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勝手なママに付き合わせて……セブ島留学に主治医は眉をひそめ、上司は絶句

育休ママの挑戦~赤ちゃん連れ留学体験記~ 更新日: 公開日:
シンシンとルールー2人の母子手帳=今村優莉撮影

育休ママの挑戦~赤ちゃん連れ留学体験記~⑤ 1歳3カ月差の年子(兄・シンシン、弟・ルールー)を育てるアラフォーママ(この春、新聞記者に復帰)です。育児休業中、フィリピン・セブ島での母子留学を決めた私は、かかりつけ医に常備薬の相談をしに行きました。

■これまでのお話

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東京の「留学情報館」で「ママ・赤ちゃん留学」マネジャー、近藤英恵さんのカウンセリングを受けた私は、母子3人で臨む親子留学の渡航先として、フィリピン・セブ島で2018年5月にオープンしたばかりの「kredo kids(クレドキッズ)」に決めた。その後、あらかじめ打診をしていた別の留学エージェントから、ニュージーランドに「下の子が生後8カ月ころになれば受け入れ可能な学校がある」との返答をもらい、勢いで「セブ終えたらそっち行きます!」と返事をするのだが、まずはセブ島だ。

渡航予定日は2018年9月。6月に生まれたルール-の3カ月の予防接種を終えてからと決めた。渡航にあたり、かかりつけの小児科を訪ね、常備薬について相談することにした。

主治医は年配の女性医師で、小さな病院だが、産婦人科、婦人科、小児科を備え、約20年の歴史がある。地域からの信頼も厚く、分娩を手がけなくなってからも、出産以外はすべてここ、という女性も少なくないと聞く。毎朝受付時間が近づくと、入り口の前には列ができるほど混んでいる。

出国約1週前、ルールー(中央)の誕生3カ月の記念に撮った「寝相アート」。真ん中の文字は「個」を表す中国語の文字「个」=2018年9月、今村優莉撮影

我が家もご多分に漏れず、母子そろってお世話になっていた。主治医は、フィリピン渡航計画を聞くなり「えー」と眉をひそめた。

主治医「ママ、なんで今いくの?シンシンもルール-もまだ小さいし、なんにも覚えられないよ」
私 「いえ、今だから行きたいんです。子どもが記憶する年齢になるまで待っていたら、こんなにまとまって時間がとれる時期はもう二度と来ないと思って」
主治医「だからって、ルール-まだ3カ月だよ?もう少し待てないの?」
私 「せっかく行くなら、長く滞在したいんです。来年の復帰前に」
主治医「ママ、英語苦手なの?留学って、大学時代とかもっと若い頃にするものなんじゃないの?」

……うーん、おっしゃるとおりです。

主治医は普段からとても親身になってハキハキと話してくれる、とても話しやすい女性だ。彼女の元には外国人の患者もよく訪れ、診察室から流暢な英語が聞こえてくることもあった。だが、今回ばかりは彼女のハッキリとした口調に私はたじろいだ。

私 「はい。苦手なんです。復職する前に勉強しておきたいんです」
主治医「へー。分かったよ。ママの勝手につきあわされて、子どももかわいそうだ」

ズキーン。そうだった。子どもたちよ、勝手なママに付き合わせて本当にごめん。

でも、彼女はやっぱり親身だった。「じゃ、行くなら万全の態勢にしなきゃね」
シンシンは風邪をひくと咳とたんがからみやすい体質だった。8月に入るとじんましんにも見舞われた。普段から下痢もしていた。主治医としてそうしたことをすべて知る彼女は、咳止めや解熱剤などを含む風邪薬と整腸剤、じんましん用のシロップや塗り薬、貼り薬に加えて目薬も処方してくれた。それも、多めに。

かかりつけ医で多めに処方してもらった薬と、市販薬。そのほか、蚊よけ対策として子ども向けの虫除けスプレーやワンプッシュで24時間効くとかいう蚊よけスプレー、コンセント不要の電池式蚊取り線香なども持ち込んだ。ベビー用UVカットも必需品だ=今村優莉撮影

ルール-の予防接種も懸念材料だった。子どもは生後2カ月から1歳になる間に、B型肝炎や小児用肺炎球菌ワクチンなど、計十数回接種する必要がある。生後2、3カ月の予防接種を受けた後、帰国するまでの4カ月間に受ける必要がある予防接種は3本。主治医は、いろいろと電話で確認をとりながら、回数が調整できるタイプのワクチンを選んでくれたり、残りの接種は帰国後でもいいと教えてくれたりした。

飛行機もチャイルドシートが必要?!

予防接種や医療対策も一段落し、いよいよ出発に向けての条件が整ってきた・・・と言うときになってまさかのハプニング。

それは、セブ行きのチケットを予約する際になって発覚した。

「大人1人につき2歳未満は1名まで搭乗可能」

と言われた。ほかの航空会社にもいくつかあたってみたが、やはり同じだという。つまり、私は、1歳6カ月のシンシンと03カ月のルールー2人を連れて搭乗できないことになる。

この情報は、さすがの留学情報館も知らなかった。「何しろ、こんなに小さい子どもを2人連れて行かれるママは今村さんが初めてなので……」

知らなかったのは仕方ないが、では、私はどうすれば渡航できるのだろう?

いろいろ調べた結果、結局、LCCのセブパシフィック航空では、大人分の座席2席を購入することを条件に、大人1人でも乳幼児2人を連れて搭乗することは可能ということが分かった。だが、その際に大人用の座席に載せる幼児には「航空機専用のチャイルドシート」が必要とのこと。

幼児用航空機セーフティベルト「CARES(ケアーズ)」。FAA(アメリカ連邦航空局)が唯一承認しているハーネスタイプの商品だ。ベルトのラベルにFAAの認証と記載されており、このラベルがない商品は不可としている航空会社も=今村優莉撮影

ひ、飛行機専用のチャイルドシート?!

そうなんです。飛行機の座席に乳幼児が座る場合、航空会社によって機内専用のチャイルドシート着用が義務づけられている場合があるんです。

レンタルしている航空会社もあるが、LCCのセブパシフィックは「ありません」。

ただ、チャイルドシートとして、アメリカの連邦航空局(FAA)が認可した子ども向けの飛行機専用ハーネス「CARES」を着用すれば搭乗できるという。

ネットでCARESを購入し、私たちは、ようやくセブ出発の日を迎えたのだった。

上司に報告すると……

おっと忘れてた。出発を2週間後に控えたある日、私は上司の携帯に電話をした。「実は、英語を勉強しに子どもと一緒にセブ島留学に行ってきます」
「うんうん、いいじゃない。どれくらい行くの?」
「4カ月くらいです」
「え……。そんなに長く行くの?」

上司の頭に何がよぎったのか分からないが、戸惑っていた様子だ。おそらく、育児休業中の部下に「今から留学してくる」という報告を受けたことはなかったのだろう。長期間日本を離れることを、人事に一言伝えた方が良いのではないか、と言われ、出国便と滞在先の住所、学校名と緊急連絡先などを提出。報告すると、「気をつけて行ってらっしゃい!」というメールが返ってきた。

*幸いなことに応援してくれる声の方が多かったため、私はセブ島への親子留学に踏み出すことが出来ました。ママ友にも声をかけてみました。興味を持ってくれた友人もたくさんいましたが、様々な理由で見送りました。次回は、そんな声を紹介してみたいと思います。