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アグネス・チャンが世界で見た、母子家庭を支えるいろんな支援のかたち

アグネスの子育てレシピ
大きなおなかをかかえる妊婦(イメージ)
写真はイメージ(gettyimages)

最近、子供の貧困が話題になっています。
厚生労働省の調査によると、子供の7人に1人が貧困層にあたります。
そして、ひとり親家庭の約半分が貧困層だといいます。
この貧困率は先進国の中でとても悪いレベルです。

貧困問題は子供の未来に大きく影響します。
内閣府が2021年末に行った調査で、貧困層の子供の家庭では食料が買えなかったことが「よくある」と「時々ある」を合わせると18%でした。
成績はクラスで下の方と答えたのが33%。高校までしか進学を考えてない家庭が37%。その理由では家にお金がないからが15.6%でした。
18%の子供達が満足な食事ができないことは成長期の子供にとって、大きな問題です。
3人に1人の成績がクラスの下の方であることも深刻です。
さらに37%の子供は高校までしか教育を受けることを期待していないのは、子供達の夢まで貧困が原因で奪われているということです。
貧困層の子供達が納税者にならないで社会保障を受ける側になると、結局は国の負担になります。
国はそれぞれの対策で子供の貧困を解決していますが、現状のままでは厳しいのが確かです。

国が行っている対策を積極的に宣伝して、受けやすくするのが課題です。
支援を受ける家庭や子供の自尊心を傷つけることなく、差別につながらない支援の方法が大切です。

妊婦のエコー検査の写真(イメージ)
写真はイメージ(gettyimages)

さらにいろいろ考えられる事があります。
例えば、妊娠中に貧困状態のお母さんは定期検診を受ける回数が少ないといいます。
定期検診は安全な妊娠出産のために必要なプロセスなので、費用の心配なく検診が受けられる方法を広く宣伝する必要があると思います。
また貧困層の妊婦さんが満足に食べていないと、胎児の成長に影響します。
体が弱くして生まれた赤ちゃんは病気しがちになります。親にとって育児は大変になります。
成長につれて、学業にも影響します。
さらに大人になっても成人病に罹りやすくなります。
トータルの人生において、マイナスが多いのです。
丈夫で元気な子供が生まれるための対策が特に大切です。
リスクのある妊婦さん、たとえば貧困な家庭の妊婦さん、未婚の母などへの支援は、ゆくゆくは社会にとって大きなプラスにつながるのです。

食事指導だけではなく、確実に栄養を与えてあげる方法が必要です。
ユニセフがインドの貧困状態にある低年齢層の妊婦さんにしていた対策を思い出します。
スラムに住む10代の妊婦さんは、よく栄養不良な状況になります。
ユニセフは毎日彼女達を集めて、栄養補給を行なっていました。

その方法は特製クッキーでした。一人一人の栄養状態を検査し、必要とする栄養素をクッキーの中に入れます。
妊婦とは言え、まだ10代の幼い女の子は喜んで食べてくれました。
家に持ち帰ると取り上げられる可能性があるので、食べ終わるまで子育てや自分の健康管理の事を教えます。
そうやって、元気な赤ちゃんが誕生することを応援するのでした。
同じような方法とは言いませんが、楽しく、妊婦さんが確実に適切な栄養摂取をできる日本に適した方法がきっとあると思います。

インドを訪れたアグネスさん
インドを訪れたアグネスさん

子供の貧困で最も深刻なのが母子家庭だといいます。
2020年度、子供を施設に預けたいと申し込む親の多くは「仕事と経済」を理由にあげたそうです。
一人で子供を育てながら仕事をする難しさが理解できます。
今はリモートワークが広まっています。女性ができるリモートワークのトレーニングをリモートで受けられるような対策が必要です。
中古のコンピューターや、無料のインターネットなどを用意することが、きっとできると思います。
母子家庭のリモートワーカーの採用に対して、何かしら優遇するようにして、企業に協力してもらえば、お母さんが就職しやすくなると思います。
家でできる仕事をもらえれば、経済的に自立する可能性が出てきます。
母親が家にいながら仕事ができれば、子供のケアが両立できます。
孤立する子供が減り、成績も自己肯定感も高めることができます。
最新技術を利用しながら、支援の形を変えていくことが可能なのです。

