新宿から「特急あずさ」で約2時間。山梨と長野の県境にリゾートホテル「リゾナーレ」がある。星野リゾート(本社・軽井沢)が運営して10年になる。
ここで来年春、「体の中と外から、全身でワインを感じる」という本格的なワインリゾートの旅が始まる。
八ケ岳のブドウ畑やワイナリーを歩き、ワインにあわせた食事を味わってもらう。ワインツアーといえばブドウ畑を日帰りで巡る単純なものが多いが、食事から宿泊、リラクセーションまで、すべてがワインずくめ。11月末の発表後、注目を集めている。
総支配人の加藤智久は「10年前から構想を温め、ようやく形になった。日本再発見というコンセプトの下、日本のワインの素晴らしさを感じてもらえるはずだ」と話す。
2室限定のワインスイートルームは、カーテン、じゅうたん、ソファ、壁紙がワインレッドに統一されている。
ワイン用のブドウを使ったスパトリートメントでは、勝沼ワインをたっぷりとお湯に注いだ足湯や、ワインづくりで廃棄されるブドウの皮や種をパウダー状にしたパックもある。
仕上げはグレープシードオイルだ。ブドウの葉の温かいお茶もある。レストランでは、地元の野菜や肉を使った料理の一皿ずつに地元のワインをあわせたコースを味わえる。
提携ワイナリーの「ドメーヌ ミエ・イケノ」では、フランス国家資格のワイン醸造士、池野美映の案内で醸造施設を見学できる。耕作放棄地の3.6ヘクタールを2007年に開墾。昔ながらの醸造方法で、この12月に初めて800本の赤白のワインを世に出す。来春からリゾナーレの宿泊プランの中で、1回10人未満の見学を公開日に限り受け入れる。
池野は言う。
「その土地を歩いて自分の目と耳で確かめ、そこを旅をしているときにしか飲めないワインを味わう。見知らぬ土地の輸入ワインを飲むより、ずっとぜいたくな旅では」
地元食材とワインのマリアージュ
一方、ワインの力で国内外からの集客をもくろむ老舗の温泉旅館もある。
石川・山代温泉の宿「あらや滔々庵」は、地元食材とルクセンブルクの白ワインのマリアージュ(組み合わせ)と銘打ち、冬限定の特別メニューを展開する。
県内の小松空港とルクセンブルクの間に定期貨物便が就航している縁で、同国経済通商省と一緒に、旅館が考案したメニューをルクセンブルクワインとともに味わう有料イベントも東京で開いた。
「日本料理に輸入ワインを組み合わせることで、地元食材の新たな魅力を引き出したい」と、石川県も後押しする。
山代温泉には海外からの湯治客も増えていて、新たな付加価値としてワインへの期待が膨らむ。