開会式を巡り、ロック界の大御所で、本人も大のサッカーファンとしても知られるロッド・スチュワートは、100万ドル(約1億4,000万円)以上でオファーがあったことを明かした。そのうえで、「断ったよ。行くのは正しくない」とインタビューで答えた。
また、SNSで「参加するのではないか」という噂をあえて否定したのは、イギリスの歌手、デュア・リパだ。
「現在、カタールで開催されるワールドカップの開会式で私がパフォーマンスをするのではないかという憶測が飛び交っています。私は出演しませんし、出演交渉に参加したこともありません」「私は遠くからイングランドを応援し、カタールがワールドカップの開催権を獲得したときに行った人権に関する公約をすべて果たしたときに訪れることを楽しみにしています」と自身のインスタグラムに書き込んだ。
過去の大会ではダイアナ・ロス、シャキーラやジェニファー・ロペスなどが花を添えた開会式。今回、アルベイト・スタジアムで開かれる開幕式には、BTSのJungkookやアメリカのラッパーのリル・ベイビーなどが参加すると発表され、話題になっている。
しかし今回セレブたちが参加に二の足を踏んだのは、デュア・リパが言及したように、同国の人権状況への懸念からだ。
カタールでは同性愛が違法とされるなど、LGBTQ+の人権が保障されていないこと、またスタジアム建設などでの移民労働者への虐待や人権侵害があったと批判されているのだ。
イギリスのガーディアン紙は昨年、カタールで働くインドやパキスタンなどの移民労働者ら少なくとも6500人が、W杯開催権を獲得した後の10年間に死亡したと報道。多くは新スタジアムや空港、ホテルなどの建設に従事したとしている。
最近では、開催を控えた首都ドーハで、数千人の移民労働者が立ち退きを迫られたなど、人権状況に対する懸念が続く。
また、性的少数者への差別的な処遇も非難の的だ。カタールは、同性間の性行為を違法としている。最高刑には石打ちによる死刑が含まれ、人権団体などが問題視してきた。
このような状況が改善されないなかでのW杯開催について、欧州を中心に批判があがっていた。スペイン、フランス、ドイツなどでは、パブリックビューイング(PV)を実施しないと宣言する都市が相次いでいる。
出場する選手たちも声を上げている。
デンマーク代表は追悼の意味を込めた黒いユニフォームの着用を決定、オランダの選手たちは外国人労働者たちと面会するという。
ヨーロッパの出場9カ国の選手たちは、カタールの同性愛に関する法律への抗議として、「One Love」と記された腕章を着用する予定で、オーストラリアもチームとしてカタール政府に改善を求める動画を公開した。
批判の矛先はカタール政府だけでなく、FIFA(国際サッカー連盟)にも向けられている。
国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ、アムネスティ・インターナショナルなどは、FIFAは自らの人権規約から外国人労働者への虐待を特定、是正する責任があるとし、FIFAとカタール政府に遺族らへの金銭的な補償などの救済策を求めている。
厳しい視線を向けられている今大会。これに対してFIFAのインファンティノ会長は、参加する全32カ国に対し書簡を送り、「どうか、今はサッカーに集中しよう」と呼びかけたという。
書簡には「出身地、経歴、宗教、性別、性的指向、国籍に関係なく、誰もが歓迎される」とも書かれていた。