1. HOME
  2. LifeStyle
  3. ニュージーランドで初の親子ホームステイ 赤ちゃんがいても家は土足、鍵もかけず

ニュージーランドで初の親子ホームステイ 赤ちゃんがいても家は土足、鍵もかけず

育休ママの挑戦~赤ちゃん連れ留学体験記~
日本でもセブでも続けてきた「寝相アート」。NZ到着の翌日に生後8カ月を迎えたルールー(中央)を砂浜に寝かせ「8months in NZ」と書いてみた=2019年2月、フィティアンガで、ホストマザーElleさん撮影

2019年2月、私は息子とともにニュージーランドの北島コロマンデル半島の海岸沿いにある人口約5000人の街、フィティアンガにやってきた。当時、シンシンは1歳11カ月、ルールー8カ月。この、自然豊かな小さな街が、これから私たちが親子留学する舞台となる。

ニュージーランドに行ったのは生まれて初めてだった。 

東京からオークランドまで約11時間。乳幼児2人を連れてのフライトは、目も当てられないものだった。5時間ほどのセブへのフライトもそこそこ大変だった(第6回目)が、バシネットもテレビもない狭いLCC機体だったことを思うと、今回はちゃんと最前列でバシネットもある席だし、しかもテレビ付きだ。

「よし、子ども寝かせて映画が見られる!」なんて喜んだのもつかの間。そうは問屋が卸さないぞとばかりに、シンシンとルール-は交互に泣き、わめき、機内をハイハイしようとした。乗客からあからさまなクレームは向けられなかったが、人々が寝静まった時間帯に限って活動的になる子どもたちをどう静かにさせるか、気が気じゃなかった。

シンシンを抱っこし、ルールーを授乳しながら、うつらうつらしてルールーを座席の下に落としてしまった。心配した客室乗務員が来て、まず私にさらっと毛布をかぶせてくれるまで、私は自分のおっぱいがポロッと出ていたことにも気づかなかった。

11時間のフライトで、機内で放映していた「ボヘミアン・ラプソディー」を10分も観られなかったどころか、一睡も出来なかった。小さな赤ちゃん連れの長時間のフライトは、激しくオススメしない。

ヘロヘロになりながら到着したオークランド空港。学校が手配してくれたドライバーさんが私の名前が書かれた紙を持って待ってくれていた。そこから、目的地のホームスティ先へは、190キロ、車で2時間半の距離だ。セブから戻ったばかりの私は、基礎的な英語力が向上していたせいか、ドライバーさんは「留学にきたばかりなの?信じられない!あなたの英語はすでに素晴らしい!」と褒めたたえてくれ、ニュージーランドが初めてという私に、いまから行く場所がどんなに素晴らしいところか語ってくれた。

山を越え、海沿いを走り、牛や羊がたくさんいる農場を駆け抜けるステキなドライブになるよ!オークランドのような大きな街ではないけど、自然にあふれ、緑豊かで空気がきれい。人々はみな裸足で歩くほど清潔な街だよ・・・。しかし、私はおそらく10分もしないうちに深い眠りにおちていた。だから、ドライバーさんが話してくれていた、車窓から見えていただろうステキな景色を知らないまま、目的地についた。

Hi, Yuri! Welcome, welcome!

そんな声で、私は起きた。
見ると、開けられた車の窓から、ホストマザーが笑顔で呼び掛けてくれていた。ドライバーさんは、ぎりぎりまで私を寝かせてくれていた。

車から降りると、くらくらした。ま、まぶしい。セブも常夏だったが、もっとこう、ぐっと肌に差し込むような強い日差し。ああ、これが南半球の太陽か。
ふらふら、っと車から降りた私を、ホストマザーがぎゅっと抱きしめてくれた。「良く来たね!」

ホストファミリーの家の庭を歩くシンシン(手前)と、ベビーカーでひなたぼっこするルールー(奥)。=2019年2月、ニュージーランドのフィティアンガで、今村優莉撮影

ホストマザーはElle(エリー)さん(59)。これまで10年にわたって約30組を受け入れてきた。ヨーロッパ圏を始め、日本や韓国など国籍もさまざまな留学生の世話をした、この街でもベテランに入るホストファミリーだ。最年少は14歳の日本からの少年で、3年にわたりホスティングした。「子どもの成長をそばで一緒にみてあげられるのが一番嬉しいのよ」と、ホストファミリーの醍醐味を語ってくれた。親子での受け入れ経験もあるという。「こんなに小さな子どもを受け入れたのは初めてだけどね」

