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「ルールに基づく国際秩序」実現へICCに希望寄せる人々 「道理」を通す小さな一歩に

World Now 更新日: 公開日:
キーウ中心部に展示されたロシア軍車両の上で遊ぶ子どもたち=2023年1月、国末憲人撮影

戦場での非道を一つひとつ洗い出し、被害者の救済に臨む国際刑事裁判所(ICC)の取り組みにはさまざまな困難が立ちはだかり、時に絶望感にも襲われる。それでも、その歩みを続ける意義とは何なのか。

無理が通れば道理が引っ込む。ウクライナに侵攻したロシアの狙いは、つまりはそこにあったのであろう。

パワーでねじ伏せれば、いずれ世界は追認する。弱き者は黙って従えばいい。そのように他国を威嚇し、攻撃しつつ開き直る態度は、程度の差こそあれロシア以外の大国や地域大国にも、時にうかがえる。ICCの活動を支え、戦争犯罪を追及しようとする営みは、このように力任せの論理で踏みにじられた「道理」を回復させる一歩に他ならない。

戦犯裁く機運、冷戦後に加速

東西の力の均衡が前提だった冷戦時代と違って、ルールに基づく世界の秩序を曲がりなりにも築いてきたのが、冷戦後の三十余年だった。戦争犯罪を裁く取り組みも、冷戦期の停滞を抜けだし、1990年代には旧ユーゴ国際犯罪法廷、ルワンダ国際犯罪法廷が生まれ、2000年代にICCが実現した。

世界の多くの人々は無用の暴力を憎み、それを振るう人を処罰してほしいと願う。ICCの活動は、そのような市民の常識的な感覚に支えられていた。

キーウのレストランにはウクライナ国旗の色の風船があった=2022年6月、国末憲人撮影

近年の技術の発展と普及が、その歩みを後押しする。市民が受けた被害の映像が、現場からSNSで直接発信され、各国の人々の手元に届く。遠い地に暮らす人々の感情を生々しい映像が揺さぶり、対応を求める世論となって、政治を動かす。

イスラエルとパレスチナの紛争で、双方の被害の映像が国際社会の激しい反応を招いたのも、現象の一例だ。ICCのかかわりを求める声が上がり、検察官がガザの検問所を訪れるなどICC側も応える姿勢を見せる。

パレスチナ自治区ガザ南部とエジプト境界にあるラファ検問所を10月29日に訪れ、「独立した立場で、イスラエルで起きたことやパレスチナ人が関与したと見られる犯罪を調べている」と述べるICCのカリム・カーン主任検察官=ICC公式X(旧ツイッター)アカウントより​

最大の拠出国、日本に期待する声も

「道理」を求める声は、国際社会の大海の中でまだ、小さな流れに過ぎない。ICCの影響力は限られ、活動はしばしば批判や妨害に直面する。楽観的ではいられない一方で、多くの被害者がその試みに希望を寄せているのも確かである。

「ルールに基づく国際秩序」の擁護を責務と位置づけてきた日本は、この流れを拡大させ、定着させる役目を担うべきだろう。米国も中国も参加しないICCで日本は最大の分担金拠出国であり、そのイニシアチブを期待する声はICC内部にも強い。