私の友達はアメリカで、スペイン語しか話せない新移民の支援をしています。
彼女は女性達にリモートワークを紹介する役目を担っています。
スペイン語ができる女性達にスペイン語で対応が必要な電話サービスの仕事を紹介するのです。
特に小さな子供を抱えているお母さん達にとっては子供と離れることなく収入を得ることができるので、助かっているそうです。
彼女の活動は小さな規模ですが、もっと大きいスケールで同じようなことができるなら、母子家庭のお母さんにとっては大きなチャンスになると思います。

誕生したばかりの長男と(アグネスさん提供)

ユニセフは各国で、子供達が「安全にいられる場所」を作っています。
私はトルコのシリア難民のために作られた「チルドレン セーフ プレース」をいくつか訪ねました。
そこで子供達は遊んだり、勉強したり、心理的なカウンセリングを受けたりしていました。
そこへ行けば、安心して遊んで、学べて、大切にされるという場所です。
親も安心して働きに行き、夜になって迎えに来ます。

同じような場所は香港のカトリック教会にもあります。
私も中学生のとき、ボランティアで行きました。その時は主に子供と遊んだり、知能ゲームをしたり、宿題を見てあげたりしました。
先日、久しぶりに訪ねてみたら、そこでは親子が遊んだり、学んだりしていました。
親のためのプログラムが多く、子供は子供達で支援を受けて、親は親として育児の問題や、仕事の問題を解決できるように支援を受けていました。
肝心なのは夜の8時、9時までやっていることです。親は仕事が終わってから集まってくるのです。
子供達は親に駆け寄り、そして、一緒に本を読んだりします。親の活動があると、他の人が子供達と遊んだりしていました。
それこそコミュニティーという感じでした。

食事は提供していませんが、個人でお弁当などを持ってきて、自分の都合のいい時に食べていました。
「本当に助かっています」「たくさん学びました」「子供の成績が良くなった」「たくさん友達ができた」「私が就職できたので、これからはボランティアで関わりたいです」と親たちの声はどれも前向きでした。

センターがあると、支援したい心の優しい企業や一般市民もそれなりに支援することができます。
日本には「児童館」がありますが、もっとフレンドリーで夜まで賑やかに活動ができるセンターがあったらいいですね。
トルコと香港の「子供の安全な場所」には笑顔がいっぱいありました。
親も子も楽しんでいます。
子供を預けるのではなく、人間が集まって、楽しく遊んで学ぶ場所が素敵だと思いました。

川崎市の子ども食堂。有志が子どもの食事代を先払いする「みーるちけっと」が貼られている
川崎市の子ども食堂。有志が子どもの食事代を先払いする「みーるちけっと」が貼られている=朝日新聞社撮影

日本にある一つの素晴らしい活動は「子ども食堂」だと思います。
この活動を香港の友達に話したら、みんな感動しました。
しかし、「日本は治安がいいからできるのですね。他の国ではできないかも」とも言いました。
確かに国によって事情は違うのです。他の国にとっていい方法でも、日本でできるかどうかはわかりません。
でも、子供の貧困を解決するには全ての手を尽くしてもいいと思います。
お金がないのは惨め、将来がない、夢も見られない……そんな気持ちに子供をさせないのが一番大事だと思います。
あなたは大事にされている、大いに夢を見なさい、問題があったらみんなで解決しましょうと言ってあげたい。子供が毎日、明るく生活ができるようにしてあげたいと思います。

お金はないけど、心は豊か。
色々買えないけど、友達がいて楽しい。
貧しいのは恥ずかしくない、なぜなら、夢がいっぱいあるから!
そんな社会を作り上げるのが理想ですね。それこそ、本当の貧困対策だと思います。