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「サザエさん」に並ぶ長寿番組も! チェブラーシカだけではないロシアアニメの世界

迷宮ロシアをさまよう
今回ロシアのアニメを語ることになったので、我が家のDVD棚を漁ったところ、かろうじてこんなものが出てきた。左はロシアで買ってきた「ビンニー=プーフ」のブルーレイ、右は「霧の中のハリネズミ」などのノルシュテイン作品を収録した日本発売のブルーレイ。(撮影:服部倫卓)

金字塔作品の誕生から50年

日本のアニメ映画黎明期を描いたNHKの朝ドラ「なつぞら」が人気ですね。一方、テレビアニメの世界に目を転じると、世界で最も長く放映されているテレビアニメ番組としてギネスにも認定されている「サザエさん」は、1969年10月5日の放送開始であり、もうすぐ50周年を迎えるということです。

実は、ロシアにもこのほど誕生から50周年を迎えた「ヌー、パガジー!」という長寿アニメがあります。「ヌー、パガジー!」のパイロット版が当時のソ連で放送されたのが1969年5月6日、正式な第1回放送が同年6月14日らしいので、「サザエさん」よりもわずかに早かったことになります。ただ、ずっと継続している「サザエさん」と違って、「ヌー、パガジー!」の制作と放送は途切れ途切れなので、ギネス記録は「サザエさん」に譲っているということなのでしょう。

というわけで、今回はソ連/ロシアのアニメについて語ってみたいと思います。

人気作品ベスト10

「全ロシア世論調査センター」ではこのほど、「ヌー、パガジー!」誕生から50周年を記念して、ロシア国民にアニメ作品に関する電話アンケートを実施しました。調査は6月9日に、18歳以上の成人1,600人を対象に行われたということです。

その中で、好きなアニメ作品を回答者に挙げてもらったところ(最大3つまでの複数回答)、ベスト10は上図のようになりました。ダントツで1位になったのが、くだんの「ヌー、パガジー!」であり、65%の回答者が同作品を推しました。なお、別の質問で、「あなたは『ヌー、パガジー!』を観たことがありますか?」と問うたところ、98%が「ある」と答えています。まさに「サザエさん」に匹敵する国民的アニメ作品です。

以下、ベスト10に入った作品の概要をまとめておきましょう。1位の「ヌー、パガジー!」は、ロシア版の「トムとジェリー」などとも呼ばれる作品。オオカミがウサギを捕まえて食べようとするけれど、そのたびに失敗して酷い目に遭い、最後に「ヌー、パガジー!(今に見てろよ!)」と捨て台詞を吐くといった内容です。

2位の「プロストクバシノ村の休暇」は、1980年に作られたソ連アニメ。1978年の「プロストクバシノ村の3人」の続編であり、1984年には「プロストクバシノ村の冬」も作られているので、おそらくはシリーズ全体でのランク入りということでしょう。男の子が田舎に行ってイヌ、ネコの友達とたわむれるコメディーです。

3位の「マーシャと熊」はぐっと新しく、2009年から制作が始まって、今も続いているシリーズ。おてんばな少女のマーシャを、熊がやさしく見守ってあげるストーリーです。ほとんどセリフが出てこないので、吹き替えや字幕なしでも、外国の子供がそのまま楽しめると思います。

4位の「ビンニー=プーフ」は、ソ連時代の1969~1972年に放送された、ロシア版「クマのプーさん」などとも呼ばれる作品。言葉によるやりとりが多いので、子供にロシア語を覚えさせるのに向いている気がします。主人公のクマが披露する早口の歌がラップ調で、今聴くと斬新だったりします。

5位の「チェブラーシカとワニのゲーナ」は、1969年に誕生した作品。元々は「ワニのゲーナ」としてワニが主人公だったものの、脇役だったはずのチェブラーシカの方が人気が出て、チェブラーシカが実質的な主人公のようになってしまいました。今ではチェブラーシカはキャラクターとして日本でも人気があります。

6位の「ネコのレオポルド」は、1975年から1987年にかけて放映されたアニメ作品。「トムとジェリー」よろしくネコとネズミのお話なのですが、この作品ではむしろネコが賢者で2匹のネズミが悪という構図になっています。

7位の「霧の中のハリネズミ」は1975年に発表された作品で、巨匠Yu.ノルシュテインによる名作。セルアニメではなく、切り絵を使ったアニメーションであり、大人の鑑賞にも耐える深みのある映像作品になっています。かの宮崎駿氏もノルシュテインを称賛し、「霧の中のハリネズミ」を好きな作品に挙げているということです。

8位の「トムとジェリー」は、この中では唯一の外国アニメ。旧ソ連では、1970年代に国営テレビによって一部の回が断片的に放送されたそうです。旧ソ連圏での人気が爆発するのは1980年代から1990年代初頭のことであり、家庭用ビデオデッキの普及と海賊版ビデオの氾濫がもたらしたものでした。

9位の「昔むかし犬がいました」は、1982年に作られた短編アニメ作品。飼い犬と野生のオオカミの友情を描いた感動作で、当初敵対していた2匹がお互いを苦境から救うというストーリーになっています。

10位の「ブレーメンの音楽隊」は、グリム童話の一つですので、話自体は世界的に有名ですが、かつてのソ連では1969年にアニメ化されたものが人気になりました。G.グラトコフという作曲家が、ロックの要素を取り入れた音楽を付け、それで人気が高まったようです。

ソ連/ロシア・アニメの特徴は?

以上、今日のロシア国民に支持されているアニメ作品のベスト10を見てみましたが、そこからソ連/ロシアの古典アニメ作品に共通する傾向が浮かび上がってきます。

これらの作品では、ほとんどの場合、動物が主役です。「プロストクバシノ村」シリーズや「マーシャと熊」には人間も登場しますが、人間と動物は同格に描かれています。また、登場人物(動物)の数は総じて多くありません。

全体として、ソ連/ロシアの古典アニメ作品では、童話・絵本をそのまま動画にしたような作風が目立ちます。特に、「霧の中のハリネズミ」や、「ビンニー=プーフ」などは、動く絵本そのものです。

逆に言うと、日本のアニメのように、主人公が悪の組織と戦ったり、スポーツで勝利を成し遂げたりといった明確なストーリー性をもったものは、ソ連/ロシアではあまり見当たりません。また、日本のアニメでは必須の主題歌(アニソン)も、ソ連/ロシアのアニメではほとんど目立たないような気がします。

おそらく、ロシアでは伝統的に、アニメは幼い子供向けのものと位置付けられており、だからこそ絵本的な作品が好まれるのでしょう。それに対し、日本ではアニメはもっと上の年齢層も対象とした娯楽となっており、それゆえに複雑なストーリーや多様な登場人物が産み出されるのではないでしょうか。

日本のマンガやアニメはロシアにはないタイプのものなので、それがロシアの一部の若者を魅了することになります。フィギュアのYe.メドベージェワ選手がセーラームーン大好きだというのは、有名な話です。