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断捨離の極み?!モロッコの先住民ベルベル人の暮らし

荻野恭子の 食と暮らし世界ぐるり旅。
絨毯の模様だけで空間がスッキリおしゃれに映える、遊牧民の石の家(荻野恭子さん提供)

◉様々なルーツが交錯するモロッコ

旅をしていると、世界の文化の交差点のような、ルーツの混在した国に出会うことがあります。北アフリカのモロッコはまさにその典型。イスラム、アラブ、フランス、トルコ、スペイン……。料理に関しても、様々な食材やスパイスが複雑に重なり合っています。

昨年は縁あって、先住民であるベルベル人の実際の暮らしを訪ねることができました。彼らにはいくつもの部族があり、遊牧する人もいれば都市に暮らす人もいますが、モロッコの複雑な民族文化を繋いできたと言われる人たちです。

◉水がない砂漠の国だけれど、食材は豊か

前回まで、モンゴルの遊牧民の暮らしについてお話ししてきましたが、モロッコもまた、砂漠の国、遊牧民の国です。国土は日本の1.2倍ほどと小さく、国の大半をサハラ砂漠が占めるのですが、モンゴルとは条件が大きく異なります。

まず、海に面している点。地中海や大西洋から、豊かな海の恵みがあるので、魚介類が豊富です。伺ったアトラス山脈の近くは、砂漠地帯ではありますが、標高4000メートルもあって雪が降るため、雪解け水がオアシスとなり、農作物が収穫できます。麦やぶどうを始め、さまざまな食材の原産国でもありますし、野菜、豆、果物ほか、食材の宝庫。観光と農業で食べている国とも言えますね。遊牧民がいるので、家畜もいます。本当に豊かな国なのです。

◉民族衣装でルーツを見分ける

歴史的には、先住民であるベルベル人が暮らすなかに、ギリシャ人、ローマ人、アラブ人、トルコ人、スペイン人、フランス人が入植したという背景があるので、宗教も言語も多彩。実に多くの民族が暮らしています。ベルベル人はベルベル諸語を使いますが、部族ごとに衣装が異なり目印になっています。それがまた、刺繍や手工芸が凝らされて素敵なのですよ。私もついつい帽子を買い求めてしまい、自宅にコレクションして眺めております。標識などはアラビア語と、公用語のフランス語。スペイン語を使うところもあり、意外と英語は通じにくいところが多いですね。

部族ごとに衣装を着ることで目印に。色が綺麗(荻野恭子さん提供)

◉昔のままの自給自足の暮らし

誘われたのは、アトラス山脈の南側に位置する、ワルザワートという砂漠地帯のベルベル人の集落。家は石の家で、電気も水道もガスもなく、昔のままの自給自足の暮らしを営んでいました。1年は、農業と遊牧とにサイクルが分かれていて、遊牧期間には、モンゴルのゲル同様にテントを使い、農作期間には、石の家に住んでいます。

遊牧民のテント(荻野恭子さん提供)

◉遊牧がベースになっているから、とにかくモノが少ない

家は大きな岩山のようなところにあり、住居が埋めこまれているように見えました。彫刻のように風景に溶け込んでおり、興味深い眺めです。

室内は、遊牧民とあって本当にモノがなく、すっきりとしていました。木枠や扉やドアといった建材が、部分的に岩と組み合わせてあって、それも特徴的。持ち物といえば、絨毯、かまど、編み物、少しの調理道具程度です。茶色い空間に、美しい模様のモロッコ絨毯や、工芸品が生えて、必要なものしかないのに素敵なのです。片付けの必要ないシンプルな暮らし。モノが少ないのは良いなと思いました。

岩山と同化したような、石の家(荻野恭子さん提供)

◉物々交換から対価を必要とする暮らしに

村から少し行くと、オアシスがあります。物々交換をするためにキャラバンたちが行き来していて、遊牧の人たちも育てた椰子やデーツを売りに行ったりしていました。

オアシスは数百キロごとにあり、その近くに畑があります。とは言え、石の家には水道もないですし、サハラ砂漠が大半を占めていますから、やはり水は乏しい。

彼らは、日の出と共に起き、日の入りと主に寝て暮らしていました。ですから、一家のお母さんたちの仕事は、朝起きたらまず、水を汲みに行くことから始まります。そうして、お茶を飲み、食事を作って畑の仕事をします。農業をしながら家畜を飼っている人もいましたね。少数民族の文化であり、貴重な収入源でもある、刺繍などの工芸品もつくっていました。

水道も電気もなく、竃があれば、そこで暖をとりますが、プロパンガスも使っています。かつてはオアシスで物々交換して暮らしていましたが、今は対価が必要になってきているので、プロパンで沸かした湯でお茶を入れて観光客に売ったり、石の家を観光客に見せることも、生活の糧になっているようでした。私が「写真を撮りたいのですが」と言うと、お金を求められましたね。

シンプルな竃で火を炊き、自給自足の暮らしをしていました(荻野恭子さん提供)

国内でも、カサブランカ、フェズ、シャウエン、マラケシュなどは道も電気も敷かれて都市化していて、お金さえあればなんでも買えます。でも、昔のままの彼らの暮らしぶりは実にシンプルで、良い意味での衝撃を受けたのでした。

→次回はクスクスほか、モロッコの風土から生まれた料理についてお話しします。