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中国マネー、ヨーロッパを分断 対中外交の足並み乱れる

World Now
中国企業に買収されたドイツの産業用ロボット大手KUKAも中国国際輸入博覧会に出展していた=中国・上海、村山祐介撮影

■ハンガリー首相の称賛

「中欧は間違いなく欧州の成長の牽引力になります。中国が『16+1』の枠組みを作ったことで実現したのです」

中国・上海で昨年11月に開かれた「中国国際輸入博覧会」の開幕式。国家主席・習近平らに続いて登壇したハンガリー首相のビクトル・オルバン(55)は6分間にわたって中国をたたえ、「一帯一路の協力は任せてください」と締めくくった。

中国国際輸入博覧会の開幕式で演説するハンガリー首相オルバンのテレビ映像=中国・上海、村山祐介撮影

16+1は、中東欧の16カ国と中国が協力を話し合う枠組みで、12年から毎年首脳会議を開く。14年にはハンガリーとセルビアを結ぶ350キロの高速鉄道を中国が支援することが決まり、ハンガリーはその翌年、真っ先に一帯一路への協力文書に署名した。この枠組みには入っていないが、財政難のギリシャでも16年、最大の港を管理する会社の株式51%を中国企業が買い取った。

異変はこのころから起き始めた。

■対中外交で亀裂

EUとして16年に南シナ海問題で中国を批判する声明をとりまとめようとした際、ハンガリーやギリシャの反対で名指しは見送りになった。17年には人権問題でも中国を批判する声明がギリシャの反対で頓挫した。ドイツ国際公共政策研究所長トーステン・ベナー(45)は「中国が投資攻勢で小国への政治的影響力を手に入れ、EU外交の意思決定を妨げる懸念が強まった」と指摘する。

中国国際輸入博覧会でハンガリーが出展したブースは「中東欧の物流ハブ」をうたい、「中欧班列」をアピールしていた=中国・上海、村山祐介撮影

軋轢は経済面でも目立ってきた。

波紋を広げたのは16年、中国企業によるドイツの産業用ロボット大手KUKAの買収だった。その後、半導体やITなど先端技術をもつ企業などを買おうとする動きが相次ぎ、ドイツは外資による買収への規制強化に踏み切った。高速鉄道のハンガリー区間をめぐっては、欧州委員会が入札手続きに疑義があるとして調査に入り、いまだに着工できずにいる。

中国企業に買収されたドイツの産業用ロボット大手KUKAも中国国際輸入博覧会に出展していた=中国・上海、村山祐介撮影

独メルカートア中国研究所研究員のトーマス・エダー(32)は「欧州一帯で影響力を高めて地政学を変えている中国に対し、欧州は対応を迫られている」と話す。

中東欧も歓迎一色ではない。

メルカートアの調査によると、17年の中国によるEU28カ国への投資額は、75%が英仏独に集中。さらに全体の94%は企業買収で、中東欧が期待する工場新設などはごくわずかだった。

中国製品の輸入が高止まりする一方、中国への輸出は期待ほど伸びず、貿易不均衡が続く。ワルシャワ大学欧州センター所長のボグダン・グラルチェク(64)は「中国の一人勝ち」と表現した。「投資は来ないし、貿易赤字は膨らむ。中国は、一帯一路とは何なのかを明らかにするという宿題を果たすべきだ」