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人気爆発! 日本を魅了するユーラシア・グルメたち

迷宮ロシアをさまよう
「チキンキエフ」を猛プッシュするミニストップの店舗(撮影:服部倫卓)

先鞭をつけたシュクメルリ

最近、旧ソ連諸国の料理や食品が日本市場に紹介され、評判になることが多いなと感じます。

先鞭をつけたのは、ジョージア料理の「シュクメルリ」だったでしょうか。シュクメルリというのは、ホワイトソースで鶏肉を煮込んだ料理。ニンニクをふんだんに使うのが特徴で、一説には「ニンニクを世界一おいしく食べるための料理」とされているとか。

今を去ること1年前の2019年12年、牛丼・定食チェーンの松屋が、「世界紀行」シリーズの第一弾として、「シュクメルリ鍋定食」というメニューを発売しました。当初は一部店舗限定だったものの、評判になったので、2020年1月からしばらくは全店舗で食べられるようになりました。

筆者も、噂を聞きつけて、発売直後にシュクメルリ鍋定食を食べに出かけました。実を言うと、筆者はジョージア料理と言えば、小籠包に似たヒンカリや、チーズ入りパンのハチャプリの印象の方が強く、シュクメルリについてはきちんと認識していませんでした。ですので、松屋のシュクメルリがどれだけ本場のそれに近いのかは判断できないのですけれど、鶏肉だけでなくサツマイモも具に加わっていることから考えても、おそらく日本人向けにだいぶアレンジしていることは間違いないでしょう。アレンジついでに、筆者はシュクメルリにちょっと醤油を垂らして、美味しくいただきました。

松屋のシュクメルリ鍋定食は期間限定の商品だったのですけど、今年6~7月にネット投票で「松屋復刻メニュー総選挙」が行われ、シュクメルリ鍋定食が見事1位に輝き、この冬にシュクメルリ鍋定食が復活することが決まりました。選挙戦の時期には、筆者もツイッターなどで散々、「シュクメルリさんを手ぶらで帰すわけにはいかないぞ」などと同志を煽っていたのですが、その甲斐がありました。

松屋のシュクメルリ鍋定食は、サラダ、ご飯、味噌汁付き(撮影:服部倫卓)

コンビニにも進出したシュクメルリ

松屋がシュクメルリをヒットさせたことは、日本の食品業界にかなりのインパクトを与えたのではないでしょうか。すっかり日本で市民権を得たシュクメルリは、コンビニにも進出していきます。

まず、ファミリーマートが今年10月、パウチ惣菜のシリーズ「お母さん食堂」の一つとして、「ごはんにちょいかけ!シュクメルリ」を発売しました。レンジで温めて、ごはんにかけるだけで、ちょっとしたご馳走が出来上がるという優れものです。古来、我が国には「クリームシチューをご飯にかけるのはアリか、ナシか」という論争がありましたが、その論争にも決着をつけてしまいそうな商品です(シュクメルリはニンニクをきかせたクリームシチューのようなものなので)。

さらに、このほど永谷園が「世界のスープ図鑑」シリーズから、「シュクメルリスープ」を発売しました。まず11月にローソンで先行販売され、12月以降はその他のコンビニでも売りに出されているということです。粉末のスープの素にお湯を注いで完成させるタイプですね。

左が永谷園のシュクメルリスープ、右がファミリーマートの「ごはんにちょいかけ!シュクメルリ」(撮影:服部倫卓)

ミニストップは「チキンキエフ」を投入

コンビニの中でも、ミニストップは、独自の商材を発掘してきました。ウクライナ料理やロシア料理で定番の「チキンキエフ」です。我々ロシア畑の人間には、「キエフ風カツレツ」という呼び名の方が馴染みがあるのですが、鶏胸肉のカツレツであり、中にバターが入っていて、ナイフを入れるとそれがジュワっと溢れ出てきて、食欲をそそります。

筆者も早速、近所のミニストップに出向き、どんな様子なのか拝見してきました。冒頭の写真に見るとおり、現時点ではミニストップの一押し商品になっているようで、多数ののぼりが掲げられていました。店の中では、レジ横のホットスナックのコーナーに陳列されており、なるほど、唐揚げやコロッケなどと同列の商品なのだなと理解しました。

