「メタネーション(合成メタン)の利点は、現在の都市ガスの成分とほぼ同じであること。導管や給湯器、コンロを換えずに有効活用できます」
この夏、大阪ガス(大阪市)が開いた記者説明会で、森田哲司・同社エネルギー技術研究所長が力を込めた。
同社の場合、ガス管で家庭に届けている都市ガスの9割(体積あたり)は、メタンだ。
天然ガスは、燃やした際に出る二酸化炭素(CO₂)が石炭より少ないため、燃料としての活用が拡大している。ただ、化石燃料には変わりがない。
そんな中、一条の光となっているのが、ガスを燃やした際などに出るCO₂を回収し、再生可能エネルギーの太陽光発電の電力などを使って、再びメタンを合成するメタネーションの取り組みだ。
合成メタンなら、燃やしても大気中のCO₂は実質増えず、「カーボンニュートラル」への貢献が期待されている。
現状では天然ガスが原料となっている都市ガスについて、大阪ガスは2030年に1%、業界全体でも2050年には90%を合成メタンに置き換える目標を立てている。
実証の場になりそうなのが、2025年の大阪・関西万博だ。
肉や野菜くずなど、万博会場内で出る生ゴミを発酵させてつくるメタンに加えて、会場内の大気から直接回収したCO₂や、再生可能エネルギーで作った水素をかけあわせてメタンを合成。一般家庭なら170世帯分に相当する、1時間あたり計7立方メートルのメタンを会場内で生み出して、会場の空調や厨房での調理に使ってもらう構想だ。
万博予定地から車で10分あまりの大阪ガスの研究所では、水とCO₂を電気分解して、メタンを直接合成する最新研究も進めている。再生可能エネルギー由来の電力から、85~90%の高効率でメタンを合成できる独自技術で、将来は「世界的に(展開が)期待できる」という。