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【リーマントラベラー東松寛文】知らない自分に気づく だから海外旅行はやめられない

Travel 更新日: 公開日:
「リーマントラベラー」の東松寛文さん


――2年ぶりの海外旅行から戻られたばかりだとか。

新婚旅行でドバイ、エジプト、バーレーン、モルディブ、タイをめぐる18日間の旅をしてきました。2020年2月にブラジル、リオ・デ・ジャネイロでカーニバルに参加して以来です。コロナ禍の2年間は日本でできる最大限の楽しみを探そうという気持ちで過ごし、それほどのストレスは感じませんでしたが、今回、「非日常」はやっぱり海外にこそあると改めて思いました。

日本はすべてが便利じゃないですか。海外では「言葉が通じない」「通貨のレートがわからない」とあらゆることが不便になり、うまくいくと「できた!」という感覚を得られる。それこそ、僕が旅に求めているものです。

――海外旅行での「非日常」体験は実生活にどういかされていますか。

2つの側面があります。即時性のあるものでいえば、心がリフレッシュされること。知らなかったことに出合い、自分の世界が広がってゆく。

金曜日の夜に出発して、月曜日の朝帰ってきて会社に行く生活は、「疲れませんか」とよく聞かれます。たしかに疲れるけれど、仕事をもっとがんばることができる。家でのんびりすれば体力は回復するけれど、そのまま同じ日常が続いていきます。「非日常」を間に入れ込むことで、気分転換になる。今回の2年ぶりの海外旅行は楽しすぎて、心がなかなか日常に戻れませんでしたが。

リオのカーニバルに参加した東松さん
2020年2月、ブラジル・リオのカーニバル

もうひとつは、旅のなかに「自分と向き合うきっかけ」を加えて、さらに仕事がパワーアップしたことです。

振り返ると、入社してから3年間は「超」がつく激務で、自分の時間はまったくありませんでした。仕事が絶え間なく降ってきて、終わりがない。「なぜこの仕事をやっているのだろう」、「自分が本当にしたい仕事だったっけ」と疑問が出てきました。

忙しすぎると、「仕事でこれをしたい」という想いも薄まっていきます。やがて超激務から、激務になり、少し時間ができて、旅をするようになりました。

帰りの飛行機で、いつも振り返りをしています。通信がない、外と切り離された環境は、自然と内省する時間になります。旅行中に撮った写真を見返すと、「なぜ旅先でこれを撮ったのだろう」という写真が出てきます。知らず知らずのうちに自分が心動かされたものに気づく。考えるうち、自分の好きなこと、得意なこと、やりたいことがはっきりしてきました。

新婚旅行中、エジプトのルクソールで気球に乗ったのですが、上空からの景色を心ゆくまで楽しみました。なぜこれほどテンションが上がるのか、考えてみたのです。

ああ、自分は街を空から俯瞰して見るのが好きなんだ。そういえば仕事でも、組織全体を俯瞰して仕組みを作ったり、役割やルールを考えたりすることにテンションが上がる、と気付きました。こんどオーストラリアに行くのですが、そこでもグレートバリアリーフを上から見てみようと思っています。

アメリカ・マイアミ「スーツを干しながら水着でビーチ」
2016年3月、アメリカ・マイアミ

――忙しい仕事の合間を縫って弾丸旅を重ねてきました。

最初の旅はどうしてもNBA(米プロバスケットボール)の試合が観たくて、週末に有給休暇を一日足した3泊5日のロサンゼルス往復でした。それから3連休で韓国やシンガポールに行きました。

最初はただ、自分が「旅をすることが好き」なのだと思っていました。次第に、自分のテンションが上がる体験には共通点があるとわかったのです。

スーパーや市場に行って現地の人と同じように買い物をする、服を売っている店員さんに、若者が集うクラブはどこか聞いて行ってみる、ガイドブックで紹介されていないレストランを現地の人に聞いて探す、といったことです。逆に、よく知られた観光地に行っても、そこまで心が動きませんでした。

なぜなら、現地の人の「生き方」に触れることが刺激になるからです。それまでサラリーマンであることが自分のすべてでしたが、海外旅行で意識が変わりました。

――例えばどんな場面で?

