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女性に人気のない管理職 やってみると「視野が広がった」 7割がポジティブ評価

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ニッセイ基礎研究所准主任研究員の坊美生子さん=2025年2月、東京都内、
ニッセイ基礎研究所准主任研究員の坊美生子さん=2025年2月、東京都内、丹内敦子撮影

日本の女性管理職の比率は諸外国と比べて低く、厚生労働省の2021年度の「雇用均等基本調査結果」によると、管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は12.3%でした。政府は2016年に「女性活躍推進法」を施行し、企業に女性管理職の数値目標の設定などを迫りましたが、期待したほど増えていません。ニッセイ基礎研究所准主任研究員の坊美生子さんに女性管理職をめぐる課題を聞きました。(聞き手・丹内敦子)

男性は働き方に対する考え方が多様化してきて、管理職の人気がなくなってきている。しかし多くの女性の場合、男性のように昇進昇給を前提に働いてこなかったので、元々、管理職の人気は低く、今も低いままだ。私が「定年後研究所」と2023年に実施した調査(大企業に勤める45歳以上の女性を対象にしたインターネット調査「中高年女性の管理職志向とキャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」)でも64.3%の人が管理職には「就きたくない」と回答している。

その理由で多かったものは「責任が重くなったり、業務負荷が大きくなったりする」(69.3%)「部下を統率する自信が無い」(30.2%)「責任が重くなるわりに、給与が上がらない」(24.9%)「家庭との両立が難しくなる」(22.1%)――などだった。

他方、人材サービス会社によると、まだミクロな動向ではあるものの30代半ばから40代の女性は変わってきていて、「キャリアアップ」の意識は高まっているという。ただ、そうした女性たちも「管理職になりたいから」というより、「もっと柔軟な働き方ができる会社がいい」とか「今の会社は女性のロールモデルがいないので、より正当に評価されて男性並みに普通に昇進していく会社で働きたい」と考え、転職して自分のキャリアを重ねていきたいということのようだ。

品川駅の自由通路を歩く通勤客ら=2023年3月、東京都港区
品川駅の自由通路を歩く通勤客ら=2023年3月、東京都港区、山本裕之撮影

企業側も変化してきている。20代や30代の女性については管理職に登用することを前提に育成し始めている。妊娠・出産後に昇進が難しくなるのだったら、若いうちに経験を積ませて昇進させ、職務範囲を広げておけば、出産後に復職しても昇進しやすくなるだろう、と考える企業の話はよく聞く。マネジメントの見直しを始めている会社は少なくなく、そうしなければ人材争奪戦に負けてしまう。

女性が管理職になれば、女性自身のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)の観点からメリットがある。第1に昇進して収入アップをめざしたほうが、結果的に受け取る年金額が増え、老後の「貧困リスク」を減らせる。年金受給額は、基本的に現役時代の賃金水準と勤続年数で決まる。男性に比べ、これまで女性は管理職に就く人が少なく、平均勤続年数が短いため、格差が生まれている。

第2に、実際に管理職に就いたことがある人の66.5%の人が「管理職の仕事は人生経験としてプラスだ」(同調査)とポジティブに受け止めている。企業へのインタビュー調査でも「管理職になって裁量が広がり、やりがいのある仕事ができるようになった」「人生経験としてこれまで無かった視野を持つことができた」「自分の都合に合わせて仕事を進められるから、管理職のほうが仕事はしやすい」という意見が寄せられた。

「逃げ恥」の百合ちゃんみたいなら、私もめざしたい

女性管理職が増えていけば必然的にタイプも多様化していく。(1985年に制定された)男女雇用機会均等法世代や50代ぐらいだと、女性管理職といえば仕事一筋で残業をいとわず、部下に次々と指示を飛ばす「昭和型」をイメージし、「私には無理」と思う人が多い。でも、TBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の石田ゆり子さんが演じた「百合ちゃん」みたいに上層部への忖度(そんたく)はせず、部下に溶け込んでフラットな関係を築き、自然体でチームをまとめる新しいタイプの管理職が身近にいると「私もめざしたい」と思う人は出てくるだろう。自分に合ったロールモデルがいれば、女性たちの意識も変わっていく。