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アメリカの中間選挙 共和党優位が一転、民主党逆転の可能性…一体何があったのか?

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人工妊娠中絶を認めた「ロー対ウエイド判決」を覆す多数派判事の意見書案がリークされたことを受け、アメリカ・マサチューセッツ州ボストンの庁舎前で、「中間選挙が11月8日にやってくる」と書かれた紙を掲げるデモ参加者
人工妊娠中絶を認めた「ロー対ウエイド判決」を覆す多数派判事の意見書案がリークされたことを受け、アメリカ・マサチューセッツ州ボストンの庁舎前で、「中間選挙が11月8日にやってくる」と書かれた紙を掲げるデモ参加者=2022年5月3日、ロイター

インフレと中絶が野心を抑制する中、共和党は中間選挙でのリセットを模索する
GOP seeks midterm reset as inflation, abortion temper ambitions
2022年9月10日付 ワシントン・ポスト

今年の春、この連載のために、私は次のアメリカの中間選挙について書こうと思っていた。しかし、編集者から「少し早すぎる、選挙が近くなってからにした方がいい」と言われた。

彼の判断は正しかった――。私は今、春に書こうと考えていた記事とは全く違う記事を書いている。

春にはすでに、中間選挙の結果がどうなるか、かなりはっきりしていた、あるいはそう思っていた。

歴史的に、政権与党は中間選挙で強い逆風にさらされる傾向がある。中間選挙では、有権者は、先の潮流に乗って押し寄せてきたincumbent party(現政権党)の弱小議員を投げ出すことが多い。

また、政権与党の投票率もdrops off(下がる)のが普通である。野党の有権者は、抗議のメッセージを送るために、より熱心に投票する傾向がある。

共和党が文化闘争のテーマを盛り上げ、経済面で民主党をバッシングすることは、中間選挙に向けた強力な戦略であったように見えた。その結果、共和党は上下両院を奪還するためにhave an upper hand(優位に立ったよう)に見えた。

しかし、状況は一変し、民主党がpull off an upset(逆転する)可能性が出てきた。民主党は下院での敗北を最小限に抑え、中間選挙で過半数をsalvage(救助する)可能性さえあると自信を深めている。

その間、何があったのか。

第一に、立法府の成果である。民主党は数ヶ月の間に、銃の安全性に関する妥協案、主要な技術・製造法案、退役軍人の健康対策、気候・健康・税制に関するパッケージを成立させることに成功した。

バイデンの人気も回復している。民主党が気候変動対策と医療法案を可決した後、バイデンの支持率は、レイバーデー前に38%から44%へと6ポイント急上昇した。

また、学生ローン救済の発表や、MAGA共和党をslamming(強く非難する)最近のスピーチも、一部で好感を持たれているようだ。

かつて共和党の武器だった経済も、上向きになっている。8月のニューヨーク連邦準備銀行の発表によると、アメリカ人のインフレ期待は「かなり」低下している。

特にガソリン価格は、6月のピーク時から1ガロン1ドル以上下がっている。ギャラップ社の景況感指数(現状と見通しの両方を測る)も同様に、6月の低水準からbounced back(回復している)。

6月に最高裁が「ロー対ウェイド事件」を覆し、中絶の権利を弱める判決を下したことで、民主党は中間選挙に向けた有力な争点を手にし、上院の支配権を維持する望みをつないだように思われる。

この判決は、多くの州で女性有権者の登録をsurge(急増)させ、この秋の多くの女性や男性、特に無党派層にとって投票への原動力となった。

バイデンが行っている、選挙を共和党の過激派に対するreferendum(国民投票)と位置づけようとする努力も功を奏している。

彼が取り上げた問題は、最近の最高裁判決、銃乱射事件後の銃規制に対する共和党の抵抗、2020年選挙の正当性を損なうトランプとその支持者たちの活動などである。

共和党も自分たちを効果的に助けてはいない。共和党の予備選挙有権者は、非常に右派的で、とても脆弱な候補者を多く選んでいる。特に上院の見通しは、共和党の初当選候補者が資金調達や支持率獲得に苦戦しているため、複雑になっている。

ある共和党の戦略家は、「これは、昨日の問題に取り組む、個性もなく楽観性もない、昨日のメンバーのような連中だ」 と述べた。

彼は、ペンシルベニア州のメフメト・オズ、アリゾナ州のブレイク・マスターズ、オハイオ州のJ・D・バンスといった候補者を指しているが、いずれもトランプの推薦によってbrutal(残酷な)予備選での勝利に押し上げられた人物たちである。

ヘッドラインに登場し続けるという点でも、トランプの長い影が迫っている。トランプが話題の中心にいればいるほど、共和党にとっては不利になる。

最近、トランプのニュースが多いし、彼の機密文書の不正処理が共和党関連の最大の話題であり続ける限り、共和党はインフレなど自分たちに有利な問題にシフトすることが難しくなる。

最近の世論調査では、アメリカ人の60%以上がトランプは機密文書の関連で違法または非倫理的なことをしたと考えている(この割合は、国家機密のbreach(漏洩)の程度が明らかになるにつれて増加する可能性がある)。

この行動を擁護することにこだわる共和党員は、カルト的な基盤の外ではchilly reception(冷淡に受け止められる)かもしれない。

しかし、トレンドラインが民主党にtilting towards(傾いている)とはいえ、中間選挙には避けられない計算がある。

共和党が下院の過半数を獲得するために必要な議席数はわずか5議席である。超党派のCook Political Reportは、民主党の10議席を共和党寄り、または共和党になりそうだと評価し、共和党の3議席を民主党寄りと評価している。つまり、共和党が過半数を占めることになる。

しかし、多くの民主党議員は楽観的な見方を示している。民主党はまだ大きなハードルに直面しているが、unmistakable(まぎれもない)情勢の変化が起きている。

ミシガン州のエリッサ・スロトキン下院議員(民主党)は、次のように述べた。

「過半数を維持する道はある 。狭き門だが、道はある。6カ月前に聞かれたら、道はないと答えただろう」

民衆党はその狭い道を通り抜けられるかを注視したい。

インフレと中絶が野心を抑制する中、共和党は中間選挙でのリセットを模索する
GOP seeks midterm reset as inflation, abortion temper ambitions
2022年9月10日付 ワシントン・ポスト

民主党の中間選挙の勢いは衰えない
Democrats’ midterm momentum isn’t slowing
2022年9月8日付 ワシントン・ポスト

中間選挙を目前に控え、マコーネルの苦境が続く
With Midterms Looming, McConnell’s Woes Pile Up
2022年9月2日付 ニューヨーク・タイムズ

トランプは中間選挙を国民投票から選択に変えようとしている
Trump is turning the midterms from a referendum into a choice
2022年8月27日付 ワシントン・ポスト

民主党はかつて考えられなかった事態に直面している。下院を維持するための狭き門
Democrats see the once unthinkable: A narrow path to keeping the House
2022年8月27日付 ワシントン・ポスト

民主党は政治的な風向きの変化を感じているが、十分ではないかもしれない
Democrats Sense a Shift in the Political Winds, but It May Not Be Enough
2022年8月24日付 ニューヨーク・タイムズ

通常の年であれば、GOPが席巻するはずだ。しかし、2022年は普通ではない
In a normal year, the GOP should sweep. But 2022 isn’t normal
2022年7月31日付 ワシントン・ポスト