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「働かない若者」のニュースで考える、親は子に何を伝えるべきか

アグネスの子育てレシピ
写真はイメージ(gettyimages)

最近、アメリカで若者が仕事を辞めることが多くなっているそうです。
低所得層だけでなく、高収入のエリートも仕事を辞めています。
仕事はあるのに、やりたがる人がいないという状況が続いているというのです。

「働いても将来が見えないから、働かないで失業手当をもらえばいいと思っている人が多いよ」と、カリフォルニアのカフェのオーナーが説明します。
「普段、私は店に出てこないけど、人手が足りないから、毎日来ることになっている」というのです。
同席していたハイテク企業の経営者も「うちの会社も同じ。若者は、疲れたとか、自分探しをしたいとかの理由でやめていきます。かわりに経験のない新卒を採用するしかありません」と愚痴をこぼしていました。
「その若者達はどこで何をしているの」と聞いたら、
「学校に戻る子もいれば、ぶらぶらして、何もしてない子もいます。旅に出ている子もいますね」ということでした。
もちろん、なかにはよりいい仕事を探している子もいるようです。リモートワークが人気だそうです。

この状況はパンデミックが関係しているといいます。
「一人の時間が増えて、人生について考えるようになり、答えが見つからない若者が生まれている」と私のスタンフォード大の恩師は分析しています。
「自分の未来に希望を失い、落ち込んでいる若者もいいます。不満があるのに、ぶつけるところがないのです」
さらに、その恩師は続けます。
「このままだと、今まで人間がやっていた仕事を機械に代わってもらうようになりますね。それで、社会が良くなるのか、悪くなるのか心配です」
若者が嫌う仕事を機械がどんどんやっていくようになるのかもしれません。

確かに最近はロボットをよく見かけます。ホテルでも、食堂でも、ショッピングセンターでも。ロボットは清掃、接客、ルームサービスをやっています。
スタンフォードショッピングセンターでは警備もロボットがやっていました。ロボットが見回りして、映像をとって、警備員がモニターで見ているという仕組みです。
ロサンゼルスに行った時は、ルームサービスをロボットが運んできました。中国ではロボットが調理している店まで出てきました。日本の空港内、香港のレストランはテーブルにQRコードがあって、携帯でそれを写すと、メニューが出てきて、そこで注文をします。時は人が運んできます。店によっては自分で取りに行くか、ロボットが運んできます。
私たちが見えないところで、機械はすでに人間に代わって、いろいろな仕事をしているのです。

写真はイメージ(gettyimages)

これからは弁護士、会計士、医者などの専門職もロボットがやっていけると言われています。
企業がロボットを使って、利益を増やしています。働く人がいないので、お金を分配する必要がないのです。今後、お金が一握りの企業に集中しないよう、税金の取り方、取ったお金の配り方が経済学者の間に話題になっています。
「国民に毎月定額のお金を分配する案は今までも何度も出てきました。将来はそのようになると思います」と恩師は予測するのです。
そうなると、ますます、働く意欲が減ってしまいます。

「働ける時が華よ」と小さい時から聞き慣れた私にとっては、働かない若者の気持ちが今一つわからないのです。
その話を中国の編集者と話したら、「中国では大学に卒業しても仕事がない人がたくさんいます。働けない人の最新の数字は19%です。でも、私たちの書店で販売人を募集しても、やりたがる若者がいないのです。一方は仕事がない、一方は人手不足という現象です」
なぜ仕事があるのに、やらないのか?と聞いたら、「大学まで卒業したから、もっと素敵な仕事をしたいという願望があるのです。オフィスに働きたいというのが本音だそうです」
仕事につかない若者は「レイフラット」(Lay Flat)、「 躺平」(Tӑng píng )
を選んでいるそうです。つまり、仰向けに寝ていることを選ぶのです。
努力しても報われないのなら、何もしない方がマシという考え方です。

