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不耕起栽培(耕さない農業)を支える農機具はこれだ ロボット技術などハイテクも導入

World Now 更新日: 公開日:
トラクターの前側に装着されたローラークリンパーと後ろ側に装着されたドリル
トラクターの前側に装着されたローラークリンパーと後ろ側に装着されたドリル=ロデール研究所提供

世界の農業は、ロボット技術や情報通信技術を駆使し、より手間をかけずに品質の高い作物をつくる「スマート農業」の方向に向かっている。耕さない農業や有機農業も例外ではない。耕さない農業の現場を取材する中で出会った、珍しい農機具を紹介する。

土を耕さない、化学肥料や農薬を使わないため、耕運機や農薬噴霧器といった従来の農機具は使わない。これまでの農機具を改良したり、新たな農機具が開発されている。

ローラークリンパー

耕さない農業では、土を乾燥させないように、ライ麦やヘアリーベッチといった作物を畑に植え、ある程度育つと茎や葉を倒して土を覆う。そうすることによって、雑草が生えるのを抑えたり、緑肥に利用する。

ローラクリンパーはトラクターの前や後ろに装着し、ローラーでライ麦などの被覆作物を押しつぶして枯らす。

刈るのでなく、折るのがポイントだ。枯れてから微生物によって分解されるまでに時間がかかるので、長い期間にわたって雑草が生えるのを抑え、土壌生物や次の作物に栄養を補給できる。

ローラクリンパーや有機農業の研究拠点である、米国ペンシルベニア州のロデール研究所最高経営責任者(CEO)ジェフ・モイヤーさんが開発した。

モイヤーさんは「使う時期や種類を適切に管理すれば、農薬や化学肥料を減らし、作業時間を節約することができる」という。

ライ麦などの被覆作物を押しつぶす際に使われる、耕さない農業の農機具ローラークリンパー
ライ麦などの被覆作物を押しつぶす際に使われる、耕さない農業の農機具ローラークリンパー=ロデール研究所提供

だが、万能というわけではない。雑草を押しつぶしても枯らすことは難しく、被覆作物も適切な時期でないと再び起き上がることがある。

日本で見かけることはめったにない。モイヤーさんは「農家は自分で作ることもできる。私たちは非営利の研究施設なので、設計図を無料で公開している。農家や製造業者は、それをウェブサイトから手に入れることができます」と話している。

ドリル

耕さない農業で、作物の種子をまくために使う。土が被覆作物で覆われているため、草を切り分けて浅い溝を掘り、種をまく必要がある。そうした作業をドリルを使えば、簡単にできる。

米国の農場を取材した際、トラクターの前にローラークリンパーを、後ろにドリルを装着して、一度に作業する光景も見かけた。

ドリル
ドリル=ロデール研究所提供

ウィードザッパー

耕さない農業で被覆作物で覆ったとしても、雑草が生い茂ることもある。そうした雑草を取り除くために使う。

大豆畑などで使われている。農機部の前面のポールがあり、約15万ワットの電気が流れている。一定の高さ以上に育った雑草の茎がポールに触れると、水分を伝わって草全体に電気が流れて枯らすことができる。

化学的に合成された除草剤を使うことなく、雑草を取り除くことができる。雑草を取り除く労力を減らせるのが利点だが、電気が土壌生物や土の健康に与える影響については、まだわかっていないことがあるという。

ウィードザッパー
ウィードザッパー=石井徹撮影

オートモア

ハスクバーナ(本社・スウェーデン)製のロボット芝刈り機だ。本来の使い方とは違うが、茨城大学農学部の農場では耕さない農業の研究で、雑草を取り除く効果を測るための実験に使っている。

高さ3センチ以上の雑草を刈るように設定されている。機械には蓄電池が積まれており、電気が減ると自ら充電器に接続して充電するようになっている。茨城大学では充電設備を太陽光パネルとつないで再生可能エネルギーで発電した電気を使って充電し、環境に配慮した農業を目指している。

実験をしている小松崎将一教授は「ロボットを使うことで省力化とトラクター作業による化石燃料の使用を抑えることができる」と話している。

オートモア
オートモア=石井徹撮影

アイガモン

平城商事(本社・福岡県久留米市)が10年ほど前に売り出した、草刈り機に装着する草取り用カバー。無農薬や有機栽培の水田の雑草を取り除くために開発されたが、畑にも使える。

カバーをつけることで、作物を傷つけることなく、除草剤を使うことなく株間の雑草を取り除くことができる。日本のような小規模の不耕起有機農業には最適。

千葉県匝瑳市で行われている、太陽光パネルの下で不耕起栽培する「ソーラーシェアリング」の農地でも、大豆のうねの間に生えた雑草の除去に使われていた。

アイガモン
アイガモン=石井徹撮影