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ベトナムの定番「バインミー」日本でチェーン興した兄弟、窮地救った恩師のひとこと

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「バインミーシンチャオ」のメニューのひとつ
「バインミーシンチャオ」のメニューのひとつ=2022年7月、宋光祐撮影

ブイ・タン・ユイさん(36)は2016年10月、東京・高田馬場に「バインミーシンチャオ」を開業した。

ベトナムの定番ファストフードの店を、「いつかマクドナルドのような全国チェーンにしたい」。それがユイさんの夢だ。

バインミーの店を起業したブイ・タン・ユイさん
バインミーの店を起業したブイ・タン・ユイさん=2022年7月、東京、宋光祐撮影

古都ホイアンのあるベトナム中部クアンナム省出身。高校卒業後に短大に進んだが、先に日本に留学していたいとこの話を聞いて、留学を決めた。「若いうちに行かなければチャンスがなくなる」。1年で短大をやめてホーチミンに移り住み、語学学校で日本語を学び始めた。

念願は2年後にかなった。静岡県の日本語学校を経て、三重県の四日市大学で経営学を学ぶことになった。

やがて弟のタムさん(31)も、ユイさんの勧めで同じ大学に留学した。

大学を卒業したら、しばらく日本で働いてベトナムに戻り、日系企業に就職するーー。当時のユイさんの未来像を変えたのは、旅行で訪れた東京・上野のアメ横でケバブ屋の行列を見た時のタムさんのひと言だった。

「バインミーの方がおいしいから店を開けばきっと成功する」

そのとき、大阪にある技能実習生の日本側の受け入れ窓口となる監理団体に就職していたが、起業を決意した。

「どうせなら日本で一番大きな街でバインミーをはやらせたい」。ほとんど来たことのなかった東京を勝負の場に選んだ。

ネットで電車の乗降客の多い駅を調べたり、仕事が終わってから夜行バスで来て候補地を探してみたり……。兄弟で1年半をかけて計画を練り、語学学校などに通うベトナム人が集まり、ターミナル駅の新宿に近い高田馬場を創業の地に選んだ。

働いて少しずつ蓄えていた貯金に加えて、故郷の親族からもお金を借りて開店資金も準備した。

店舗の賃貸契約で日本人の保証人を求められた時は困った。

悩んだ末に大学時代の恩師に頼みに行くと、恩師は「2人を信じて保証人になる」。

道が開けた。

「バインミーシンチャオ」の店内
「バインミーシンチャオ」の店内=2022年7月、東京、宋光祐撮影

コロナ禍でも、宅配需要を取り込んで売り上げを伸ばし、店舗は札幌、名古屋、神戸などに広がっている。

「バインミーを食べてもらうことは、ベトナムを知ってもらうということ」

店を始めてしばらくしてから、気がついた。ベトナムと日本のつながりが深まるために、自分に何ができるか。そんなことを今は考えている。