2024年、トランプはいかにして政治的復活を果たすか
How Trump could make a political comeback in 2024
2021年12月25日付 ボストン・ヘラルド紙
「私が賭け事をする人間なら、トランプは再び出馬すると言うだろう 」と、ヒラリー・クリントンは12月のテレビインタビューで語った。そして、次のように警告した。「これはmake or break(運命を左右する)分岐点だ 」「もし彼やhis ilk(彼のような人物)が再び大統領に選ばれたら、私たちの国は見違えるほど変わってしまうでしょう」
第二のトランプ大統領の誕生を深く恐れているのは、クリントンだけではないだろう。しかしトランプが再出馬し、実際に勝利する可能性はますます高まっている。
ドナルド・トランプが2024年に政治的comeback(復活)を果たすための強力な追い風となる、二つの大きなトレンドがある、という。第一に、トランプは依然として共和党をほぼ絶対的に支配していること。第二に、民主党は誰が候補者になるのかが不透明で、党のidentity crisis(自己認識の危機)が深刻になっていて、2024年の大統領選に向けて弱体化していることである。
2024年になれば意欲的なトランプ支持者が、民主党の候補者よりもトランプをgrudgingly(不本意ながら)好む有権者と再び連立を組み、トランプに選挙人団の過半数の支持を与える可能性が十分にある。
さらに2022年の中間選挙では共和党が下院、そしておそらく上院でも大勝すると予想され、トランプは必然的にその手柄を得るため、共和党支持層の間では2024年のトランプ立候補に対する熱意がさらに高まる、との見方が出ている。
トランプが2024年の共和党の指名候補になることはa shoe-in(確実)なようだ。最近の世論調査によると、共和党有権者の47%がトランプ氏を支持すると答えており、最も近い競争相手のフロリダ州知事ロン・デサンティスより37ポイント高い。2024年に立候補を検討しているとうわさされている共和党員のほとんどは、トランプが出馬したら支持することを、すでに表明していると記事は伝えている。
さらに、トランプは資金的な蓄えもできている。テキストメッセージ、電子メール、イベント、広告などの積極的な働きかけにより、トランプは一貫して週に100万ドル以上の資金を集めているという。他の歴代大統領のように大統領図書館や慈善事業の構想に専念するためにshrink from the scene(表舞台から身を引く)のではなく、2度の大統領選挙で培った戦術の多くを継続することで、米国政界で最大級の組織を構築しようとしているのである。
■高まるバイデンへの幻滅
バイデンは、トランプ大統領の4年間にわたるbedlam(大混乱)の後、自身の前任者に対するantidote(解毒剤)として、「強く、ぶれない、安定したリーダーシップ」を約束すると選挙スローガンで提示した。しかし、政権のアフガニスタン撤退をめぐるtumult(騒動)ですら、平穏を取り戻そうとするバイデンのイメージをひどく損ねた危機の一つに過ぎない。
バイデンは今年1月、大統領就任から丸1年を迎えたが、民主党内のdisarray(乱れ)、立法の停滞、サプライチェーンの問題、懸念すべきインフレ、ロシアとの緊張の高まり、オミクロンという感染力の強いコロナウイルスの新たな変異株に直面したことなどが原因で、支持率の平均が40%台前半にとどまっている。
バイデン側のスタッフや他の擁護者たちは、歴史的なパンデミックや低迷する経済といった前例のないcalamity(災難)に直面している中で就任し、上院での過半数がわずかだけであるにもかかわらず、最初の一年で2つの主要法案〈パンデミックから国を救うための景気刺激策と、massive(大規模な)パッケージ型インフラ政策〉を通過させることができたと成果を強調している。
しかし同政権は、デルタとオミクロンというコロナウイルスの変異株を予測できなかったことを含め、この国の課題の大きさを繰り返し過小評価し、民主党のリベラル派と穏健派をまとめるのに苦労してきた。また、大統領とそのチームは明確でreassuring(安心できる)メッセージを発信することができず、多くのアメリカ国民が感じているtravails(苦労)を政府が理解し、より良い未来が待っていると実感させることもできなかった。
しかし、バイデンがいなければ、誰が民主党の候補者になるのだろうか?
バイデンは世論調査の結果が急落しているうえ、任期が終了する頃には82歳となる。カマラ・ハリス副大統領も世論調査の結果の悪化に悩まされており、1期目の初めの年の大統領としては、通例よりもはるかに早く、代替案に関する議論が始まっている。
バイデンは、再選を目指して出馬することを明らかにしている。1968年のリンドン・ジョンソン以来、再選に出馬しないことを選択した大統領はいない。バイデンが心変わりして2024年の大統領選をbow out of(辞退し)た場合、民主党内では最適な代替案が誰なのかコンセンサスが取れていない。上院議員や州知事の中にもformidable(有力な)候補者は多いが、明確な候補者がいないため、予選でまた長い戦いになることが予想される。
さらに面白いことに、ヒラリー・クリントン自身も出馬の可能性を示唆している。トランプ対クリントンの再戦は面白いかもしれないが、それは国にとってあまり有益でも健全でもないだろう。
■刑務所を避ける手段としての立候補?
