カラフルで力強くエネルギッシュな1万2000種のワイルドフラワー
カラフルで力強くて、ポジティブなエネルギーを感じさせる「ワイルドフラワー」(自然環境に自生する花)。西オーストラリア州には、1万2000種ものワイルドフラワーが存在し、そのうち約8割はここでしか目にすることができない固有種だと言われる。
オーストラリア出身のヴォーカリストでヴァイオリニストのサラ・オレインさんにとっても、ワイルドフラワーは身近な存在だ。ワイルドフラワーと聞いて、まず思い浮かべるのが「ゴールデン・ワトル」だという。
「お花がもともと大好きなのですが、なかでも『ゴールデン・ワトル』は思い入れのある花です。日本やヨーロッパでは『ミモザ』と呼ばれることもありますが、オーストラリアの国花です。また、その花の黄色と葉の緑色はオーストラリアのナショナルカラーでもあります。
ふわふわとした可憐(かれん)な印象から、一見、か弱い花に思えるかもしれません。ですが、オーストラリアは、森林火災も少なくない、乾燥した国。そんななかでも生き延びられる“力強い花”とも言えるんですね」
その土地ならではの景色とともに、生命力にあふれた多種多様な花を楽しむ
もう一つ、「ワイルドフラワー」と聞いて、多くのオーストラリア人が思い浮かべるのが「バンクシア」など、形がユニークで色味が強い花だという。こうしたワイルドフラワーのなかには、日本のフラワーショップなどでも手に入れることができるものもあり、サラさんも「花を通してオーストラリアを知ってもらいたい」という思いから、友人に花を贈る際には積極的にブーケに入れるようにしている。
「力強さを感じますよね。生命力が本当にすごいと思います。先住民のアボリジナルピープルは、日本人が漢方薬を使用するように、ワイルドフラワーをブッシュメディスンとして使ったりもしてきたそうです。ただ美しいだけでなく、その土地の生活に役立って生命を支えてもいる。素晴らしいなと思います。
オーストラリアの空港の検疫検査は、非常に厳しいことでも知られています。私は、仕事ではヴァイオリンを持って移動しているので、それは強く感じます。裏を返せば、貴重な固有種を守ろうとする姿勢の表れとも言えるんですね」
西オーストラリア州では、その土地ならではの景色とともにワイルドフラワーを楽しむことができる。険しい岩山とともに、美しい海を背景に、といったように、ここにしかない風景とのコントラストも魅力だ。多種多様な花たちが見頃を迎えるのは、7月から12月中旬。
花前線が南下していくため、訪れる時期によって最適なフラワースポットも異なる。西オーストラリア州には、11のワイルドフラワートレイルがあり、9月にはパース市内にあるキングスパークで「ワイルドフラワーフェスティバル」も開催されている。
「以前、2度ほどパース周辺を訪れたことがあるのですが、花の時期ではなかったこともあり、フラワートレイルもワイルドフラワーフェスティバルもまだ体験できていません。私の“訪れてみたい場所リスト”には入っているのですけれどね。11のトレイル、すべて魅力的で行ってみたいですね。前出の『バンクシア』一つとっても、素直にその花が育った環境を見てみたい。どのような環境で、こうした花々が育ったのか、ものすごく興味があります。
この土地ならではの空気や太陽を全身で浴びてみたい、と思います。自然の中を散策し、花が生まれた環境などに思いをはせれば、目の保養になるだけでなく、学びにもつながると思います」
パースの街を吹き抜ける海風に、ユーカリや花々の香りが乗って
パースの街には、午後になると「フリーマントルドクター」という、海風が吹き抜ける。花の季節になると、そこにユーカリや他の花々の香りが混じり合い、より一層爽やかな風となり人々を包む。こうした街の空気や匂いは、旅の記憶と切っても切り離せないもの。サラさんにとって、いま計画してみたい“理想の西オーストラリアの旅”とはどのようなものなのだろう。
「せっかくなら、お花の時期に行ってみたい、といまは思います。一週間では足りないかな。とくにワイルドフラワーは、五感を使って楽しむことができるもの。“匂い”は、さまざまな記憶をよみがえらせる力があって、私自身、日本でユーカリの匂いを嗅ぐと、一瞬で幼い頃を思い出します。まさに故郷の香りなんです。
以前、感銘を受けた西オーストラリア州の景色にも再び出会いたいですし、まだ見ぬ景色にも出会いたい。これから初めて西オーストラリア州を訪れる方にも、さまざまな花の香りとともに素敵な思い出をつくって頂きたいなと思います」
*現在、新型コロナワクチン2回接種を完了している方はオーストラリアへの渡航が可能です。オーストラリア出入国に関する状況、情報はこちらから。