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NZ親子留学も残りわずか あこがれのダイビングライセンスに挑戦

育休ママの挑戦~赤ちゃん連れ留学体験記~ 更新日: 公開日:
エメラルドグリーンの海に映えるカセドラル・コーブ。長い年月をへて浸食した、アーチ状の洞窟のような入り江は、自然が作り出した芸術空間として「大聖堂」と呼ばれているという=2019年3月、ニュージーランドのコロマンデル半島、今村優莉撮影

私が、息子2人を連れて親子ホームステイをしたフィティアンガ。この街があるコロマンデル半島は、ニュージーランドの北島にあり、緑豊かな大自然と透き通るエメラルドグリーンの海に囲まれている。風光明媚な場所は映画のロケ地に使われたことでも知られ、多くの観光客をひきつける人気スポットがたくさんある。

日本帰国を翌週に控えたある週末。私は観光地の一つ、カセドラル・コーブという場所にいた。映画「ナルニア国物語『カスピアン王子の角笛』」で、ペベンシー4兄弟が地下鉄からナルニア国に戻ってくるときに出てくるワンシーンに登場する、美しい岩窟だ。

この日、スキューバダイビングのライセンス「Cカード」を取得するための海洋実習が、ここで行われていた。

ダイビングのライセンスを取るというのは、私が数年来あこがれ、いつかやりたいと思っていたことの一つだった。もともと、山よりも海が好きなタイプで、大人になってからは、旅行で国内外の海に行っては体験ダイブを楽しんでいた。フィリピン・セブ島に親子留学していた時は、日本から遊びに来た夫と、ジンベイザメで有名なオスロブ地方までセブ市からバスで3時間かけて行き、世界で一番大きな魚と泳いだ。

フィリピン・セブ島南端の町オスロブでは、ジンベイザメを間近に見られて感激=2018年12月、夫撮影

海に潜り、果てしなく続く青い世界を漂い、大小さまざま、色とりどりの魚やサンゴ礁をみていると、自分が抱える悩みなんてとってもちっぽけで、遠くに流されていくように感じる。海から上がると、いつもすがすがしい気持ちになれた。水泳は得意ではないし、趣味といえるほど回数をこなしているわけでもないが、海に行ったら潜りたい。私にとってはそう思うほど魅力的なアウトドアアクティビティーだった。

実は、Cカード取得を勧めてくれたのは、シンシンとルールーのベビーシッターで、私の最初のホストマザーでもあるエリーさん だった。エリーさんの次男がスキューバダイビングのインストラクターをしていたことがあり、「フィティアンガは、NZのなかでも人気のダイブスポットがたくさんあるし、わざわざここまで来てライセンスを取るニュージーランド人もいるのよ」と教えてくれたのだ。

私たち母子3人がフィティアンガに着いた翌々日、エリーさんはドライブがてら、次男がかつて働いていたというダイブショップに連れて行ってくれた。

Cカードは、正式には「Certification Card」といって、ダイビングをする時に使う認定証のことだ。これを持っていれば、ダイビングに必要な知識とスキルを持っているという証明になり、世界のどこででもタンクを借りたり、体験ダイブよりも深いところに潜ったりすることが出来る。PADIなど国際的なスキューバダイビングの団体が発行し、学科と実習(プール・海洋)をクリアすれば取得できる。運転免許証しか持っていない私にとって、まさに自分のもう一つの顔を証明してもらえるようで、ようは「持っていたらカッコイイ」とずっと思っていたのだ。

「でも、NZにいる間にCカードを取得することができるんでしょうか」。そう問う私に、日に焼けた肌がまぶしいダイブショップの女性インストラクターは言った。

PADI オープン・ウォーター・ダイバー・コースのeラーニングの学習画面

「もちろん。学科はeラーニングを申し込めば自分の好きなペースで家でも出来ますよ。eラーニングを終えたら実習に進みますが、プールと海洋実習はそれぞれ1日ずつなので、週末の2日あれば終わります。万が一、滞在期間中にすべてのコースが終えられなくても、日本に戻ってPADIのショップに行けば、続きから受けられますよ」

せっかくなら、NZで取った方がカッコイイ。そんな思惑もあり、私はその場で申し込んだ。

……勢いで申し込んだものの、eラーニングと呼ばれているこの学科講習、スキューバダイビングの仕組みや器材の説明、事故防止の基礎知識からダイバーとしての心得など、およそ6つのセクションに分かれてナレーションつきで説明してくれるオンライン教科書なのだが――全部英語だった。