実際に、買って食べてみたところ、ウクライナやロシアで食べるキエフ風カツレツとは、やや趣きが違うなという印象でした。本場のキエフ風カツレツは、新鮮な鶏肉とバターの味わいがすべてであり、バターがジュワっと溢れ出るシズル感が魅力です。一方、ミニストップのチキンキエフは、歩きながら食べたりすることも想定しているはずなので、中に入っているガーリックバターソースは固形に近く、食べやすい作りになっています。味も日本人に合うように無難にまとめているなという感じがしました。あまり堅苦しいことは言わず、これはこれとして楽しむべきものなのでしょう。

ミニストップのチキンキエフを切ってみた断面(撮影:服部倫卓)

ロシアからは「スィローク」が上陸

「スィローク」というお菓子をご存知でしょうか。ロシア圏では非常にポピュラーなスイーツであり、カッテージチーズに砂糖やバターなどを加え、チョコレートでコーティングしたものです。

実はこれについては、個人的に反省している点があります。20年ほど前、ベラルーシに駐在していた時に、現地の日本人の友達が、「ベラルーシのスィロークはウマい。これを日本に輸出する商売をやりたい!」といったことを述べていました。それを聞いて筆者は、「こんなに単価が安く、日持ちせず、要冷蔵の商品を、どうやって日本に運んで、利益を出そうというのか。絶対に無理」と、全否定してしまったのです。

それが、今日では、ロシアやベラルーシから実際にスィロークが日本に輸出され、日本のお店やネットで普通に買えるようになっているのです。20年前の己の不明を恥じるばかりです。上述のシュクメルリやチキンキエフは、あくまでも日本の会社が現地の料理を模して作り出したものですが、スィロークは現地から本物が輸入されているという違いがあります。

さて、2020年に入ってから、日本市場に広く出回るようになったのは、ロシアの「B.Yu.アレクサンドロフ」というメーカーのスィロークです。ネットでも買えますが、実店舗では輸入食品店チェーンの「カルディ」で売られています。ただし、冷凍庫を備えたある程度大きな店でないと置いていないようなので、ご注意ください。筆者は、カルディの2つほどの店舗で空振りに終わったあと、ようやく3つ目の店で買えました。

カルディでは、アレクサンドロフのスィロークのうち、ダークチョコ、ミルクチョコ、ホワイトチョコと3種類をラインナップし、「ごほうびスイーツ ロシアプレミアムチーズ」として、税込み321円で販売しています。筆者などは、スィロークは安く買える駄菓子というイメージで捉えていたのですが、アレクサンドロフの商品は素材にもこだわっているそうで、味わいも濃厚であり、ちょっとした高級スイーツです。また、冷凍した状態なら、消費期限も製造から1年間に及びます。なるほど、こういう商品なら、ロシアから日本に輸入してもペイするだろうと納得しました。

高級感漂うアレクサンドロフ社のスィローク。これはホワイトチョコ(撮影:服部倫卓)

大使館がファン獲得を競い合う時代

これ以外に、最近日本に紹介されたユーラシア・グルメとしては、「ラグマン」という中央アジア地域のうどんの例があります。今年の10月にナチュラルローソンから「牛肉とトマトのラグマン風うどん」として売り出されましたが、残念ながら期間限定だったようで、筆者がその存在に気付いた時にはもう終了していました。ウズベキスタンに代表される中央アジアの料理は、日本人の口に良く合うので、次に来るのは中央アジア料理ブームかもしれません。

このように、ここに来てにわかに、旧ソ連諸国の料理・食品が日本で人気になったり話題になったりするケースが増えています。その背景にあるのは、何と言っても、日本の外食チェーンやコンビニによる飽くなき商品開発の努力でしょう。

それと同時に、ジョージアやウクライナの場合は、駐日大使館が情報の発信に協力していることも見逃せません。シュクメルリは、ジョージア臨時代理大使がツイッターに投稿したことで、反響が広がりました。ウクライナ大使も、ミニストップがチキンキエフを売り出したことを知り、早速ツイッターで反応、ミニストップ側との会談も実現したとのことです。我々としても、各国大使館が食文化の発信を通じ日本人ファンの獲得を競い合ってくれることは、大歓迎です。