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ギリシャ・サントリーニ島で出会った中東料理の定番、フムスのそっくりさん

中東を丸かじり
ギリシャのサントリーニ島

「世界一の夕日」で知られるギリシャのサントリーニ島。ここには、中東の代表的な料理であるフムスに似たファバ・サントリーニと呼ばれる前菜がある。フムスはヒヨコ豆を使ったペースト料理。ファバ・サントリーニは、異なった材料を使ったギリシャ版のフムスと言える位置付けだ。調理法や食材、味わい、食感の類似性は、フムスについて考える材料を与えてくれる。

ギリシャ・クレタ島で食べたファバ

似て非なる料理

ギリシャを旅する前、現地の料理について調べていて初めてファバ・サントリーニの存在を知った。ファバは通常、英語でソラマメを意味するが、ギリシャ料理のファバ・サントリーニで使われるのは、黄色えんどう豆(イエロースプリットビーンズ)に似たサントリーニ島固有の在来の豆である。この豆は、遺跡から残滓が出土し、3500年以上も前から食べられていたことが分かっている。

ファバ・サントリーニを食べてみて、フムスに近い料理ではないかとの予想は覆えり、随分と方向性の違った料理であると思った。似たような食材が、ちょっとした調理法の違いによって、ここまでの差異を生み出すのには驚いた。例えるなら、イタリアのトスカーナ地方にある小さなレストランで出たパスタを食べた時に受けた衝撃と共通する。そこで注文したのはトマトのパスタ。塩とトマト、オリーブオイルだけで調理されたシンプルさ。ニンニクや胡椒、ナツメグ、チーズなどは入っていない。足し算の料理ではなく、これ以上引くことのできない引き算の手法で生み出された究極の解と言える。

サントリーニ島の夕日を見に集まった人々

足し算のフムス、引き算のファバ

ファバ・サントリーニがフムスと決定的に違う点は、豆の素材そのものの味わいが最大限に引き出されていることである。フムスは通常、濃厚でクリーミーなタヒーナというゴマペーストが加えられる。地域や店、家庭の作り手によって、そこにクミンや唐辛子などのスパイス、パセリやコリアンダーの香草が加えられ、ヒヨコ豆の味そのものというよりは、重層的に奏でられる味覚を楽しむものだ。

これに対して、ファバ・サントリーニは黄色えんどう豆に似た豆を玉ねぎとともに茹でてピュレ状にし、塩とオリーブオイルだけで味付けするのが基本。そこにレモンが入る場合もあるが、余分な素材やスパイスを入れないのが主流であり、豆の柔らかな味わいが引き立つ。前菜として、また、メインの肉や魚料理の付け合わせとして供される。茹でたばかりの温かい豆をピュレ状にして食べる場合と、作り置きしたものを常温で供する場合がある。豆の柔らかな味や香りを楽しみたいなら、温かいファバに軍配が上がるだろう。

このファバ・サントリーニのシンプルさは、豆の美味さがあってこそ。日本で現地の豆に似たオーストラリア産の黄色えんどう豆をインターネット通販で取り寄せ、ファバ・サントリーニに近い料理を再現してみた。ところが、やはり現地で食べた味わいは出ない。現地でも、地中海の周辺地域で収穫される黄色えんどう豆を代用としたファバは、ファバ・サントリーニのような味は出ないといわれている。サントリーニ島の火山の噴火に影響を受けた土壌や地中海に囲まれた乾燥しつつも適度な湿度がある気象条件が、豆の美味さを左右するようだ。

豆が良ければフムスもシンプルに

ごまペーストやスパイス、香草を加えた足し算の料理であるフムスも、引き算の手法を使ってみてはどうかと思うときがある。ヒヨコ豆を茹でていて、その茹で加減を豆をつまんで味見する瞬間だ。いい豆の場合は、ただ塩も加えずに茹でただけの豆そのものに十分な旨みがある。こんなときは、何粒も味見してしまう。

自宅でつくったフムスの写真をSNSにアップしたところ、レバノンの友人が「こっちではスパイスやハーブはほとんど入れないよ」とコメントした。筆者が約4年間暮らしたイスラエルやパレスチナでは、足し算のフムスが多かったが、レバノンには、ファバ・サントリーニのように、シンプルな味付けで豆そのものの味わいを楽しむフムスも存在するようだ。質の良いヒヨコ豆が手に入ったら、シンプルな味わいのフムスをつくってみよう。

ヨルダン川西岸ナブルスで食べたフムス
【動画】ファバの作り方