イギリスでは今、ベトナム初の民間格安航空ベトジェットエアのグエン・ティ・フォン・タオ社長の行動が議論を呼んでいる。
「東南アジア初の女性億万長者」として知られるタオ氏は昨年10月、オックスフォード大のカレッジの一つと1億5500万ポンド(約257億円)を研究費として寄付する覚書を結んだ。そのカレッジが名称を「タオ・カレッジ」に変える計画を明らかにした。
だが、イギリスでは寄付の見返りのようにタオ氏の名前をつけることが波紋を呼んだ。
2011年に運航を始めたベトジェットエアは、当局から罰金を科されても、話題作りのために飛行中の機内でモデルと客室乗務員のビキニ姿の水着ショーを開いてきた。
そのため、「(カレッジの)歴史が失われる」「ビキニ・マネーを喜んで受け取っていいのか」と批判が起きた。
タオ氏は1980年代後半にソ連の大学に留学。経済学などを専攻する傍らで、日本や韓国、香港から衣料品やオフィス機器を輸入販売する事業を立ち上げて財産を成したとされている。
大学卒業後はビジネスで稼いだ資金をベトナムの民間銀行などに出資。不動産事業にも取り組んだ。その事業で得た利益を元手にして2007年にベトジェットエアを創業。女性としては世界で初めて民間航空会社の創業者になった。
今のところ、タオ氏がイギリスでの批判を気にする様子は伝わってこない。
同社の発表によると、今年上半期の便数は5万便を超え、コロナ禍で落ち込む前の2019年の同期を1割上回った。日本や韓国、シンガポールやインドの大都市に次々と路線を就航させ、再び成長軌道に乗っている。
一つの機体あたりの座席数を可能な限り増やすことで、収益を増やしてきた。利用者からは「座席のスペースが狭い」との声が絶えないが、国内ローカルのLCCとして出発したベトジェットエアは、今や国内外で100を超える都市を結び、国営のベトナム航空をしのぐまでになった。
タオ氏は3年前、米誌フォーブスの「アジアで影響力のあるビジネスウーマン」の一人に選ばれた。そのとき、ベトジェットエアを欧州などを拠点にする国際的な航空会社にする夢を語っている。「運航管理や価格などの面で、私たちの競争力と新しいサービスを提供する能力があれば、欧米でも絶対に戦える」