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4社で時価総額3兆ドル ITの巨人「GAFA」の支配はどこまで続くのか

World Now 更新日: 公開日:
米IT大手の富の源泉はデータだ=角野貴之撮影

■絶大な信頼が強み、アマゾンに集まる消費者データ

呼びかけるだけで食べ物を温められる電子レンジ、車に載せて音楽の再生や道案内を音声で操作できる機器……。米アマゾンは9月、音声認識技術「アレクサ」を搭載したスマートスピーカー「エコー」など70種類以上の新製品を発表した。

「顧客がどこにいても、アレクサを使えるようにしたい」。ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は7月の声明で、そう強調した。コメントはすべてアレクサについてで、音声技術への本気度がにじむ。

アマゾンのジェフ・ベゾスCEO=ロイター

話しかけるだけで様々な機器が動かせる音声認識は、人間の「目」や「手」の作業を解放することになり、次世代のインターフェースと期待される。米メディアによるとアレクサに対応する機器は2万種類超。アマゾンが必死に製品を増やすのは、アレクサをより賢くするための「えさ」となるデータをより多く集めるためだ。

「アマゾンが訴えかけるのは、より多くのものをできるだけ楽に集めようとする我々の狩猟採集本能だ」。ニューヨーク大教授のスコット・ギャロウェイは、近著「the four GAFA(ガーファ)」でそう指摘する。「消費者からの絶大な信頼をもとに、アマゾンは彼らの会話を聞き、消費者データを集めることができる……他の企業よりも、顧客の私生活や消費者の願望のさらに奥深くを知ることができる」

商品を持ってゲートを通るだけの「アマゾンgo」=米シアトル、宮地ゆう撮影

専門家は、アマゾンのAIの精度が高まれば、顧客が購買ボタンを押す前に商品を発送し、消費者を買い物という「仕事」から解放するようになるとみる。カナダのトロント大のジョシュア・ガンス教授は「アマゾンは『予測配送』という特許を申請しており、その方向をめざしているようにみえる」と話す。

中国やロシアなどがデータの「囲い込み」を強めるのに対し、世界最強のIT企業を抱える米国は、データの自由な流通を訴えてきた。アマゾンやフェイスブック(FB)などの富の源泉は、世界に散らばる利用者のデータだからだ。

アマゾンの時価総額は9月、アップルに次いで1兆ドルを超えた。この2社とグーグル、FBの頭文字をとった「GAFA」と呼ばれるIT大手4社の時価総額は、合計で3兆ドルを超え、ドイツの国内総生産(GDP)に迫る。

インターネットの起源とされる半世紀前、ネットは情報を民主化し、脱中央集権を進めると期待されていた。だが、巨大IT企業や独裁国家にデータが集中し、「中央集権」はむしろ強まりつつある。

■GDPRでブレーキかけたヨーロッパ

GAFAなどへのデータの偏在にブレーキをかけようとしているのが、欧州だ。

欧州連合(EU)は5月、「一般データ保護規則(GDPR)」を導入した。企業や団体が域外に個人情報を持ち出すことは原則禁止され、違反した場合には巨額の制裁金が科される可能性がある。利用者自らが、個人のデータをコントロールする権利も保証する。いわばデータの「民主化」だ。欧州には米IT大手に対抗できる企業が育っておらず、産業保護の側面もあるとされる。

欧州議会が「一般データ保護規則(GDPR)」を採択したのは2016年。議論に4年の歳月をかけた=西村宏治撮影

さらに、カリフォルニア州が6月に新たな個人情報保護法を可決したほか、連邦議会でもデータ保護法案の動きが出るなど、GAFAのおひざ元の米国でも包囲網が広がる。

「企業があなたのすべての情報を手にすれば、驚くべき予測ができるようになる。いま議論されているのは、企業がどこまでデータを手にすべきかだ」。AIの機械学習向けのデータ提供を手がける、米ディファインド・クラウドのジョアオ・フレイタス最高技術責任者(CTO)は言う。

人工知能(AI)向けの機械学習向けのデータ提供を手がける、米ディファインド・クラウドのジョアオ・フレイタスCTO(左)=五十嵐大介撮影

ポルトガル人のフレイタスは、首都リスボンに拠点を置く。欧州ではプライバシー保護に敏感な企業が多いといい、大企業によるデータ独占を「危険なゲームだ」と指摘する。「企業からサービスを受ける代わりに、利用者はどこまでデータを企業に提供するかで同意することが重要だ。利用者が満足できれば、ウィンウィンの状況を作ることができる」

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