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フィリピン人家政婦への「上から目線」が気になる 外国人労働者をめぐって考えた 

育休ママの挑戦~赤ちゃん連れ留学体験記~
たまに行っていた学校近くのカリンデリア。あっさりめの味付けをした野菜炒めが多いのと、スープがいつも温かかった=セブ市、今村優莉

■ローカル食堂は120円でお腹いっぱい

私はルールー(当時3カ月)に授乳する必要があったため、ランチタイムは基本、毎日、宿泊先のコンドミニアムの部屋に帰っていたが、たまにママ友と外に食べに行くこともあった。

学校近くに、「carinderia(カリンデリア)」と呼ばれる食堂が並ぶ一帯がある。フィリピンのローカルフードで、屋台のように道路に突き出たテーブルの上に大皿が並べられ、そのなかから、好きなおかずを2~3品選び、ご飯と一緒に食べるというスタイルだ。給食室にありそうな大きな鍋に入ったスープからは、いつもおいしそうな香りが漂っていた。どのくらいおかずを注文するかにもよるが、だいたい1人あたり60~80ペソ(約120~160円)でお腹いっぱい食べられる。

■彼に言いたかったあの日のこと

同じ日にセブ入りしたエミさん(仮名、31)と、「彼も呼んで一緒にランチしよう」ということになったのは、親子留学生活が始まって1週間を過ぎたころだったと思う。

彼、というのは私たちが通う学校でインターンシップをしている日本人の男性スタッフだった。仮にK君としよう。日本の大学卒業を翌年に控えた、まだ20代前半のK君は、英語も上手で性格も明るい。だからこそ、私とエミさんはどうしても彼に伝えたいことがあった。

午前中の授業が終わると、私たちは、K君を誘って学校近くのカリンデリアに行った。

「ねえK君さ、家政婦なんですから全部やってもらえば良いって言ったじゃない? あれ、あんまり良い表現じゃないと思うんだけど」

運ばれてきたいくつかのおかずをつまみながら、エミさんが本題に入った。

セブに到着した初日の夜、買い物を手伝ってくれた家政婦さんにたくさん荷物を持たせることを心配した私たち2人に彼は
「全部家政婦に持ってもらえば良いんですよ。家政婦なんですから」と言った。

ゴーヤチャンプルーや茄子のスープ、唐揚げなどが並ぶカリンデリアのおかずたち

K君は
「え?そんなこと言いましたっけ、僕」
と目をまん丸くして言った。

エミさん 「うん、言ったよ。スーパーの買い物の時。たぶん、『遠慮はいりませんよ』というつもりだったと思うけどさ、ああいう言い方は改めたほうがいいと思う」
K君は、こちらの表情を注意深くみている。すぐには意味を飲み込めていない様子だった。

私は、ここはもっとはっきり言ったほうが良いと思った。

私 「つまり、家政婦なんですから、って言葉の中に、なんとなく上から目線っぽいものを感じちゃったんだよ。彼女たちには何やらせても良い、みたいなさ」

K君 「えー!そうなんですか?いやあ、ホント覚えてないんですけど、もし言ったとしてもそういうつもりじゃなかったです」

…そんなつもりじゃないほうが、根が深いと言える気もしたが。

エミさん 「K君の言い方はね、なんとなく『お金を払っているから何をしてもらってもいい』というように感じたの。私たちに気を遣ってくれたのかもしれないけどね、それならなおさらそんな言い方はしないほうがいいよ」

私 「それにさ、家政婦さんがやっていることって、多くの日本人ママが日本でやっていることなんだよ。だから、ああいう言い方されると、カチンとくるんだよね」

カリンデリアは、4人も座ればぎゅうぎゅうのテーブルが二つか三つあるだけの小さな食堂だ。さらに私たち3人は、テーブル席が埋まっていたので、壁に取り付けられた幅の広い板に、横並びになるように座っていた。だから、互いに顔を向き合わせないまま会話だけが進んでいた。ふと、私たちは2人してK君を追い込んでいる気がして話を止めた。

家事に対する見方が我々と大学生のK君とで違うのは当たり前かもしれない。K君だけのせいには出来ない気もした。

たまに行っていた学校近くのカリンデリアその2。店によっておかずの数も種類も味付けも実にさまざまでこちらはどちらかということこってり系が多かったような。店主の中にはカタコトの日本語で話しかけてくれる人もいた=セブ市、今村優莉撮影

私たちは、フィリピン人家政婦に対して、学校の他の日本人スタッフ、ひいてはセブ島、いやフィリピンの日本人社会がそういう態度を取っているのではないか、などと聞いた。K君をかばったつもりが、逆にもっと追い詰めてしまった。彼は「いやいや…」と言葉を濁し、さすがに気まずい雰囲気が漂った。

■多くの日本人が無意識に思っているのでは……

沈黙を破ったのはK君だった。

「僕、家政婦さんからの信頼は日本人スタッフの中でも高い方だと自負しているんです。信頼してもらえるために、彼女たちが困っていることがあれば小さなことでも相談にのっています。日本人のお母さん方とフィリピン人家政婦との架け橋になるつもりで仕事しているんです。だから、家政婦たちを見下しているとか、何やらせても良いとか、そんな気持ちは本当にないんです」

ランチタイムは1時間しかない。気がつくと、あと15分で午後の授業が始まる。私とエミさんの2人でお支払いをすませ、別々に学校へ向かった。

「でもさ、きっと日本人の多くって、こんなふうに途上国の人をみているんだろうなって思ったな」

部屋で家政婦兼シッターのジョセさん(左)と遊ぶルールー(中央)とシンシン(右)。セブのおもちゃ屋で500円ほどで買ったアルファベットのパズルマットを「CEBU」と並べてくれたのはジョセさんだ。間にゴミなどがたまらないよう常にふいてくれていた=今村優莉撮影

帰り道、エミさんがポツンとつぶやいた。

「私本当に家政婦さんに感謝しているんだ。彼女のおかげで今、どれだけ助かっているか。彼女たちに失礼な態度をとってほしくなかったんだ」

日本政府は今年4月から、外国人労働者の受け入れを増やすために「特定技能」という資格を新たに設けた。国内の人手不足を補うため、これからも外国人労働者は必要となっていくだろう。だが、日本は、外国人労働者にとって魅力的な国なのだろうか。賃金だけ見ればそうかもしれない。だが、受け入れ側が「働かせてやっている」と言ったような目線を持っていれば、労働者との間には埋まることのない溝ができるだろう。今はまだ「受け入れ拡大」なんて言っていられるが、将来、外国人に頼らざるをえなくなったときに、こうした人々に選んでもらえるのか。ふと、そんなことを思ったK君とのランチだった。

***Brokenな英語を直すため、私は朝9時から午後4時まで授業を取りました。先生はユニークな顔ぶれが多く、おしゃべりが大好き。日本人ママから不満が出ることもありました。