6月に放送が始まった韓国のオーディション番組「PRODUCE48(プロデュース48)」には、日本のアイドルAKB48グループのメンバー(以下、AKBメンバー)が大挙、参加している。
韓国のケーブルテレビMnetの番組だが、日本でもBSスカパー!で同時放送され、両国で話題になっている。週1回、各回150分という長い放送時間だが、ついつい見入ってしまうのは、日本勢の劇的変化だ。
土台となっている番組「プロデュース101」は、韓国の各事務所に所属する練習生がデビューをかけて戦うサバイバル番組。デビューメンバーは、「国民プロデューサー」という名の視聴者の投票で決まる。2016年(女子版)、2017年(男子版)に放送され、それぞれ「I.O.I(アイオーアイ)」、「WANNA-ONE(ワナワン)」としてデビューした。特にワナワンは、デビュー直後からトップアイドルに躍り出た。
その人気番組に日本のアイドルが登場するというので、放送前から注目された。私は正直、不安だった。歌とダンスのレベルで言えば、日本と韓国の差は歴然としている。韓国が圧倒的に上。「防弾少年団」を筆頭に世界を席巻しているK-POPだ。デビュー前の練習生とは言え、実力はかなり高い。一方のAKBメンバーと言えば、「会いに行けるアイドル」という親近感を売りにして、歌とダンスよりも愛嬌、というのが私の印象だ。
不安は的中した。歌とダンスの評価でA~Fにクラス分けされる様子が放送されたが、「こんな状態では舞台に立てない」などと審査員からことごとく厳しい指摘を受け、泣き出すAKBメンバー続出。上位はほとんど韓国の練習生、下位はAKBメンバーという結果でスタートした。かろうじて宮脇咲良(HKT48)がAクラスとなり、タイトル曲「ネッコヤ(PICK ME)」のセンターのポジションを獲得した。これも歌とダンスの実力というよりも、見た目のかわいさやスター性を考慮した結果に見える。
日韓で求められるポイントが違うのだから、仕方がない。日本は未完成のままデビューしてファンが成長を見守るスタイルだが、韓国は何年も練習生として厳しい特訓の末、完成品としてデビューする。ただ、日韓の歌とダンスのレベルの差は素質の問題なのか、環境が変わればできるのか、というのが、私の個人的な関心事だった。蓋を開けてみれば、後者だった。めきめき上達するAKBメンバーたちから目が離せなくなった。
後者のような気はしていた。第三次韓流ブームをけん引する「TWICE(トゥワイス)」の例があるからだ。トゥワイスは、メンバー9人のうち3人が日本出身。訓練さえすればできる、場合もある。
その典型例が、矢吹奈子(HKT48)だ。2度目のクラス分けテストでこなれたダンスを披露し、FからAにランクアップ。16のチームに分かれて得票を競うバトルでは、透明感のある高音を響かせ、票を伸ばした。その注目度は、日韓両国のポータルサイトのリアルタイム検索ワードで1位を記録したほどだ。
ところで、韓国の視聴者も、意外に歌とダンス以外を見ていることが分かった。特に男性視聴者を中心にAKBメンバーの表情やリアクションがかわいいと評判だ。3週目の投票結果では、1位イ・ガウン、2位アン・ユジンに続いて、3位に宮脇咲良がランクインしている。96人でスタートし、最終的にデビューできるのは12人の予定だ。12位までには宮脇含めAKBメンバー5人が入っている。日本勢が今後も伸び続けるのか、最後まで見届けたい。