各セクションとも十数個のエクササイズがあり、各エクササイズに、クイズ形式のミニテストがある。すべてのテストで75%以上合格をして、ようやく実習に進めるのだ。

日本語版に切り替えようかと途中で泣きそうになったが、ええい、これも英語の勉強じゃ。腹をくくり、語学学校を終え、息子たちの世話をして寝かしつけると、夜の2時ごろまで黙々とeラーニングと向き合う日々が続いた。

水中の自然環境や生物、ダイビングに関する物理学や化学についてなど、日本語で学んでもなかなか難しい内容を、どうやって英語でクリアしたのか。今も自分で不思議なのだが、人間、やればなんとか出来るらしい。約5週間、毎晩コツコツと進めていたeラーニングをギリギリで終えた私は、日本帰国を翌週に控えた最後の週末に、滑り込みでプールと海洋実習を申し込んだのだった。

こうして、晴れて私はNZでスキューバダイビングのライセンスを取得した。

ジャーン!

もう一つ、フィティアンガで行ってみたい場所があった。ホットウォータービーチだ。地元では有名な景勝地の一つで、子連れでも行けそうな場所として、留学前に目星をつけていた。

ホットウォータービーチには、リンダさん宅に引っ越してまもなく、車で連れて行ってもらった。その名の通り、砂浜を掘ると、地中から温泉が湧き上がってくる。まさに、「自分だけの温泉」が堪能できる。本来なら、スコップを持参して自力で掘るところから楽しみは始まるそうだが、子連れで水着でもない私たちは、誰かが掘ってすでに楽しんだあとの「残り湯」で十分エンジョイできた。特にシンシンは、オムツもろともびしょびしょになりながら、小さな足をひたひたとさせてぬるま湯と砂の感触を楽しんでいた。

ホットウォータービーチで自分たちで掘った温泉を楽しむ人々=2019年3月、ニュージーランドのコロマンデル半島で、今村優莉撮影

ホットウォータービーチからの帰り道、車のハンドルを握りながらリンダさんがつぶやいた。
「もう少し時間があればな」

いろいろなところに連れて行ってあげたかった。うちは、毎年2回は必ずキャンプに行くのよ。テントを張って、寝袋を持って。大自然のなかで星空を見上げて。リンダさんがそういうだけで、私の目の前には、チャーリーとソフィーを両腕にかかえ、夜空の下で寝転びながら楽しそうにキャンプファイアーをしている光景が目に浮かび、本当によだれが垂れそうだった。

私たちも温泉の「残り湯」を楽しんだ=ニュージーランドのコロマンデル半島のホットウォータービーチで、リンダさん撮影

次の日の夕方、チャーリーが「シンシンに魚をみせてあげたい」と言って、私たちを釣りに連れて行ってくれた。学校が終わってから、すぐそばの海辺で短時間だけ。チャーリーは、キャンプで使う自分のテントも手際よく張ってくれた。少し風が強い日だったが、チャーリーは毛布まで用意してくれていた。私とルールーは、テントの中で毛布にくるまりながら、2人の様子を眺めていた。

釣りに連れて行ってくれたチャーリー(右)とシンシン(左)。2人とも、家からずっと裸足だった=ニュージーランドのフィティアンガで、今村優莉撮影

2歳になったばかりのシンシンに、チャーリーは魚を釣るにはどんな環境やテクニックならば良いのか一生懸命説明して聞かせ、自分の身長の2倍以上はありそうな釣り竿を、シンシンにも持たせてくれた。魚は釣れなかったが、シンシンは初めて触れる釣り竿や、エサに釣られて寄ってくる小さな魚をみて「Fish! Fish!」と大興奮。いつのまにか熟睡しているルールーを抱き、釣りを楽しむ2人をみながら私は、子どもたちがもう少し大きければ、もっと親子留学を楽しめたかもしれない、と思いを巡らせた。

チャーリーが用意してくれたテントは、小さいのに雨風も十分によけられるしっかりとしたつくりで、私も色違いで同じものを買った。たったの9NZドル(約600円)だった。

テントを買った2日後、私たちは帰国の日を迎えた。

***決して順風満帆とは言えなかったNZ留学ですが、私はたくさんのことをこの街で学びました。次回は私の親子留学を振り返ろうと思います。