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早まる雪解けに悩んだスキー場運営会社、思いついたのは温暖化の「犯人」メタン利用

World Now 更新日: 公開日:
エルク・クリーク炭鉱で、坑道からメタンを回収するパイプについて説明するプロジェクトの責任者、ジュリアン・ヒュージックさん
エルク・クリーク炭鉱で、坑道からメタンを回収するパイプについて説明するプロジェクトの責任者、ジュリアン・ヒュージックさん=8月18日、コロラド州サマセット、合田禄撮影

米中部コロラド州。ロッキー山脈の間を縫うように走る道を車で走ると、真っ黒な石炭を積み上げた炭鉱がたびたび現れる。

山あいの小さな村にあるエルク・クリーク炭鉱は、2000年ごろから石炭の産出が始まった。かつては年間500万トンの石炭を産出していた。

ただ、炭坑に通じる穴は閉鎖されている。2013年に石炭が自然発火する事故があり、操業を停止したからだ。300人以上が働いていた山の中腹には、地面から直径18インチ(約46センチ)の重厚なパイプが突き出ている。

「パイプは北へ4000フィート(約1.2キロ)先の坑道までつながっていて、圧縮されたメタンが流れてきます」。発電プロジェクトの責任者、ジュリアン・ヒュージックさんが説明した。

地元でスキーリゾートを運営する会社「アスペン」などは、廃鉱になる前の2012年、600万ドル(約8億7000万円)を投資して、メタン発電を始めた。

エルク・クリーク炭鉱で、メタン発電のための装置について説明するプロジェクトの責任者、ジュリアン・ヒュージックさん
エルク・クリーク炭鉱で、メタン発電のための装置について説明するプロジェクトの責任者、ジュリアン・ヒュージックさん=8月18日、コロラド州サマセット、合田禄撮影

雪解けが早くなったことで、スキー客が減るシーズンがあり、温暖化のビジネスへの影響を懸念していた。自社が使う電力をまかなうため、温暖化対策にもなる技術を求めていた。

炭坑を封鎖し、内部にパイプを張り巡らせて、メタンを1カ所に集約する。必要に応じて圧縮し、燃料として1500馬力のエンジンに送り込み、発電する。

3機の発電機をフル稼働させれば3メガワット以上の電力を生む。米国の1800世帯の電力をまかなえる計算だ。

メタンを燃やすと二酸化炭素が出るが、そのままメタンを大気に放出するよりは温室効果を減らせる。

米環境保護局(EPA)によると、全米の年間のメタン排出(2019年)のうち、稼働中と生産終了を合わせた炭鉱からは約8%で、5番目に多い排出源になっている。

カリフォルニアの温室効果ガスの排出量取引市場では現在、発電にメタンを使うことで処理したメタンの25倍の量の二酸化炭素を削減したことと同等だと評価されている。

削減分を「クレジット」として売ることで、電力の販売と合わせて月10万?15万ドル(約1450万~2200万円)の収益も出ており、当初の投資額600万ドルは回収できる見込みだ。

この炭鉱を保有する会社のマイク・ラドロウ社長は誇らしげに語る。

「石炭採掘は、長年、産業や経済を支えてきた。閉鎖されたあとも、気候変動対策に貢献している」

メタン発電は、欧州や中国の炭鉱でも実施されている。