴったりの学校はきっとどこかにあります。
あきらめずに、その学校を求めていきましょう。