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似て非なる日韓の食文化 金属の箸を使う秘密は?

マイケル・ブースの世界を食べる
Photo: Toyama Toshiki
Photo: Toyama Toshiki

私は今、部分的にではあるが、日韓両国の歴史と昨今の関係について考察する、というような本を書いている。わかっている、わかっている。そんなに単純な話ではないと言いたいんだろう。だがここだけの話、私がこの本を提案したのは、ずっと前からソウルで韓国料理を食べたいと思っていたから。いい口実になると踏んだわけだ。

ソウルを訪れるのは、大統領選挙を見に行くためでもあった。大韓民国の首都には、多少の先入観があった。食べ物がスパイシーだとか、屋台文化が東京よりも充実しているといったことは知っていたが、韓国料理は私がよく知り、愛する日本食にそこはかとなく似ているのではないか、と想像していた。

ところが、行ったことがある人は皆お気づきかと思うが、かの国の食文化は根本的に別物だ。お米は確かにあった。でも私の知るお米ではない。しかもスプーンで食べるのだ! 巻きずしもあった。いや「キムパプ」と呼ぶべきか。しかし中身も違えばタレもすっぱい。「ビビンバ」はいくらかどんぶり的と言えるが、そこ以外は何もかもが別物だった。最も大きな違いはおそらく(少なくとも外食での)肉の消費量だろう。食事どきのレストランで、野菜を見かけることはほとんどない。韓国にも精進料理があると知るまでの数日間、このままでは壊血病にかかるのではないかと心配になった。言うまでもなく、使われるスパイスの量も効果も、まったく違っている。

もちろん韓国にはキムチがある。まぎれもなく野菜であったはずの代物だ。至るところに出没するこのつけ合わせ、初めこそ警戒していたもののすぐに気に入ってしまい、いよいよ中毒めいてきて、帰る頃にはすっかり夢中になった。韓国には「イ ヨル チ ヨル(熱をもって熱を治す)」という四字熟語があるようだ。それはつまり夏も盛り、日本人がうなぎを求める酷暑の頃に、レパートリーの中でも舌を焼くような一番辛い料理をモリモリ食べるということだ。

スパイスへの熱き思い

そうしてキムチをたいらげている間に、はたと気づいた。日本の伝統的な食べ物には朝鮮半島を伝ってやってきた物も多いのに、キムチ然り、スパイスに対する韓国人の熱い思いは日本海を渡ることがなかっただなんて、おかしくないだろうか? 一体なぜ。ワサビはもちろん刺激的だし、サンショウも舌がぴりぴり痺れる。しかしキムチで味わう発酵したトウガラシならではの、あのファンキーな辛さとはまた違う。とりわけの辛味炒めである「トッポッキ」は思い出すのもただただ恐怖。おだやかでやわらかく、食べれば幸福を約束してくれるはずのなのに、3回ばかり口いっぱいに頬張ると、情け容赦ない痛みというバリアーに突き当たる。辛すぎて、痛いのだ。それでも痛みに耐えて果敢に食べ続けた。もう、べらぼうにおいしかったから。

しかし、私が認識する限りの日本との最大の不一致は、韓国人は木製でなく金属製のを使うことだ。ささいな違いに見えるかもしれないが、金属製のには木製のとはまた別の力やテクニックが必要になる。帰国して1週間経っても、右手がしばらく痛んだくらいだ。彼らがなぜ金属製のを好むのか、現地で会った人たちが持論を展開してくれた。一番よく聞いたのは経済的な理由で、今よりも生活が厳しかった時代には、使い捨てよりも再利用できるほうが好まれたという。しかし、何世紀もさかのぼって韓国の歴史を読み通すにつれ、私は別の説へと行き着いた。国土にいるすべての人間が金属製のを一膳ずつ使っているとすれば、国民全員がいつも、殺傷能力を秘めた武器を手にしていることになる。ある日突然、お隣さんが侵略しようとしても……。(訳・菴原みなと)