関係筋の一人によれば、8月末ごろから、北朝鮮の複数の場所でICBM発射の準備とみられる兆候が観測されている。
この関係筋は「具体的な兆候については明かせないが、複数地点でミサイル発射の動きがある」と語った。移動発射台などの動きを捉えての発言とみられる。
日米韓は9月7日、東京で開いた北朝鮮政策を巡る高官協議で、ICBM発射の可能性についての分析や対応策について協議した模様だ。日米韓は同じ協議で、ロシアによる北朝鮮製弾薬購入の動きについても対応策を検討した。
関係筋の一人は、北朝鮮が発射を準備しているミサイルが、米国本土全体を射程に収める新型ICBMの火星17の可能性があるとの考えを示した。
北朝鮮は今年1月から6月にかけ、様々な種類のミサイルを発射した。同時に、咸鏡北道豊渓里(ハムギョンプクト・プンゲリ)の核実験場では7回目の核実験を行う兆候が現れていたが、5月末くらいから実験準備の動きは止まっている。
別の関係筋は、北朝鮮が核実験の動きを停止した背景には、新型コロナウイルスの流行や、唯一の支援国と言える中国の反対があった可能性があるとの見方を示した。北朝鮮は8月10日、新型コロナの「撲滅」を宣言した。この関係筋は、今秋の中国共産党大会が終わった後、北朝鮮が核実験に踏み切る可能性があるとの考えを示した。
関係筋の一人は「北朝鮮は戦略核や戦術核の実験を行う可能性がある。その運搬手段として、様々な種類のミサイルを事前に発射する可能性がある」と語った。
複数の関係筋によれば、北朝鮮は新型コロナの影響による国境封鎖や制裁措置などで、経済事情が悪化している。ICBM発射の動きと、それに続くとみられる核実験は、米国と対決する空気を作り出し、国内の不満を抑えて団結させる狙いがあるとみられる。
ICBM発射と核実験を行えば、台湾海峡やウクライナ情勢への対応で、朝鮮半島に対する関心が薄らいでいるバイデン米政権を対話の場に引っ張り出せるという計算も働いている模様だ。