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ゾウをめぐるアフリカ各国の異なる事情と割れる議論

アフリカを旅する
チョベ国立公園で草を食べるゾウ=9月20日、石原孝撮影

密猟などが相次ぎ、アフリカで絶滅の危機が指摘されているアフリカゾウ。ただ、大陸で最大の生息数を誇るボツワナは9月からゾウの狩猟を再開した。現地で取材すると、アフリカゾウの生息数はこの10年近くでほとんど変化がなく、地元住民のゾウに対する憎悪感情が高まっていた。

ボツワナ政府が狩猟解禁を発表したのは今年5月。「人間とゾウによる衝突や家畜への被害が増大している」と理由を説明し、関係機関との協議を重ねてきたと強調した。政府機関「野生動物・国立公園局」の地域事務所によると、同国立公園付近では週に1度ほど、ゾウの襲撃で重傷・死亡事案が発生している。

ゾウにいとこを殺されたリチャード・カシュウィーカさん(63)は「ゾウは私たち人間を殺すだけでなく、生活を脅かしている。狩猟の解禁は賛成だ。ゾウの数を管理するためには、日本のようにゾウのいない国に売るのも手だと思う」と語った。

チョベ国立公園に近接する街で宿泊施設を運営するリチャード・カシュウィーカさん。「客が泊まる部屋のすぐそばまで、ゾウが来た」と話した=9月26日、 石原孝撮影

実際、ボツワナと国境を接するジンバブエでは、保護団体からの批判はあるものの、他国にゾウを売って収入を得る動きを続けている。最近も他の野生動物の保護費に充てるとして、30頭の若いゾウを輸出したという。

国際自然保護連合(IUCN)によると、1970年代までアフリカに100万頭以上いたとされるゾウは象牙を目的にした乱獲などで激減。89年にワシントン条約で象牙の国際取引が原則禁止され、生息数は2000年代半ばに約50万頭まで回復した。

だが、近年はタンザニアなど東部の国を中心に密猟が多発。16年までの10年間で同国のゾウの数は60%も減少したという。象牙は中国や日本などで古くから宝飾品や印鑑として珍重され、高値で取引されてきたほか、現地の貧困や汚職問題も密猟が後を絶たない理由にあげられている。

チョベ国立公園で草を求めて川を渡るゾウの群れ=9月19日、石原孝撮影

今年8月にスイスのジュネーブで開かれたワシントン条約締約国会議は、アフリカゾウの象牙の国内市場がある日本などに対し、密猟や違法取引をなくす対策の実施状況の報告を求めることを全体会議で決定。アフリカ中部、東部の国が中心になって求めていた「国内市場閉鎖」は見送られた。

一方、ボツワナのようなアフリカ南部では、ゾウの生息数は比較的安定している。もちろん、南部の国でも密猟問題は存在するが、アフリカ全体の現在の生息数約41万5千頭のうち、アフリカゾウの60%強は南部の国に生息していると言われている。

特に、ボツワナはゾウの食料となる水や草木が豊富にあり、国内で紛争もなく、安定した生息数を保ってきた。保護団体「国境なきゾウたち」の2010、14、18年の調査では、12万6千頭~13万頭が確認され、アフリカ全体の約3分の1を占めた。北部にあるチョベ国立公園は、ゾウの楽園として日本人を含む多くの観光客が訪れる場所になっている。

ボツワナに住む住民たちに、「アフリカゾウは近い将来、絶滅すると思うか?」と尋ねると、変なことを聞く記者だなとでも言うように、全員が渋い表情を見せた。そして、「ゾウによる人への襲撃や農作物の被害が多くなっているのに、絶滅する訳がない」と言われた。

アフリカは広く、国それぞれに状況は違う。治安が安定している国もあれば、昼でも気軽に外で歩けない地域もある。言語も英語、フランス語、ポルトガル語、スワヒリ語やアラビア語など様々だ。

ゾウの生息数を巡る議論でも、激減している国もあれば、ボツワナのように安定している場所もある。多様なアフリカ大陸を語るうえで、「アフリカは一つではない」という視点の大事さに改めて気づかされた取材だった。