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アングル:幹部逮捕に揺れる中国ファーウェイ、何が問題なのか

World Now 更新日: 公開日:
上海で撮影(2018年 ロイター/Aly Song)

●ファーウェイとはどのような会社か

ファーウェイは、世界最大の通信ネットワーク機器サプライヤーであり、第2位のスマートフォンメーカーでもある。昨年の売上高は約920億ドル(約10兆円)。他の中国テクノロジー大手と異なり、主要市場は海外で、欧州やアジア、アフリカの多くの国々で市場最大手になっている。

ファーウェイは、1987年に人民解放軍出身の任正非氏が創業した。今も非上場であり、株式は社員が保有していると説明しているが、その構造は明らかになっていない。本社は中国南部の技術ハブ都市である深センにあり、約18万人を雇用している。

●ファーウェイはどうやってこれほどの成功を収めたのか

ファーウェイは、中国が通信網の近代化に多額の予算をつぎ込み、多くの機材を輸入に頼っていた時期に、数少ない電気通信機器サプライヤーのパイオニアだった。ファーウェイは1990年代に海外市場に進出し、ライバルを大幅に下回る価格設定で知られるようになった。

競合他社は、ファーウェイは模倣製品の格安販売業者と位置づけ、ネットワーク機器大手シスコシステムズやモトローラなどの企業が企業秘密を盗まれたとして訴訟を起こした。

だがファーウェイは研究開発に多額の資金をつぎ込み、今では通信ネットワーク技術や高級スマホの分野で世界の最先端とみなされるようになっている。対照的に、フィンランドの通信機器大手ノキアやスウェーデンの通信機器大手エリクソンなど西側のライバルは近年、業績不振に苦しんでいる。

ファーウェイは今日では、半導体開発や人工知能(AI)、クラウドコンピューティングなどの新分野にも進出している。

●なぜファーウェイ製品を排除する国があるのか

米情報機関は、ファーウェイが中国政府とつながっており、同社製品には政府のスパイが使用できる「裏口」機能が埋め込まれている可能性があるとしている。その証拠は公表されていないが、ファーウェイ側はこの疑惑をたびたび否定している。

だが疑惑は消えていない。現在の懸案は、ファーウェイが先頭を走る次世代高速通信「5G」技術の構築だ。国内企業に、要請があれば政府を支援することを義務付けた中国の新法も、懸念材料となっている。

米政府は、ファーウェイ製品の政府調達を禁止し、同製品を使う通信会社への政府支援を停止するなど、米市場からファーウェイを締め出す政策を打ち出している。ベライゾン・コミュニケーションズとAT&Tは今年、ファーウェイのスマホを販売する契約を打ち切った。

米国のもっとも親密な同盟国であるカナダや英国、ドイツでさえ、機材のセキュリティーを確認する十分な対策を講じているとして、ファーウェイに対して具体的な対応を取っていない。だがオーストラリアとニュージーランドは最近、ファーウェイの5G通信網構築への参加を禁止した。ドイツなども、この問題の再点検に動いているもようだ。

●孟氏の逮捕は、セキュリティー問題と関係あるのか

米当局は、孟容疑者の逮捕に至った状況について明らかにしていないが、事情に詳しい筋はロイターに対し、今回の逮捕は、米国の貿易制裁違反に関連するものだと話した。

ロイターは約6年前、禁輸対象の米ヒューレット・パッカード(HP) のコンピューター機器をイランの携帯電話大手に売却しようとしていたスカイコム・テックという企業と、孟容疑者とファーウェイのつながりについて報じていた。

●対イラン制裁違反が指摘されている中国企業は他になかったか

ファーウェイの競合相手である中興通訊(ZTE)が昨年、米国による対イラン制裁措置などに違反し、米国製品や技術をイランに輸出していたことで有罪を認めた。米商務省は今年になって、ZTEがこの問題を巡って米当局との間で合意した猶予措置に違反したとして、米企業からの部品調達を禁止。これにより、ZTEは主要業務が停止する事態に陥った。

その後、トランプ米大統領の指示で新たな合意が成立し、部品調達の禁止は解除された。これは、トランプ氏が中国の習近平・国家主席に譲歩したものと受け止められ、米政府内からも驚きや怒りの声が上がった。

●米中貿易戦争に関係はあるのか

対イラン制裁違反の捜査は、貿易戦争のずっと以前から始まっていた。だが今回の逮捕のタイミングは、トランプ大統領と習主席が一時休戦で合意した直後だけに、問題を複雑化させるだろう。

金融市場は逮捕のニュースを受けて、一時休戦が覆されることへの懸念から軒並み下落した。一方で、今回の逮捕が間の悪い偶然ではなく、米国側の意図的な挑発だったとの証拠はない。

●ファーウェイは次にどうなるか

ZTEに一時課されたような米国製部品の調達禁止が実施されれば、ファーウェイにとって大打撃になるだろうが、それが直ちに実施される理由は現段階では見当たらない。もし今回の逮捕をきっかけに、特に欧州の主要国がファーウェイに厳しい対応を取るようになれば、ファーウェイの成長や影響力に長期的に影響が及ぶことになる。

それでも、中国が半導体開発などの難しい分野で米国に追いつこうと全力を挙げるなか、中国のハイテク産業の中心的存在であるファーウェイが、今後長期にわたり強力な勢力であり続けるのは間違いない。

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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