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OSINT支える衛星画像、ウクライナ侵攻で注目 提供会社「紛争時に透明性と真実性を」

World Now 更新日: 公開日:
ウクライナのルハンスク州の衛星画像
ウクライナのルハンスク州の衛星画像=プラネット・ラボ提供

市民らがインターネット上の公開情報を元に調査や分析をする「OSINT(オシント)」。それが広がった背景の一つで忘れてはならないのが、衛星画像の発達だ。

これまで、衛星開発は政府が中心だった。衛星画像は高価で技術的にも扱いづらかった。

それが技術革新により、民間企業が重さ100~500キロほどの小型衛星を低コストで開発できるようになった。複数の衛星を一体的に運用することで、高い頻度で観測が可能となったのだ。衛星の小型化と量産化によって、衛星画像が以前に比べて安価で手に入るようになり、オシントの拡大を後押しした。

衛星画像を提供する米プラネット・ラボは、二つの衛星群を運用している。その一つの解像度は50センチメートル。地球上のどこの画像でも撮ることができるという。

具体的に、何がどの程度見えるのだろうか。チーフ・インパクト・オフィサー、アンドリュー・ゾリ氏は「あなたがイスに座っていることはわかるが、新聞の文字は読めず、あなたが誰かはわからない」。ゾリ氏は、森林伐採の状況や都市の拡大などがわかるとして「地球上で起きている変化がわかるレンズだ」と話した。

米プラネット・ラボのチーフ・インパクト・オフィサー、アンドリュー・ゾリ氏
米プラネット・ラボのチーフ・インパクト・オフィサー、アンドリュー・ゾリ氏=同社提供

欧州宇宙機関は衛星画像を無料で提供している。ロシアのウクライナ侵攻では、政府だけでなく、市民もこうした衛星画像を使って調査や分析をしている。

一方、動画や画像の撮影場所の特定に使われている衛星画像は、誰がどのような意図で使うかしだいで、戦争の道具にもなり得る。ウクライナのフェドロフ副首相は、ロシアのウクライナ侵攻から5日後の3月1日、商業衛星を運用するプラネット・ラボなど8社に、衛星画像の提供を要請した。衛星画像を提供するのは欧米企業が多く、それを使って調査、分析する報道機関や市民も欧米中心だ。

米プラネット・ラボの衛星
米プラネット・ラボの衛星=同社提供

ゾリ氏は、ロシアのウクライナ侵攻を「リアルタイムの情報があふれ、それを誰もが利用できる21世紀最初の大きな紛争だ」と位置づけ、「私たちだけでなく新たな種類の情報を提供する会社は、紛争の一端として不可欠な存在になっている」と話す。

「私たちは独立した信頼できる情報源となり、人道的な危害のリスクを最小限に抑えることを原則にしている」ともいい、ロシアとは取引をしていないと説明した。

同じく衛星画像を提供する、米マクサー・テクノロジーズは、70カ国以上に数百の顧客を持つ。

ロシアによるウクライナ侵攻では、米政府や民間企業などに加えて、「その政治的見解に関係なく、歴史を記録する目的で報道機関にも画像を提供している」という。「解像度の高い衛星が増え、画像を処理し共有するスピードも、過去の紛争時とは劇的に異なる。ソーシャルメディアから得られる現場のデータは豊富で、衛星データと融合させることで、貴重な情報が得られる」と、衛星画像活用の意義を強調した。

日本の宇宙ベンチャー「アクセルスペース」が開発した超小型衛星
日本の宇宙ベンチャー「アクセルスペース」が開発した超小型衛星。重さ100キロほどで、地上の様子を撮影できる=同社提供

2016年に創業した米カペラ・スペースはいつでも、全天候で地球を観測できる衛星群を持っている。

パヤム・バナザデCEO(最高経営責任者)は「衛星画像は、紛争時に透明性と真実性を与え、最終的に人命救助に貢献できる。ウクライナの紛争では、衛星技術が官民ともに非常に重要であることが証明されている」とメールでの取材に答えた。

米カペラ・スペースのパヤム・バナザデCEO
米カペラ・スペースのパヤム・バナザデCEO=同社提供

バナザデ氏は米国・ウクライナ両政府にデータを提供していると明かした上で、「戦争が続いている間はウクライナを支援し続けるつもりだ」とした。