「人類のゲノムの99.9%は共通」 古代の人骨DNA研究 国立科学博物館長の篠田謙一氏
人類のゲノムから「人種」を考えます。
国立科学博物館長の篠田謙一氏は、古代の人骨のDNAの解析などを通じ、人類がいかに世界中に広がったのかを研究している。現在では約6万年前、数千人規模とみられる集団がアフリカから出て次第に拡散し、アフリカ出身者を除く全人類の先祖となったことが分かっている。人類の歴史やDNA解析を踏まえ、「人種」や「民族」をどう考えるかを聞いた。
「人種」というと、肌や髪の色などに代表される、身体的な特徴を思い浮かべる例が多い。しかし、肌の色はいくつもグラデーションがあり、単純に類型化することは不可能だ。それもあって、篠田氏は「人種は客観的・科学的な定義ではない」と指摘する。
篠田氏はまた、「人類のゲノムの99.9%は共通している。研究者は残り0.1%の違いに着目し、集団の違いを明らかにしているが、共通性の方がはるかに多い」と話す。
例えば、肌の色を決めるのはメラニン色素の量で、「20個から30個の遺伝子が関わっている」という。しかし、これは人間全体の中でみたらごく一部だ。「人類の遺伝子の多様性の85%は、アフリカ大陸に住む人の中にある。平均身長が最も高い人たちも、最も低い人たちも住むのに、肌の色という単一な基準で『黒人』とくくるから同じに見えるだけだ」と語る。
篠田氏は一方、文化概念の「民族」は「人種」と分けて考えるべきで、代表的な例は、共通の言語や信仰を持っている人たちとみる。ただ、こうした「民族」についても、人類の歴史の中で考えればかなり短期間で形成されている。グローバリゼーションが進んで人と人の行き来が増え、移転や婚姻が増えると次第に「民族」の区切りがわかりにくくなる可能性がある。