イングランドのギャレス・サウスゲート監督は試合前、チームが2020年以降行ってきたこのポーズをイラン戦の前にも行うと明言していた。
「片ひざをつく」ことについて、11月20日の会見でサウスゲート監督は、「私たちは話し合って、やるべきだと感じている。それが私たちがチームとして支持するものであり、長い間続けてきたからだ。(ワールドカップは)大きな舞台であり、特に若者たちがインクルーシブであることがとても大切だと理解するために、私たちは(片ひざをつく行為が)世界に響く力強いステートメントになると思う」と述べた。
ロイター通信などによると、片ひざをつくポーズは、アメリカで黒人男性が白人警官によって暴行され死亡したジョージ・フロイド事件をきっかけに2020年以降続けられ、最近では、毎試合ではないものの、大会の決勝や世界的に注目を集める試合の前に行われきた。
くしくも、イランでは今年9月にイスラム教の女性が身につける布「ヒジャブ」の付け方が不適切だとして道徳警察に拘束された22歳の女性が急死した事件を発端に、女性の人権や自由を求める反政府デモが、若者を中心にイラン国内で続いている。
イギリスBBCなどは、イランの人権活動家通信HRANAのまとめとして、これまでに少なくともデモに参加した348人が治安当局に殺害され、約1万6000人が拘束されたと報じた。抗議デモに参加し、死刑宣告を受ける人も出ており、深刻な人権侵害が指摘されている。
反政府デモ支持を表明するイラン代表選手も
自国内からもW杯出場辞退を求める声が上がるなど、逆風にさらされているイラン代表だが、反政府デモを支持して声を上げる選手も出ている。
ロイター通信によると、AEKアテネ(ギリシャ)でプレーするミッドフィルダー、エフサン・ハジサフィ選手は11月20日の会見で、「彼らとともにあるし、支持している」「私たちは自分たちの国の状況が良くないし、人々が幸せでないことを認めなければいけない。ここ(カタール)にいるけれど、それは私たちが彼らを代弁できないことでも、リスペクトしていないことにもならない」と述べたという。
「イランのメッシ」の異名を取るフォワードのサルダル・アズムン選手も9月、自身のインスタグラムのストーリーで、「(イラン代表を)外されたって構わない。簡単に人々を殺すなんて恥を知れ。イラン女性万歳」などと投稿していた。
Sardar Azmoun, who plays for @bayer04_en & is now in Austria with Iran's national team for a friendly match against Senegal, says he couldn't remain silent despite the team's rules.
— Iran International English (@IranIntl_En) September 25, 2022
"I don't care if I'm sacked. Shame on you for killing people so easily. Viva Iranian women." pic.twitter.com/z3c0Et699g
また、イングランドのハリー・ケーン主将は、他の代表主将らとともに、多様で平等な世界への支持を表す「One Love」と書かれたアームバンドをイラン戦で身につける方針を明らかにした。
このアームバンドにはLGBTQ+コミュニティーの権利擁護の意味も含まれており、同性愛を違法と位置づけるカタールやイランに対する強烈なメッセージとなると思われた。だが、イギリスのメディアは21日、国際サッカー連盟(FIFA)が未承認のアームバンド着用にイエローカードを出すと警告したことから、ケーン選手らが着用計画を断念したと報じた。