エリーさんの家は1階建てだった。道路に面した広い庭には色とりどりの植物が植えられ、庭に面したリビングの大きな窓には、太陽の光が燦々と差し込まれていた。

ソファセットの中央には、マットが敷かれ、子どもたちがハイハイしたり、オムツを替えたりできるスペースがすでに用意されていた。

玄関から入って右手が広いリビング、奥の部屋がエリーさん夫妻の寝室、バストイレを挟んで2部屋が、エリーさんが受け入れている留学生たちの部屋だった。

駐車場にはキャンピングカーのほか、ボートトレーラーとピックアップカーもあった。周りを見ると、そのような家が多かったから、この辺の家では「標準装備」のようだった。

ホストマザー・エリーさん(左)が用意してくれた2人乗りのベビーカーにのるシンシン(下)とルールー(上)。奥は、同じ時期にホームステイしていたオステラさん=2019年2月、ニュージーランドのフィティアンガで、今村優莉撮影

エリーさんは、常に1~2人を同時に受け入れていた。私たちが到着したときは、すでにドイツからの高校生、オステラさんがホームステイ中だった。私たちの部屋は、オステラさんの隣の部屋になった。もともとエリーさん夫妻が使っていた少し広めのベッドを、私が子どもと3人で寝られるように移動してくれたという。

そのほかにもエリーさんはシンシンとルールーのために、2人乗りのベビーカー、ハイチェア、ベビーサークル、ベビーバスを用意してくれていた。学校からチャイルドシート2台も借りて、車に取り付けてあった。台所には、子ども用のプラスチック皿とフォーク、スプーンのセットが置いてあった。「そのうち孫に使わせるから良いのよ」と言っていたが、どれも、請求書にはないものだ。私は、来る前に「大人3人分」のホスト代金が請求されたことで値段交渉した自分を恥じた。小さな子ども2人をホスティングするのは、物理的にも大変な準備になることを、ここに来て改めて思い知った。

前回 にも書いたように、私のような乳幼児2人付きの母親を受け入れてくれるホストファミリーを見つけるのは難しかっただけに、エリーさんの受け入れに深く感謝した。

ホストファミリーの家のリビングでくつろぐシンシン(手前)とルールー=2019年2月、ニュージーランドのフィティアンガで、今村優莉撮影

いくつか、家のルールがあった。

① 家に入っても靴は脱がない。つまり、エリーさんが用意してくれた子どもが過ごすリビング中央のスペース以外は、みな土足だ。
② 玄関の鍵もかけない。「かけている家なんてない」(エリーさん)という。
③ 食事はだいたい夜7時から8時。離乳食の時間が決まっている子どもたちは、好きな時間に与えて構わない。
④ キッチンは好きに使って良い。ファミリーとも共用の大きな冷蔵庫のほかに、エリーさんは「子どもたち用に」と、小さな冷蔵庫を準備してくれていた。私はそこに、離乳食に必要な材料を入れ、出し入れして構わないとのこと。
⑤ 水は水道水を飲む。「ミネラルウォーターを飲む習慣はないし、水道水がきれい」(エリーさん)だからだ。
⑥ 掃除は自分でする。エリーさんも掃除をしてくれるが、週に1度ほどという。掃除機があるので、それを勝手に使って構わないとのこと。
⑦ 洗濯機も自由に使って構わない。乾燥機はない。洗い終わったら、各自、裏庭にある共同の大型物干し台に吊す。
⑧ シャワーは1日1回のみ。水を節約するためだ。バスタブはあるが、お湯ははらないこと。

などなど。いずれも、日本にいるときに事前に確認していたことだったから、特に驚きはなかったが、ハイハイまっさかりの赤ちゃんを連れて、靴を脱がず、鍵もかけない家でのホームステイは、なかなかスリリングなことだとは思う。

家族は、エリーさん夫妻、3人きょうだいの長女、エリーさんの母(82)。そのほか、大型犬1匹と猫2匹、ニワトリ3匹がいた。まさにブレーメンの音楽隊の世界だった。(ロバはさすがにいなかったが、向かいの農場に牛はいた)

ホストファミリーが裏庭で飼うニワトリに、おそるおそる触るシンシン(左)。右はホストマザーのエリーさん=2019年2月、ニュージーランドのフィティアンガで、今村優莉撮影

私たちは、通常より2日前倒しして着いた。週末の間に、赤ちゃん2人の生活に双方が慣れておく必要があったからだ。

週末、エリーさんは車で街を案内してくれた。案内といっても、30分の徒歩圏内に、大きなスーパーが二つ、いわゆる商店街は一つだけ。車でまわると15分もかからなかった。

日曜日には、海に連れて行ってくれた。フィティアンガは、海辺の街なので、歩いても行ける距離だが、人々はたいてい車で移動する。海が見える通りにたくさんのビアガーデンやレストランがあり、街に一つだけという公園もあった。遊具もあり、週末ということもあって多くの子連れの家族でにぎわっていた。

***セブの時とは違い、今回は私が1人で地元の語学学校に通い、その間子どもたちは、ベビーシッターに預けることになりました。保育園に空きがなかったためです。そのベビーシッターとは。