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大統領選は終わっても、まだ見ておくべきアメリカの選挙がある

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米ジョージア州アトランタで11月、選挙前日の集会で民主党の上院候補オソフ氏に拍手を送るオバマ前米大統領=ロイター

"After Biden’s win, parties gird for ferocious Senate runoffs in Georgia"

「バイデンの勝利の後も、政党はジョージア州での苛烈な上院選の決選投票をひかえる」

11月8日付 ワシントン・ポスト紙


米大統領選挙の間、世界中の注目がアメリカに集まっていた。バイデン氏が勝利した今なら、気を緩められると思っている人がいるかも知れないが、現実はそうではない。

その理由として二つ挙げられる。まず、トランプ大統領は敗北した事実を認めたくないので、駄目元であっても選挙結果を不正だとして攻撃してくることである。彼のスタンスは民主主義を否定しているし、すぐに引き継ぎを実行しないと国に悪影響を与えかねない。二つ目として、上院でどちらの党が過半数の議席を獲得できるか、まだ決まっていないことが挙げられる。選挙の結果、共和党が50議席、民主党が48議席を得た。そしてジョージア州の二つの議席が接戦だったため、1月にrunoff(決選投票)が行われる。どちらが勝つかによって、バイデン氏が法案を通しやすくなるかどうかが決まるので、彼の政権運営の命運を握るはずだ。民主党が勝てば、バイデン氏が約束したことを実行できるが、共和党が勝てば、上下院の支配党が異なる「ねじれ議会」となり、オバマ元大統領の時と同じように全てがブロックされ、大統領の政策が通りづらくなる。

従って、この決選投票はferocious(苛烈に)なると予想され、両方の政党がgird(身構えて)いる。記録的な献金が入ってくる見込みで、テレビCMやsurrogates(候補者の代理として選挙遊説をしにくる人気政治家)があふれるだろう。get-out-the-vote operations(有権者を投票所に出向かせる活動)は非常に重要となるが、時期が年末となる上、コロナ禍の中でそれを行うのは容易ではないだろう。

ジョージア州は全米で起きている政治的・社会的な議論を特にembody(体現して)いる。例えば今年、黒人男性アフマド・アーベリーさんがジョギング中に元警察官の白人男性によって射殺されたほか、根拠のない陰謀論集団であるQアノンの支持者が下院議員として選ばれた。
さらに、ジョージア州のpolitical geography(政治地理学)はアメリカ社会の縮図となっている。地方の人や白人の有権者はトランプ氏をpropel(前へ押し出し)たが、バイデン氏は郊外および大都会に住む人や黒人の支持を得た。この上院選だけでなく、大統領選挙でも接戦となり、バイデン氏が僅差(きんさ)で勝った。

民主党はジョージア州で勝つために全力を尽くすだろうが、バイデン氏自身がどれほど参加するかはまだ分からない。彼にとっては難しい、戦略的な判断を迫られるだろう。「アメリカ人が皆一つになるべきだ」と強調している一方で、polarizing showdown(世論を二分する決戦)に巻き込まれたくないのかもしれない。しかし、この決選投票の結果が自分の将来を大きく左右することになるので、傍観するわけにもいかず、板挟みの状況にある。今後の動向を注視したい。