日本語では「無気力」という言葉があります。各国の若者はその「無気力」になったようです。
現実と理想、そのギャップが若者のやる気を無くしているように思います。
大学さえ出れば、輝かしい未来につながる仕事が見つかると信じていたのに、その夢がつぶされて、絶望的になっているようです。
危機感を持った中国政府は、若者に起業を促しています。
「今、いろんな街で、オープンマーケットが流行っている。しかも若者が中心に経営しているの」とその編集者はいいます。
「自分で作った手芸のものや、仕入れた小物などを売っています。面白いものが多いので、結構楽しいです」

写真はイメージ(gettyimages)

前までは、屋台みたいな店は禁止でした。街のイメージが悪くなるから。でも、若者が失業しているので、政府はそれを応援する政策を出して、露天市場がどんどん増えているというのです。写真を見ている限り、かなりおしゃれな感じがします。
でも、それをやっているのは一握りの若者でしょう。多くの若者は受けた教育に適する仕事が見つからないまま、働く意欲を失っているのではと心配です。
こんな話を息子たちとしたら、「イタリアもスペインも若者の失業率はとても高い、これは世界的な現象です」といいます。
世界中に、失業している若者、一度も職につかなった若者が確実に増えているようです。

こんな状況の中で、親は何を自分の子供に言えばいいのか?
まず基本として、なぜ働くのかを考えてみましょう。
私たちの多くは労働時間によって、お金を貰って、それで生活しています。
生活するためにお金が必要なので、お金を稼ぐために働く人が多いのです。
そうだとしたら、「もしお金があっても、働きますか?」という質問をまず自分にぶつけてみることが大切です。

私の周りでは、「働く」「働かない」の間で意見が割れています。
「働かない」と言ったのは専業主婦の親戚です。夫が事業に成功して、裕福な暮らしができています。
事業に成功している親戚は「働きます」と言いました。お金はあるが、働くことが大好きです。
「働くのは生き甲斐です。新しいものを作ったり、それが受け入れてもらったり、たくさんの社員の生活を支えていることに意義を感じます」というのです。
この2人を例にして、息子たちに「どっちの生き方を真似したい?」と聞いてみました。
「何もしないのはつまらないので、働く方ですね」と3人ともいいました。

山本倫子撮影

私自身はこの年になっても働いています。それはお金のためではないのです。
自分の心身の健康のため、人生を面白くするためだと思っています。
働いていると頭を使うし、社会との関わりがあるので、人間関係も密になります。
毎日何かしら問題があるので、それを解決するのに色々対策を考えて、面白いです。
それによって、老化防止にもなるし、楽しいです。
仕事の他にボランティア活動もやっています。
仲間ができて、お互いに励まし合って、力をもらえます。自分の時間や知識を誰かのために使うのはとっても有意義だと思っています。
そして、その自分の姿を息子たちに見せたいのも、働き続ける一つの理由です。

仕事が素敵だからやる、高い給料がもらえるからやるという考え方は間違っていると思います。
もちろん好きな仕事を見つかるのがベストです。
でも、好きではなくても、動けば必ず何か得られるものがあるのです。
どこで自分が好きなものが見つかるのかはわからない、素敵な出会いがあるかもしれないのです。
じっとしているだけでは、進展がないのです。
どんなことも一生懸命やれば、必ず何かが報われると思います。
そんなことを何度も何度も息子たちに話しました。
彼らも同じ考えになったと思います。
人生を面白くするために働くのです。

仕事を辞めて、失業手当で暮らすのは反対です。
何もしないで、親の元で「 躺平」するのも反対です。
自力で生活できる誇らしさや自信が得られませんし、人生で一番動けるはずの時期に何もしないのはもったいないです。
働くの字は「人」が「動」と書きます。なんでもいいから、何かをする。
ボランティアでも、勉強でも、動き続けることこそ、生きることです。
体だけでなく、頭も、心も、いつも動いていれば、必ず何かが生まれます。

パンデミックが落ち着いて、経済が回復したら、今静止している若者は動き出すのでしょうか?
それとも、迷い続け、社会の心配の種になっていくのでしょうか?
遅くなる前に、自分の子供とこの現象を語り合うチャンスをぜひ作ってください。
動く楽しさ、働く意義をあたらためて、議論してみてください。