旅にのめりこむきっかけとなったのは、2015年に旅したキューバでした。

2013年に放送されたテレビ番組で、写真家の紀里谷和明さんがキューバを訪ね、アポなしで民家に入っていく様子が強く印象に残っていました。

僕もキューバに行って市街地を歩き、May I come in? (入ってもいい?)と聞いて、民家を訪ねました。知らないおばさんの家で家庭料理をごちそうになりました。大きな音が聞こえる家をのぞいたら、踊っていたお姉さんたちに招き入れられダンスの練習をさせられたり、水たまりに足をとられ、靴が泥だらけになって困っていたら、近所のおばさんが靴を洗ってくれたり。

キューバの人たちは社会主義で貧しいというイメージでしたが、心は豊か。いろいろな生き方をしている人がいる、いろんな生き方があっていいということに気づき、そしてそれを多くの人に伝えたいと思うようになったのが、「リーマントラベラー」として旅を続け発信するきっかけです。

キューバ・ハバナにて
2015年5月、キューバ・ハバナ

「今の会社がすべて」と思っている、自分と同じようなサラリーマンに、外の世界や、さまざまな生き方があることを伝えたい。そうして、「サラリーマンしかない」のではなく、「サラリーマンを選ぶ」と決めたことで、仕事の満足度が上がりました。同じように考える人を増やしたいですね。

2019年、インドのアムリトサルというパキスタンとの国境に近い街に行ったときにも、想像と違った世界を見て驚いた覚えがあります。

「ワガボーダー」という国境では毎日、国境を閉鎖するセレモニーがあり、インドとパキスタンの軍隊がそれぞれ旗を持って行進をする様子をスタンドから大勢の人たちが見学します。

両国は外交上、仲が悪いので、危険なムードかと思っていました。しかし現地では、音楽フェスティバルのような盛り上がり。ダンス音楽に合わせて、女性と子どもたちが踊る場面もありました。両国の軍隊は同じ動きをして行進を終え、最後に握手をしていました。

国と国との関係が悪くても、人と人の関係となると話が変わってくる。これは行ってみないとわからない。こうした経験があるからこそ、海外旅行はやめられません。

インド・パキスタン国境
2019年4月、インド・パキスタンの国境「ワガボーダー」

――非日常を体験するために、事前に旅のリサーチを念入りにしますか。それとも、ぶっつけ本番が多いですか。

ほぼぶっつけ本番です。行く前に何をするか決めてしまうと、現地でタスクをこなす感覚になってしまいます。予定どおりできないと気分が下がる。情報はガイドブックで網羅されているし、SNSでも風景の写真を見ることができますが、期待が上がりすぎると、満足度が弱まってしまいます。

予定が崩れてもいいという気持ちで、軽く下調べをして、行きたい場所には地図にピンを立てることが多いです。絶対行きたい「一軍」の場所と、行けたらいいなという「二軍」の候補地を挙げておく。時間にゆとりを持たせておいて、現地でお祭りがあれば、行ってみたり、「一軍」のついでに「二軍」の場所を訪ねたりします。

東松寛文さん

――コロナの経験を踏まえた、これからの旅についてどう考えますか。

移動手段に変化が起きていますし、感染対策も国によって違います。

今は「行きたい国」より「行ける国」を考えるといいと思います。コロナ対策をしっかりして入国制限の緩和をアピールしていたり、観光の発信を積極的にしていたりする国は、受け入れの態勢が整っていると感じます。自然とふれあう機会が多い場所も、感染対策をしながらの旅がしやすいのではと考えています。

海外へ行くには時間もお金もかかります。「これがしたい」、「ここに行きたい」という目標が浮かばないかもしれません。それでも、海外に行くと、日本で味わうことができない「非日常」を体験することで、大きな満足感を得られます。海外旅行の不安をいかに減らして、一歩を踏み出す勇気になれるか。その力になりたいと考えています。

(文・斉藤真紀子、インタビュー写真・関根和弘、旅の写真は東松さん提供)