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スタートアップW杯名古屋予選が初開催 「Lii」が児童発達支援のDXで世界決勝へ

スタートアップワールドカップ 更新日: 公開日:
スタートアップW杯名古屋予選で優勝したLiiの廣瀬あゆみCEO(中央)と主催者のアニス・ウッザマン氏(左)=2026年4月23日、名古屋市の岡谷鋼機名古屋公会堂、玉川透撮影

世界最大級のスタートアップ(新興企業)によるビジネスコンテスト「スタートアップワールドカップ2026」の名古屋予選が4月23日、名古屋市昭和区の岡谷鋼機名古屋公会堂で開かれた。中部地方で初開催となった今回の予選には、独自の技術や革新的なビジネスモデルを持つスタートアップが集結。激戦を制し、今秋に米サンフランシスコで開催される世界決勝大会への切符を手にしたのは、児童発達支援にスポーツとテクノロジーを掛け合わせた「株式会社リィ(Lii)」(本社・名古屋市)だった。

2017年に始まったスタートアップW杯は、米シリコンバレーを拠点にスタートアップへの投資を手がける「ペガサス・テック・ベンチャーズ」(アニス・ウッザマン創業者兼CEO)が主催する世界最大級のピッチイベント。8回目の今回は、世界130以上の国・地域で予選が行われる。

日本では、「ものづくり」の集積地である名古屋で初めて開催が実現した。書類選考などを経た10社が最終選考となる3分30秒のプレゼンに臨んだ。

会場となった名古屋公会堂には、地元企業や投資家、起業家を目指す学生らが詰めかけ、中部エリアのスタートアップ・エコシステムへの関心の高さを印象づけた。

優勝した「Lii」がスポットを当てたのは、現代社会における「運動機会の喪失」、とりわけ発達障害のある子どもたちが直面している厳しい現状だ。

同社によると、発達障害のある子どもたちは健常児に比べて運動能力や体力が著しく低い傾向にあるという。この課題を解決するために同社が開発したのが、スポーツテック型児童発達支援「Lii sports(リー・スポーツ)」だ。

自社開発のデジタルスポーツ支援プログラムで、全国各地の子どもたち一人ひとりのペースに合わせた運動支援を提供する事業モデルが高く評価された。

自らプレゼンに登壇し優勝を決めた廣瀬あゆみCEOは、「本当に驚いていますし、本当に嬉しいです。着実に目の前のお子様に運動を届けることを続けてきた実績が評価されたと思います」と喜びを語った。

スタートアップW杯2026の日本国内予選は、名古屋に加え、東京(7月17日)、九州(8月26日、熊本)の3地域で開催。各地域予選を勝ち抜いた3社は、日本代表として米サンフランシスコで11月に開催される世界決勝戦に出場し、そこで世界チャンピオンになれば、100万ドル(約1億6000万円)の出資を受けることができる。

スタートアップW杯名古屋予選で優勝したLiiの廣瀬あゆみCEO(左)と主催者のアニス・ウッザマン氏=2026年4月23日、名古屋市の岡谷鋼機名古屋公会堂、玉川透撮影

優勝したLiiの廣瀬あゆみCEOの名古屋予選プレゼンの主な内容は以下の通り。

運動機会の格差という「構造的課題」に挑む

皆さん、今朝、運動しましたか?

私たち人間は、狩猟採集時代が最も運動していたと言われています。そして、大きな革命のもとに生産性は大きく向上してきた一方、動く必然性を失ってきました。

今、この狭い島国・日本に7000を超えるメンタルクリニックがあるといわれています。心身の不調は、現代社会の構造的な課題です。そして、さらに運動機会が奪われてしまうのが、発達障害のあるお子様たちです。健常児に比べて、運動能力、体力が著しく低下しているというデータがあります。

これは障害や能力の問題ではありません。機会の問題です。体育の授業で、「じっとしていられない」「ルールが守れない」「できない子」というレッテルを貼られてしまう。地域のスポーツクラブでは、「来ないでくれ」と排除されてしまう。そのようにして運動機会の格差が開いたまま、大人になってしまう。

私たちは、こうした状況を変えたいと思っています。私たちは今、スポーツテック型児童発達支援「Lii sports(リー・スポーツ)」というスタジオをつくっています。そこでは、自社独自で開発したデジタルスポーツプログラム「DEA2000(Digital Ecological Approach 2000)」を用いた支援をしています。

このプログラムは、従来の先生の知識や経験・勘に頼った指導と異なります。みんなが同じように支援のレベルを担保した状態で、全国どこでも展開できます。子どもたちに指導をする、訓練をするというわけではなく、子どもたちが楽しい、楽しいからできた、もっとやりたい、気づいたらできていたという状態をつくりたいと思っています。

「DEA2000」プログラムの操作画面で、鍛えたい七つの基礎感覚、発達年齢、運動レベル、そしてお子様の好きなもの、これらの変数を入力するだけで、2000以上のプログラムから、そのお子様一人ひとりに合わせたプログラムが生成されます。

「順番を待とうね」「違うよ」――。そういった指摘の声ではなくて、子どもたちがゲームをクリアするために、どうやったらできるかを考える。そして、できたら全力でコーチが褒める。そんな環境で、子供たちは知らず、知らずのうちに社会に溶け込めるようなルールを身につけていきます。

私たちは、コロナ禍の2020年に1店舗目をオープンして、現在、全国直営40店舗を展開。今後3年で直営200店舗まで展開する見込みです。これは、医療費の削減や労働人口の確保、さらに自分らしく生きられる社会の実現につながっていきます。

国内のみならず、私たちは世界に向けてこのサービス支援を届けたいと思っています。支援の品質を担保した状態で、運動というノンバーバルコミュニケーションで、中東など世界中の子どもたちに均一に良い運動機会を届けたいと思っています。

私たちは、世界中の人々が今より1分でも多く運動すれば、世界はもっと良くなると思っています。運動の力で世界課題を解決します。ありがとうございました。

スタートアップW杯名古屋予選でプレゼンするLiiの廣瀬あゆみCEO=2026年4月23日、名古屋市の岡谷鋼機名古屋公会堂、玉川透撮影