今年7月の最新の「ビッグマック指数」によると、日本(390円)は上から41番目。
スイスやスウェーデンなど上位常連の国々はもちろん、中国や韓国、ベトナムより下だ。
53カ国・地域の比較なので、下から数えた方が早い。
ビッグマックは米国で5.15ドル。7月の為替レート1ドル=137.87円で計算すると710円になるので、日本人が米国で買うと「高い」と感じ、逆に米国人は日本で2.83ドルで買えることになるので「安い」と感じる。
野口悠紀雄・一橋大学名誉教授(81)は「ビッグマック指数は、購買力平価という考えを土台にしている。ビッグマックという同じ商品を米国で買った場合と日本で買った場合で、同じ価格となるような為替レートと、現実の為替レートを比較している」と説明する。
日本と米国だけを考えると、同じ価格となるにはドルが安くなり、円が高くならなければならない。だが、米国の中央銀行が利上げしているためドル高となり、日本では、日本銀行が金融緩和で低金利にとどめているため、円安となっている。
野口氏は「日本人が外国に行って物価が高いと感じるかは、国内外の物価と為替レートを反映した指数によって決まる。『安いニッポン』といわれるが、まさにそのとおりの結果だ」という。
確かに、2000年4月の指数を見ると、日本は5番目だったので、この20年余りでいかに日本が「安くなった」かがわかる。
「アベノミクス」直前の2012年7月でも、日本のビッグマックは320円だったが、当時の為替レート(1ドル=78.22円)で換算すると4.09ドルとなり、米国の3.96ドルとあまり変わらなかった。
野口氏は「日本はこの20年、特にアベノミクスが始まってからの10年で、急速に貧しくなってしまった。円安政策を推し進めた結果、国際的地位が大きく下がったのだ」と指摘する。
なぜ「安いニッポン」になってしまったのか。
日本は「失われた20年、30年」といわれる経済停滞で、米国と比べ成長率が上がらなかったことが原因とも指摘される。
しかし、それだけではない、と野口氏は分析する。
「好景気の米国で物価や賃金が上がり、低成長の日本で上がらなければ、為替レートが円高になって調整されるはず。ところが、日本は金融緩和によって円安に導いたため、日本の物価や賃金が安くなったのだ」
今回、取材で訪れた国々で、実際にビッグマックを食べて「リアル指数」を調べてみた。
米カリフォルニア州で食べたビッグマックは5.49ドル、国境を越えたメキシコ側では79ペソ(当時の為替レートで3.95ドル)、ロンドンでは3.89ポンド(同4.42ドル)、ドイツ・フランクフルトでは4.69ユーロ(同4.69ドル)、ブエノスアイレスでは860ペソ(当時の公式レートで5.38ドル、旅行客レートで3.02ドル)、そして日本は410円(当時の為替レートで2.80ドル)と、最新のビッグマック指数から少し値上がりしていた。
ちなみに、どこで食べても味はほとんど変わらなかったが、「牛肉大国」アルゼンチンのビッグマックが比較的おいしかったような気がする。