イギリスの雇用審判所は今年5月、男性の薄毛を「ハゲ」と侮辱したのは、性別に関連するハラスメントにあたると認定した。
英紙ガーディアンなどによると、原告は約24年、同じ会社に勤めた男性。
2019年に同僚から「ハゲ」と侮辱されて苦痛を受けたとして、元勤務先と同僚を相手に損害賠償を求めた。
会社側は薄毛について、女性にも生じることを挙げて性別に関するハラスメントには当たらないなどと反論したが、3人の審判員は、薄毛が男性に多く見られることからこれを退け、性別に関連する身体的特徴について原告の尊厳を傷つけたと判断した。発言について、「職場で女性の胸のサイズに触れることと同等である」とも指摘したという。
頭髪ハラスメントの被害経験どのくらい?全国実態調査
日本パブリックリレーションズ研究所は2021年、30〜60代の男女2万人を対象とした「頭髪ハラスメント(髪ハラ)」に関する全国調査を初めて実施した。
それによれば、薄毛が「気になる」「やや気になる」人は計約4割。このうち自分がいる時に直接話題にされたり、からかわれたり、ネタにされたりした被害経験も約4割が「ある」と回答した。
薄毛を気にしていない人には、周囲にいる薄毛の人のことを話題にしたり、からかったりしたことがあるかを尋ねた。当人がいる時だと約3割、当人がいない時だと約4割が「ある」と答えた。
その時の状況や気持ちについては、当人がいる、いないに関わらず「場の雰囲気がなごむ・盛り上がる」が6割を超えた。被害経験がある人は男性の方が多かったが、加害経験で見ると、性別に大きな差はなかったという。
被害経験がある人の中から200人を無作為抽出し、そのときの気持ちを尋ねると、「不快な気分」が138人。
ただ、そうした場合でも「不快感を隠し、普段通り会話する」「不快感を隠し、ネタにして盛り上げる」といった対応を選んだ人が96人(複数回答)いた。
同研究所の井之上喬所長は「加害者側に罪悪感が薄く、ハラスメントに該当する行為だという認識が低い。また、直接被害にあった方々の4割強の人が『不快感を隠す』と回答するなど、日本社会に根付く同調圧力の強さを物語る結果」とコメントしている。