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移民が支える英プレミアリーグ 自国選手枠の拡大策、波紋呼ぶ

Insight 世界のスポーツ 更新日: 公開日:
今季のプレミアリーグで好調なチェルシーとマンチェスター・シティーの主力も、大半は英国以外のスターたちだ=ロイター

昨年12月上旬、イングランド代表のサウスゲート監督が窮状を訴えた。直前の週末、プレミアリーグ全20チームの先発メンバー220人のうち、自国選手の割合は25%の54人と歴代最少を記録したばかりだった。

「昨年は33%だったのが、ついに3割を割り、そしてついに25%だ。自国選手に好素材がいないわけじゃないのに。この傾向がさらに強まるのは許容できない」

イングランド代表を率いる立場からすれば、当然だ。プレミアリーグが創設された1992年は先発メンバーに自国選手の占める割合は約7割だったが、ここ10年ほどは3割で推移している。

テニスのウィンブルドン選手権では、2013年にアンディ・マリーが優勝するまで、英国男子は76年間、頂点に立てなかった。市場開放で外資が進出し、国内企業が姿を消すことの例えで「ウィンブルドン現象」という経済用語にもなったが、サッカー界とも重なり合う。

イングランド協会(FA)は代表強化を旗印に、対策を進めてはきた。若手の育成を図るための予算を大幅拡充し、指導者養成にも力を入れてきた。10年からは「ホームグロウン(自前の育成)」制度を採用した。最大登録選手枠25人のうち、15歳から21歳までの3年以上、イングランドかウェールズのクラブでプレーした選手を8人以上含まないといけない規定だ。

そして今、FAが推進するのが8人だった「ホームグロウン」枠を12人(チーム登録枠は25人)に増やす改定案だ。このプランは4年前から浮上しているが、EU離脱のタイミングでFAは導入を図りたい構えだ。

しかし、優勝を狙えるような強豪クラブは軒並み、新たな上限となる13人を超す外国出身の選手を抱える。プレミアリーグは「一流の外国選手を獲得できる枠が減れば、世界最高峰のリーグとして繁栄してきたプレミアのブランド力の低下につながる」などと反発する。さらに、17年は17歳以下、20歳以下の年代別ワールドカップ(W杯)でイングランドは世界一に輝き、昨年のロシアW杯ではベスト4に進出。今のバランスが最適で、代表強化にも寄与している、と主張する。結論の行方は政界同様、見通せない。

■日本では逆の議論

実は「ホームグロウン」制と外国籍選手枠の論議は、Jリーグでもある。昨年11月には外国籍選手の登録・出場枠を今季から拡大することを決めた。

従来、登録できる外国籍選手の上限は5人で、ベンチ入り・出場は原則3人だったが、J1で最大5人が同時に出場でき、外国籍選手の登録人数の上限はなくした。なお、例外規定としてJリーグが提携するアジア諸国の連盟出身選手は外国籍選手に含まない。元スペイン代表のイニエスタ、ビジャ、元ドイツ代表のポドルスキら大物を次々獲得する神戸のような積極的な投資を奨励し、リーグの魅力アップにつなげる狙いだ。

一方で、日本人選手の出場機会が減ることへの危機感から、英国と同様、各クラブに自前での選手育成を促す「ホームグロウン制度」の導入も決まった。

といっても、プレミアリーグと違い、Jリーグの大半のクラブの予算規模では、日本人選手の雇用は制度で担保しなくても、当面確保されそうだ。