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「まるでブラック企業」 イングランド・サッカーの年末年始

欧州視線 スポーツが映す
クリスマスイブの朝、レスターの本拠脇にクリスマスツリーが飾られていた=稲垣康介撮影
クリスマスイブの朝、レスターの本拠脇にクリスマスツリーが飾られていた=稲垣康介撮影

イングランドではかき入れ時

正月が来たと思ったら、もう1月が終わろうとしている。4年に1度のサッカーのワールドカップ(W杯)の開幕を6月に控え、日本のサッカー界では日本代表の座を争うサバイバルレースが激しさを増しているが、年末年始はつかの間のシーズンオフだった。元日恒例の天皇杯決勝を戦う栄えある2チームのほかは、シーズンの疲れを癒やす充電時間になる。ドイツやイタリア、スペインなど欧州の主要リーグにも「冬休み」がある。

しかし、例外がある。サッカーの「母国」イングランドでは、年末年始に試合がぎゅうぎゅうに押し込まれている。過酷な長時間労働を強いるブラック企業並みの酷使で、選手たちの体調が心配になってしまうほどだ。欧州のほかのの主要リーグとは違い、ここがかき入れ時とばかりに試合を詰め込む慣習があるのは、なぜなのだろうか。

岡崎慎司が所属するイングランド・プレミアリーグのレスターを例に見てみよう。昨年12月23日、ホームで強豪マンチェスターUを迎え、終盤の劇的な同点ゴールで引き分けに持ち込んだ。

後半22分で登場した岡崎は試合後の取材ゾーンで、同僚のグレイとのレギュラー争いについて、口を開いた。

「今は試合間隔がタイトだし、監督が両方にチャンスを与えていると思いますけど、どちらかというとグレイの方が主力の方に見られていると思う。でもまあ、個人的には2月とか日程に余裕が出てきたときにポジションを勝ち取っていたい」。定位置奪取の決意を語った。

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今年1月1日の試合で、プレーするレスターの岡崎慎司=AP


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つづく12月26日のワトフォード戦で岡崎は先発に復帰した。さらに30日、年が明けた元日、6日、13日、16日、20日と試合があり、いずれも先発、もしくは途中出場で岡崎はピッチに立った。大みそかを挟んで中1日で試合なんて、除夜の鐘とは無縁の英国とはいえ、落ち着いて新年の決意を固める余裕すらなかっただろう。

興業優先のしわよせ

なぜ、このような過密日程が容認されてしまうのか。理由はいくつかある。クリスマスシーズンなど休暇時期に試合をすれば、それだけ多くの観客動員が期待できる。ふだんから、多くのスタジアムが満員御礼に近いプレミアリーグだけれど、年末年始はさらに動員が見込める。

巨額のテレビ放映権料を払っているテレビ局にとっても、ホリデーシーズンなら家族、親類が集まってひいきクラブの試合の応援をしてくれるから高視聴率が見込める。さらに今年はW杯があるから、リーグ終了の時期が前倒しになるため、その分、日程がしわ寄せになる。

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マンチェスターCのグアルディオラ監督=AP

憤りを隠さないのが、指揮官たちだ。当然だろう。疲労蓄積、集中力低下などに伴う選手のけがが怖い。実際、首位を快走するマンチェスターCでは年末に負傷者が相次ぎ、就任2季目のグアルディオラ監督は「我々は選手たちを殺してしまう。イングランドでは選手たちが保護されていない。量よりも質を優先すべきなのに」と、きわめて真っ当な警鐘を鳴らす。

しかし、在任期間が20年を超すアーセナルのベンゲル監督は達観しているところがある。数年前に「まあイングランドの伝統だから。私も最初、イングランドに来たときは日程が過密だと思ったけど、(一斉開催日の)12月26日は欧州中がプレミアリーグに注目する。世界で最も人気のあるリーグとして繁栄するには大切なことだ」とコメントしていた。

慣れというやつか。選手たちの立場になれば、酷というしかない。興行優先、選手軽視は否めないけれど、年明けにアーセナルからマンチェスターUに移籍したサンチェスの年俸は20億円を超すともいわれ、その原資は天文学的なテレビマネーや入場料収入などで賄われているのも、また事実である。