自動販売機には釣り銭がどれだけ用意されているのだろう?
そんな疑問を持ったことはないだろうか。
硬貨で買う人が多ければ投入された硬貨を釣り銭に回せばいいが、紙幣や500円玉で買う人が多くて釣り銭切れになると販売機会を失うことになる。
かといって自販機に眠らせておく釣り銭はできるだけ抑えたい。
ではいくらが「最適解」なのか。
実は、飲料の自販機に関しては、全国一律の模範解答が出ているのだという。
日本自動販売システム機械工業会によると、それは2000円。
いろいろ試した結果、100円玉15枚と10円玉50枚を用意しておけば、釣り銭切れはほとんど起きないことがわかっている。
投入された硬貨は選別されて釣り銭用の筒に蓄えられ、筒がいっぱいだと別の箱に入る。
1982年に登場した初代500円玉は、韓国の500ウォン硬貨と材質や大きさがそっくりだったため、わずかに重い韓国硬貨を削って自販機で使う犯罪が90年代に相次いだ。
当時の500ウォンは50円くらいの価値だった。自販機業者は、違いを見分けられる硬貨選別機への交換を急いだが、特に台数の多い飲料業界は、思いがけない大損害を被ったという。
2024年には新紙幣が導入され、渋沢栄一の1万円札、津田梅子の5000円札、北里柴三郎の1000円札が登場する。
22年11月には自販機やATMの紙幣識別機のテストも終了。偽造硬貨と違い、新札対応は順次進めればいいので余裕があるそうだ。
自販機には住所がある
日本の屋外に設置された自販機の多くが、一つ一つ住所を持っているのをご存じだろうか。
釣り銭口の近くを探してみると、こんなステッカーがあった。「ここの住所は東京都中央区銀座5丁目14番1号」
「緊急時に消防や警察に通報したいけれど、いまどこにいるのかを正確に伝えられない」
住所表示が広まったのはこんな困りごとがきっかけだった。
飲料メーカーでつくる全国清涼飲料連合会によると、全国消防長会の要請を受けた自販機業界が、2005年1月から次第に広げていったという。
当時は、携帯電話が急速に普及し始めていたころ。
家庭の固定電話や公衆電話からの通報であれば住所をすぐ特定できたが、携帯電話からだとそれが難しかった。
住宅も、住所はおろか、表札すら出さない家も出てきた。近くで事故や事件があった時、周辺の自販機を探せば、正確な位置を通報できるというわけだ。
自販機は、社会インフラとしての役割も担ってきたのだ。
(大牟田透、山下裕志)