2022年のW杯カタール大会でベスト8に残ったチームのうち、2022年の国別GDPの10位までに入るのは準優勝フランス(7位)と、ベスト8のイングランド(英国は6位)だけだった。
2024年4月の国際サッカー連盟(FIFA)の世界ランキング(男子)のトップ10に、昨年のGDPの上位5カ国は一つもない。国の経済力が代表チームの強さのバロメーターになっていないということだ。
夏季五輪のメダル争いでは「2強」の米国と中国を見ると、米国の場合、サッカー人気が高いヒスパニック系の移民が増えてきているが、野球の大リーグ、アメリカンフットボールのNFL、バスケットボールのNBAなど米国発祥のスポーツの壁を崩せない。
中国はW杯に2002年大会の一度しか出場を果たせていない。習近平国家主席は一時期、サッカー強国をめざす国家戦略を掲げ、2015年に中国サッカーの改革プランができた。
世界のスタークラスを国内のクラブが欧州から引き抜く「爆買い」に走り、政府主導で施設の整備に予算を割いたが、代表の成績は振るわない。
サッカーはルールも明快だから、子どもにもわかりやすい。高額な道具や施設はいらず、ボール一つあれば、たとえ裸足でも楽しめる。
「サッカー王国」ブラジルなら、ファベーラ(スラム街)から、億万長者のスターになる夢が持てる。世界の多くの国にプロリーグはあるし、そこで目に留まれば高年俸が約束される欧州のビッグクラブに移籍する道が開ける。
スポーツ取材で世界を巡っていると、サッカーは「世界の共通語」だとさえ感じる。その国出身の有名なフットボーラー、さらにつっこんで、代表チームの名勝負を話せば、すぐに意気投合できる。
地球上で最も人気のスポーツには、そんな奥深さがある。