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地方創生にもSDGsを プレーヤーたちが語る「まちづくり」の未来

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自治体の首長や学者、ビジネスマンなど地方創生にかかわる様々な顔ぶれが集った「未来まちづくりフォーラム」は、今年3回目を迎えた「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」の中のスペシャル・イベント。フォーラムの特別セッション「地方創生SDGsのプレーヤー達」には、ネット大手ヤフーから北海道美瑛町に出向し、民間の視点を生かしてまちづくりに取り組む佐竹正範さん、福岡市国際部課長として「アジア太平洋都市サミット」を手がける吉安真一さんの2人のエキスパートと、堀内編集長の3人がスピーチしました。 

■訪れる観光客像をデータ化

美瑛町は北海道の中央部にあり、パッチワークのような農村の景色や、マックの壁紙に採用されて世界的に有名になった「青い池」など観光資源に恵まれた町です。

佐竹さんは、総務省の「地域おこし企業人」の制度で2016年にヤフーから出向、いまの肩書は町役場課長補佐です。民間での経験を活かした観光リピーター増加の取り組みについて語る中で挙げたのが、「顧客がどんな人か、きちんとデータ化すること」でした。

「観光客を増やしたいなら、まずはお客さんの事を知ることが第一です。そこで町内の200カ所にQRコードを設置し、観光客へのアンケートキャンペーンを実施しました。どんな人がリピーターになるか、夏冬で観光客にどんな違いがあるかなどのデータを集め、地元の観光業者などに提供しています」 

美瑛町の佐竹正範さん

雪景色の中で遊ぶ体験型プログラムなど、地元の人たちと試行錯誤しながら行っている新たな観光資源開発も紹介してくれました。

佐竹さんが東京から来て感じたのは、「地方は食事もおいしく豊かだけれど、その反面、危機感が薄いこと」だそうです。

「地方には心を熱くしながら新たな価値を創造する人が必要です。そういう人をつくっていけるかどうか。イノベーションを起こす環境づくりが、自分の使命だと思っています」

 ■「SDGsに対応しないと、世界の潮流から取り残される」

東京よりも韓国、中国が近い。アジアへの玄関口である福岡市。各国の都市に共通する課題を話し合う場である「アジア太平洋都市サミット」は1994年に福岡市の提唱で始まりました。

昨年8月に福岡市で開かれた12回目のサミットは、SDGsの中の「住み続けられるまちづくり」がテーマで、16カ国から32都市が参加。国際的な都市間連携でSDGsを推進していこうという「福岡宣言」が採択されました。吉安さんは、サミットをきっかけにSDGsをどう広めていくかの取り組みを紹介しました。

サミットには民間企業も11社が参加し、会議の中で各国関係者とのビジネスマッチングも行われましたが、吉安さんによると地元企業のSDGsへの意識はつい最近まで薄いままでした。

2年前には『うちは海外で仕事をしていないのでSDGsは関係ありません』という企業も多かった。しかし、今や生産から流通までのサプライチェーンの中でも、SDGsを取り入れることを求める動きが広がっている。国際交流を進めるためのツールとしても、『共通言語』であるSDGsの活用は必須です。このままでは福岡市が世界から取り残されてしまうと、危機感を持ちました」 

福岡市の吉安真一さん

こうした状況を変えようと、サミットの開催にあわせて市が地元経済界に向けてビジネスセミナーを主催。SDGsをめぐる世界の潮流について発信するなど、積極的なアプローチを行いました。こうした努力は、次第に実を結びつつあるといいます。

「ここ1年くらいで、地元企業の意識が非常に変わってきたと感じています。経営戦略の中でSDGsをどう位置づけるかを考える企業も増えてきましたし、世界銀行などの国際機関と組んで海外で国際貢献をしようという動きも出てきています。市としても、様々な企業とコラボレーションを始めているところです」

■海外と地域が直接つながる時代の「地方創生」とは

この特別セッションが焦点をあてたキーワードは「協創力」。企業や自治体など、さまざまなプレーヤーが力を合わせて地方創生に取り組むイメージです。

そのキーワードに関連して、GLOBE+の堀内隆編集長は、「世界とのつながりをどう生かすか」について話しました。

「テクノロジーの発達で、地方と海外が簡単につながれる時代になりました。『外』の世界とのつながりを地域がどう地方創生に生かしていくかが大切です」

GLOBE+の堀内隆編集長

まちづくりは、持続性が大切。「そこに住む人たちが『この街に住んでいてよかった』と満足を感じられることが地方創生の目標として重要」、とも話しました。

例に挙げたのは、GLOBE+でも紹介した佐渡市の蔵元、尾畑留美子さんの取り組み。廃校を利用した「学校蔵」で年1回、まちづくりを話し合う特別授業があり、全国、また海外からも多くの人が島に足を運ぶようになりました。「生まれた街を好きだという人が故郷に戻り、自分が持つ能力や経験を生かして地域おこしに取り組む。そこに魅力を感じて人が外から集まってくる。そういう動きが民間で起きているのは非常にいい例だと思います」

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また堀内編集長は名水の産地として知られる「福井県大野市」の取り組みも紹介しました。同市では水事情が悪い東ティモールの村に給水施設を設置する「水の恩返しプロジェクト」を行っています。

「この事業によって大野市が直接、経済的にうるおうことはないでしょうが、街に住んでいる人々にしてみれば、自分たちのリソースが誰かの役に立っていることが、満足感としてはね返ってくるはずです。こうして色々なかたちで地方と海外とが直接つながることができるのが今の時代です」

最後に、メディアとして地方創生にどう関われるかについて、「知見を共有するお手伝いをしたい」と語りました。

「メディアは媒介者。地方創生の取り組みには成功例もあれば、失敗例もある。そうした例をみんなで共有していくことが大切で、そこに私たちメディアの役割があると思っています。各自治体の取り組みはGLOBE+でも紹介していきますし、特にSDGsは私たちの一丁目一番地だと思っています」