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それでも女子大は必要なのか? 逆風の中で志願者増の米のスミス大 学長答えは

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インタビューに応じたスミス大学のサラ・ウィリー・ルブレトン学長=2026年4月10日、東京都港区、藤崎麻里撮影

日本でも米国でも名だたる女子大に共学化の波が押し寄せている。女子だけの学びは時代遅れなのか。ここ数年、出願者が増え続けているという米国の伝統女子大、スミス大学のサラ・ウィリー・ルブレトン学長に聞いた――女子大の存在意義ってなんですか。

■高校生が気づいた「ガラスの天井」

――日本では近年、女子大への志願者が減り、共学化にかじをきる大学が相次いでいます。
「米国でも女子大の志願者は全体として低下傾向にあります。ただし、ここ3年ほどスミス大には、150年の歴史の中で最も多くの学生が受験しています。2025年度入学の志願者は8100人で、10年前の2倍です」

――それは驚きです。なぜでしょう。
「いまの米国の政治情勢が大きく関係していると思っています。ビジネス界や医療、司法、政府機関、もしくはアートや教育といった分野でも女性は十分にリーダーシップをとる立場にはいません。下に見られ、差別され、もしくはリーダーとしてみなされていない。おそらく高校生たちはガラスの天井が破られていない現実に気づき、女子大に関心を持つようになったのではないでしょうか」

「実はスミス大は2010年代半ばごろから2020年ごろまでは、合格率は30%半ばから後半で推移していましたが、24年は21%となり、高い選抜制を保つようになりました。26年の米国の民間の大学ランキングのベストカレッジ部門では、前年の24位から10位に躍進しました」

スミス大の門近くで、色づく木々の下を歩く学生たち=米マサチューセッツ州、スミス大提供

――女性が社会で道を切り開くためには、女子大のほうがいいと?
「女子大では課外活動でも、常に女性がリーダーシップをとることになります。模擬国連、生徒会、ロボットづくりのクラブでも。社会に出る前に経験を積み、リーダーになるための政治力を磨く訓練ができる。非常に重要です」

「人は、社会で周縁におかれているときより、主流の立場であるときの方がよい結果を出すといわれています。まずは教授や教員たちが『あなたはできる』とわかってくれる環境が大切です。自信を深め、さらには高い目標を持てば、努力を続けやすくなる。学部時代にそういう経験があれば、自然とその先で羽ばたきやすくなります」

――故オルブライト元米国務長官や、トランプ氏と大統領選を戦ったヒラリー・クリントン氏ら、米国政治で活躍した多くの女性が女子大出身ですね。
「昔はそうでした。女子大でしか学べなかった世代がいたからです。私たちの卒業生は今も政治、経済、国際機関などで活躍していますが、最近では女性の政治家は共学出身者も増えています」

スミス大のサラ・ウィリー・ルブレトン学長が来日したタイミングには、日本にいる同大卒業生たちが多く集まった=2026年4月10日、東京都港区、藤崎麻里撮影

――ただ、現実社会に出れば男性がいるわけですから、教育段階から同じ環境を求めるのも自然に思えます。
「社会というものは階層的で、排他的になりやすいものです。誰もが学べる公立の高等教育機関も必要ですが、私学は周縁に置かれた人が自信をもって学べる環境を提供することも役目です」
「米国の場合、アフリカ系の人が多く進学する高等教育機関、ヒスパニックが多く進学する高等教育機関もあります。高等教育機関が多様であることは、さまざまな可能性を広げます。私は社会学者の立場からも当面の間、女子大は重要だと思っています」

■財政支援で高まった多様性の魅力

――ほかの女子大では志願者数は減る傾向にあると聞きます。スミス大の強みはどこにあるのでしょうか?
 「評価されたのは、学問の質と経済的な負担の軽さでしょう。まず学生と教員の比率が8対1という小規模のリベラルアーツ大学であること。そしてリベラルアーツ大としては全米でも数少ない学部の工学プログラムをもつことです。大学共通試験の成績を必須としない入学選考方針も関係していると思います」

スミス大学のキャンパスを歩く学生たち=米マサチューセッツ州、スミス大提供

「それと、スミス大は21年から、女子大として初めて学生ローンをやめ、給付金として支給するようになりました。国内の学生だけでなく留学生にも同じ対応で、学生の6割以上が財政的支援を受けています。大学は講義を受ける場だけではなく、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと出会う場です。財政的支援があることで、多様な学生層が形成され、それが魅力になっています」

――2015年にはトランスジェンダー当事者の学生に門戸を開きました。寮生活をする学生らに心配の声はありましたか。
「私たちは女性を自認している人を受け入れていますが、私自身は『女性が不安を感じる』という議論には、偏見があると考えています。もしトイレの利用に心配があるのなら、これを機会にジェンダーフリーの個室のトイレをたくさん整備すればいいのではないでしょうか」
「研究によれば、トランスジェンダー当事者は加害する側になるというよりも、被害者の側に立つことが多いそうです。だれもが受け入れられる学究の場があることが強く、より良い社会をつくることにつながると考えています」

■セブンシスターズは「5人姉妹」に

――米国にはスミス大を含め「セブンシスターズ」(7人姉妹)と呼ばれる伝統女子大がありますね。
 「全米では約5千もの大学がありますが、女子大は約30だけです。七つあった女子大のうち、バッサー大学は共学化され、ラドクリフ大学はハーバード大学に吸収されました。今ではファイブシスターズ(5人姉妹)です」
「それぞれの大学は毎月ズームで学長たちのランチ会議をして、互いに携帯電話で連絡をとれる関係性にあります。どう女性の教育を向上していくか、女子大の意義を社会に伝えていくかを話し合っています」

スミス大のサラ・ウィリー・ルブレトン学長が、日本にいる同大卒業生たちの前で話した=2026年4月10日、東京都港区、藤崎麻里撮影

「女子大の意義をより多くの人に経験してもらえるように、一つの女子大に4年間通わなくても、編入したり、交換留学で1年間学んだり、といったことを検討しています。スミスに行った後、別の女子大や共学に行く選択肢があれば、より多くの人に女子大を体験してもらえるかもしれません」