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ダボスで声を上げた女性たち「131年も待てない」ジェンダー格差の解消求めて連帯

ダボス・リポート2024 更新日: 公開日:
世界経済フォーラム年次総会に集まる女性たちの会であいさつするマージョリー・クラウスさん
世界経済フォーラム年次総会に集まる女性たちの会であいさつするマージョリー・クラウスさん(左から2人目)=スイス東部ダボス、宮地ゆう撮影

「成功した男の集まり」に変化求める声

今年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の参加者は約2800人。その中で女性の割合は28%だったという。年々少しずつ増えてきてはいるものの、いまでもダボスが「成功した男性たちの集まり」であることは変わっていない。

そんな中で、「女性たちで集まり、悩みやノウハウを共有しませんか」と声をかけ合った人たちがいた。こうして生まれたのが、女性リーダーたちのパーティーだった。

公式の日程が始まる前夜、ホテルで開かれたパーティーをのぞいてみた。

ピンクの照明で照らされた小さなステージに、今年の「幹事役」の女性たちが並び、熱いスピーチが続いていた。女性たちは、ダボスに集まる女性たちが国を超えて連帯することで、男女格差をなくしていこうと訴える。

すぐに会場から次々と手が上がり、質問や意見が飛び出した。

「若い女性リーダーたちへのアドバイスはありますか?」と手をあげたのはアメリカの11歳の起業家。次に「更年期の中で管理職を続けることの大変さやノウハウをみなさんと話し合いたいです」と別の女性からも声が上がった。

ほかの場所とはやや違い、ここはとても和やかだ。「隣にいる人にどんどん話しかけて、知り合うようにしましょう」と幹事が促す。

幹事の一人で、アメリカの大手PR会社を創業したマージョリー・クラウスさんはこの交流会の始まりをこう話す。

「私がダボスに来始めた約20年前は、女性の参加者は数%しかいなかった。女性たちが繋がり合うことで、男性社会の中で働いていく悩みやノウハウを共有できたらいいなと思ったのです」

世界経済フォーラム年次総会に参加した女性たちの交流会
世界経済フォーラム年次総会に参加した女性たちの交流会=スイス東部ダボス、宮地ゆう撮影

「女性はもはやニッチ市場ではない」

クラウスさんは、世界各国から参加する女性たちに「集まりませんか?」と声をかけていった。やがて、毎年顔を合わせ、連絡を取り合う仲間が増え始め、国を超えて個人的な深い友情が生まれていった、と話す。

2016年、初めての正式なパーティーを開催した。この年集まったのは40、50人ほどだった。だがその後参加者は増え続け、今年は500人以上から参加希望があったという。「会場の大きさの関係で、一部は断わらざるを得なかったほど」(クラウスさん)

アメリカのクレジットカード会社「マスターカード」で、女性で最も高い地位にあるという米国社長のリンダ・カークパトリックさんは、ひときわ熱かった。

「私が勤めるマスターカードの成功は、商取引が繁盛しているかどうかにかかっています。そして、日々、何を買うかという決定権を持っている85%は女性なんです。女性は全世界の40%の富を握っている。女性はもはやニッチな市場ではないんです」

大きな拍手が起きる。

「私たちがダボスに来られるのは嬉しいことです。でも、来られない女性たちはたくさんいる。だからこそ、私たちはみな、男女格差の問題を前進させる責任があると思ってください。131年も待つわけにはいかないんです!」。そう話すと、会場からは歓声が上がった。

世界経済フォーラム年次総会に参加した女性たちの交流会
世界経済フォーラム年次総会に参加した女性たちの交流会=スイス東部ダボス、宮地ゆう撮影

ジェンダーギャップ、日本の特異さ

昨年、フォーラムが出した「Global Gender Gap Report」(世界男女格差報告書)報告書によると、今の男女格差の是正ペースでは、男女平等になるのにはあと131年かかるとしている。

気の遠くなるような数字だが、残念ながら、日本は131年あっても平等にはなりそうもない国だ。報告書では、日本は男女平等の達成度合いで、調査対象となった146カ国のうち125位。毎年、格差の大きい国として名前が挙がる常連だ。

世界には、女性だからというだけで教育をまともに受ける機会のない国もある。だが、日本が特異なのは、教育面などでの男女格差はほとんどないにもかかわらず、社会に出たとたんに大きな差が生まれることだ。

特に下位にあるのが政治分野で、世界138位。収入や企業の役員・管理職の割合での平等も進んでおらず、経済分野も世界123位と、女性の扱いでは世界の最底辺グループに位置している。世界的にも日本の突出した格差の高さが知られるようになって久しい。

パーティーでは、多くの女性たちが「131年」という数字を合言葉のように口にしていた。「131年も待てない!」「131年も待つのはやめよう!」と。

だが、現在、世界の最下層レベルにある日本は、このままではもっと長い時間が必要になるかもしれない。熱気にあふれた会場を後にして、凍った雪の道を歩き始めると、131年で平等になる女性たちが、羨ましく見えてきた。