重要なのは、トランプを再び大統領選に出馬させようと駆り立てるものは何なのか、ということだ。彼のエゴもひとつに違いない。また、adversaries(敵対者)に復讐(ふくしゅう)したいという気持ちもあるのだろう。
しかし、現実的な理由も二つあるという。ひとつはお金だ。政治献金は、トランプ一族が現時点でもっている最も確実な収入源かもしれない。
もう一つは、同様に重要なことだが、彼の法的防御を強化することだという。自分が立候補している限り(あるいは立候補しているような状態であっても)、トランプはあらゆる査問や召喚をpolitical vendetta(政治的復讐)の一環に過ぎないとdenounce(糾弾)することができる。言い換えれば、彼は刑務所に入らないために再選を目指すのだ、と記事の一つは指摘している。
長年トランプを取材してきたニューヨーク・タイムズのマギー・ハバーマン記者も、この説に賛成しているようだ。1月19日に、トランプ前大統領、ドナルド・トランプ・ジュニア、イバンカ・トランプの3人について、金融機関や保険会社に対する財務虚偽記載を監督または手配した疑いがあることが、ニューヨーク州司法長官が提出した法廷書類で述べられている、との報道がなされた。これに対して、ハバーマンは「トランプが出馬するかどうかの疑問は、今朝答えが出たようだ。彼の側近は、捜査が進めば再び大統領選に出馬することを常に示唆してきた」とツイートした。
■民主党はトランプの立候補をひそかに望んでいる?
一方、バイデンのアドバイザーや民主党の戦略家は、トランプが2024年に共和党の大統領候補になるまで、刑務所に入らないように祈っている、という見方もある。
つまり、彼らは、トランプの支持層は何をやっても彼に投票するだろうが、前回の選挙で彼のshtick(特技)に誘惑された「浮動票」は、選挙が盗まれたというトランプの主張や彼が国会議事堂への襲撃に関与したことで、(次回は)懐疑的になるだろう、と計算しているというのだ。
トランプの再選という恐ろしい出来事を防ぐために、民主党が活発になることも予想される。
これに対して、(マイク・ペンスを除く)他の共和党候補なら、トランプの政治基盤の票も当てにでき、さらに、浮動票をより多く引き寄せることも期待できる。それは結果的に、2024年に共和党の大統領選勝利につながる可能性がある。
そのため、あるジャーナリストは、「トランプは間違いなく民主党が好む共和党候補だ」と断言する。ただ、こうも付け加えている。「しかし、彼らは決して公の場でそれを言ってはいけない」
(原文)
2024年を見据えるトランプ氏、ソーシャルメディア禁止令をかいくぐり資金調達の巨大な組織を指揮する
Trump looks to 2024, commanding a fundraising juggernaut, as he skirts social media bans
2021年10月29日付 ワシントン・ポスト紙
なぜトランプは再び大統領選に出馬するのか?それは刑務所に入らないため
Why is Trump running for president again? To stay out of jail
2021年10月31日付 コロンビアン紙
民主党はバイデンを強固に支持している。プランBについてのコンセンサスはない
Democrats Are Solidly Behind Biden. There’s No Consensus About a Plan B.
2021年12月12日付 ニューヨーク・タイムズ紙
トランプ-クリントンIIはコラムニストには良いが、国には悪いだろう
Trump–Clinton II would be good for columnists, bad for country
2021年12月17日付 フレデリックスバーグ フリーランス-スター紙
2024年、トランプはいかにして政治的復活を果たすか
How Trump could make a political comeback in 2024
2021年12月25日付 ボストン・ヘラルド紙
正しい敵
The Right Enemy
2021年12月27日付 バンゴー・デイリー・ニュース紙
ヒラリー・クリントンは「危険な」トランプが2024年に再び勝利する可能性を警告 「運命を左右する分岐点」
Hillary Clinton warns that ‘dangerous’ Trump could win again in 2024: ‘Make-or-break point’
2021年12月30日付 ニューヨーク・デイリー・ニュース紙
バイデンが出馬しない場合、民主党には2024年の有力候補がたくさんいる
If Biden doesn’t run, Democrats have plenty of strong candidates for 2024
2022年1月14日付 ワシントン・ポスト紙
長い滑り台。複数の危機に直面し、人気が低下したBidenの内情
The long slide: Inside Biden's declining popularity as he struggled with multiple crises
2022年1月18日付 ワシントン・ポスト紙