9月30日、パリで開かれた米国と欧州の男子プロゴルフの対抗戦、ライダーカップ最終日。米国のフィル・ミケルソンが16番でティーショットを池に入れ、欧州チームの優勝が決まった。今大会5戦全勝と大活躍したフランチェスコ・モリナリ(イタリア)がチームメートにもみくちゃにされた。「メジャーで勝つよりも、何よりも価値がある」。今夏の全英オープン覇者の言葉だけに重みが増す。
1927年創設で隔年開催の対抗戦は、伝説的な選手が名ドラマを紡いできた歴史の重みもあり、米国と欧州では抜群の人気を誇る。賞金が出ないにもかかわらず、億万長者のプロたちが名誉をかけて戦う。今年の最終日は5万を超す大観衆が見守った。
これまでの42大会で通算成績は米国が26勝とリードしているが、ここ12大会は欧州が9勝3敗と圧倒。政治の世界では分裂気味の「欧州」だが、ライダーカップで翻った欧州旗は団結の象徴に思えた。
男子テニスでは9月23日までの3日間、「欧州選抜」と「欧州以外の地域の世界選抜」が戦うレーバーカップが米シカゴで催された。豪州の伝説的な選手、ロッド・レーバーの名前を冠して昨年創設。今も「生きる伝説」として絶大な人気と実力を保つロジャー・フェデラー(スイス)のマネジメント会社などが企画・運営を手がける。欧州選抜の監督はビョルン・ボルグ(スウェーデン)、もう一方はジョン・マッケンロー(米)とかつての宿敵同士だ。結果は昨年、今年とも欧州選抜が競り勝った。フェデラーが昨年はラファエル・ナダル(スペイン)、今年はノバク・ジョコビッチ(セルビア)とダブルスを組んだのはハイライトの一つだった。
ジョコビッチは「ふだんはライバルだけれど、このユニークなコンセプトの大会は今後も楽しみだ」。フェデラーも呼応した。「長年のライバルであるノバクと互いに励まし、戦術を相談するのは新鮮な体験」。さらにファン目線で考えたイベントであることも明かした。4大大会や日ごろのツアーは、ファンは自分が観戦に行く日までお目当ての選手が勝ち上がっている保証はない。その点、この大会は3日間でトッププロ計12人が入れ代わり立ち代わり登場する。「ファンには素晴らしい週末を満喫してもらえたと思う」
■全員が有名選手、重圧と無縁
テニスには1900年からの歴史を持つデビスカップという国別対抗戦があり、毎年開かれる。ただ、デビスカップは国家を背負う重圧がすごく、格下との対戦では当然勝利が期待される。その点、レーバーカップは全員が有名選手なので、個々の選手が過度な重圧と無縁でいられる。
それでも、現役時代、素行の悪さから「悪童」とも評されたマッケンロー監督は本気度を強調した。「これは(ゴルフの)ライダーカップみたいだよ。オールスターじゃない。最強同士が集まるんだ」
勝利チームの選手は出場給に加え、それぞれ25万ドル(約2800万円)の賞金が出る。元々、超がつくほどの負けず嫌いのスターたちが、大好きなテニスで競い合うから真剣だ。でも、4大大会やデビスカップほどの悲壮感もない。ほどよく肩の力が抜けることで娯楽性を増す。スポーツの原点である「楽しさ」が凝縮された祭典として、定着しそうだ。(文中敬称略)