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「ハリウッドで日本人は差別され…」天然パーマを矯正された俳優、松崎悠希さんの怒り

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ハリウッドで活躍する松崎悠希さん
ハリウッドで活躍する松崎悠希さん=2021年3月、東京都中央区、加藤諒撮影

俳優は松崎悠希さん(40)。1999年に渡米し、「硫黄島からの手紙」「ピンクパンサー2」など、多くのハリウッド作品に出演している。近年はキャスティングも手伝っている。

ハリウッドで活動する中で、撮影現場や作品描写で繰り返される日本人への差別や偏見を目の当たりにしてきたという。やり取りは次のとおり。

――ハリウッドで活躍している松崎さんは、これまで何度も差別に遭ってきたそうですね。

2011年、アメリカドラマ「メル&ジョー 好きなのはあなたでしょ?」(2010~2015年)に出演した時のことです。僕が衣装合わせやメイクをしていた時、アメリカ人のプロデューサーがやって来て、僕のパーマを指差して「この髪、本物なの?」と聞いてきたんです。

僕が「本物です」と言ったら、「でも日本人は全員ストレートヘアでしょ?」と言うから、「いや、そうとは限りません。僕みたいに天然パーマの日本人もいるんです」と答えました。

ドラマ「メル&ジョー 好きなのはあなたでしょ」に出演した松崎悠希さん(左)と共演者
ドラマ「メル&ジョー 好きなのはあなたでしょ」に出演した松崎悠希さん(左)と共演者。プロデューサーの指示でパーマの髪をストレートヘアにされた=本人提供

そしたら、プロデューサーは「でも、アメリカ人の視聴者は、日本人は全員ストレートヘアだと考えていて、あなたの役は日本人だから『日本人』に見えなければいけない。あなたは『日本人らしさ』が足りない」「だから、アメリカ人の思う日本人の髪型に変えさせてもらう」と言い始めました。

そのとき、黒髪ストレートヘアでおかっぱだった言語指導の日本人女性が近くにいたんですが、プロデューサーがその人を指して「これよ、これが日本人の髪型よ」って言って、メイク担当者を呼んで、「この人(松崎さん)の髪形をこういうふうにしてちょうだい」と指示しました。

僕の髪にヘアアイロンをかけ、強制的にストレートヘアのおかっぱにしたわけです。

プロデューサーの指示でストレートヘアにされた松崎悠希さん
ドラマ「メル&ジョー 好きなのはあなたでしょ」で、松崎悠希さんは、プロデューサーの指示でパーマの髪をストレートヘアにされた=本人提供

また、別のキャスティングオーディションでも、差別とステレオタイプの嵐でした。

そんなやり取りをして、担当者はようやく少し納得するわけです。僕の外見が、担当者の中の日本人像に当てはまっていないから、その理由が必要なわけですよ。「なんでこの人は『日本人』っぽくないんだろう」と、疑問という名の偏見を、オーディションの度にぶつけられるのです。

ハリウッドの製作陣が、日本人俳優をキャストする際の最優先事項が、「ハリウッドが考える日本人」に見えるかどうか、なんです。ハリウッドはキャスティングの際に、「authentic Japanese actors/actress=本物の日本人俳優」という言葉を使うのが好きなんですけど、実際の日本社会を反映していない架空の日本人像を求めているわけなんですよね。

――今回、ハリウッドによる差別や偏見をTwitterで「告発」したきっかけは何だったのでしょうか?

近年、アジア系へのヘイトクライム(アジアンヘイト)が相次ぎ、日本人などマイノリティーへの差別や偏見の広がりを感じていたからです。

アジアンヘイトの温床には、ハリウッドなどが作品を通して発信してきた「哀れなアジア人」や「意地悪なアジア人」などのステレオタイプなイメージがあるのです。誤ったイメージが刷り込まれ、それが近年、アジア系への暴力を伴う差別として表に出てきました。

さらに、僕はここ数年、日本人俳優のキャスティングを手伝ってきたんですが、その過程でも日本人への差別や偏見が目につくようになったんです。

当初、ハリウッドの映画人は、そもそも自分たちが差別している自覚もない状態だったんです。彼らは、「日本は単一民族国家」という幻想を持っていて、日本人の役をキャスティングする際は「ハリウッドが考える日本人像」の中に収まっている人を探しているんですよ。

僕自身も「本当に日本人なの?」と聞かれ続けてきたんですけれども、ミックスルーツの日本人俳優の扱いはもっとひどいです。ハリウッドの映画人は「その俳優は、日本人・東洋人に見えるか?」と聞いてくるんですが、ここでミックスルーツの日本人は「日本人」扱いされず、全て排除されるんです。

キャスティングで提出する書類では、俳優の両親の国籍情報を求められることが多く、俳優自身が日本人でも、両親が日本ではない人は、圧倒的に不利になるか、排除されるか、になります。

ハリウッドで日本人が差別されてきた実態を「告発」する松崎さんのツイート

――欧米では、差別的な言動をしたら、例外なく「一発アウト」になるイメージがあります。黒人俳優の方々に「髪の毛をストレートヘアにしろ」と言ったら、それこそ大問題になるかと思うのですが、日本人の場合はなぜ「大ごと」にならないのでしょうか。

そう、もうすでに小川さんが答えを言ったんですよ。日本人を差別しても、「大ごと」にならないからなんですよ。黒人俳優の方々に同じことをやったら、「大ごと」になる。でもこれが日本人だと、うんともすんとも言わない。これまで日本人が誰も文句を言ってこなかったから、なんです。

何年も前に、とある有名プロデューサーたちと会食をしました。彼が「これから中国市場がどんどん伸びる中で、中国に配慮した映画作りをしなければいけない。怒らせないように気をつけなきゃいけない」と話していたんです。

彼は、過去に日本人を差別的に描写したことがあり、僕はそこで突っ込んだんですよ。「でもあの映画で、日本人を変なふうに描いていませんでしたっけ?」と。そしたら、彼は「でも、日本人は変な描き方をされても怒らないし、ボイコット運動もしない。興行収入に影響しないから配慮する意義をあまり感じない」と言っていたんですよ。これが日本人の描写が差別的でも、ずっと変わらない原因です。

日本では、耐え忍ぶことが美徳という考えを持つ人がいますが、それは日本以外では通用しないということです。

インタビューに答える松崎悠希さん
インタビューに答える松崎悠希さん=2021年3月、東京都中央区、加藤諒撮影

――人種関係なく、差別はあってはなりません。言われないと分からないほど、一部のハリウッドの映画人の人権意識は低いのでしょうか。

これは、彼らの人権意識が低いというよりも、やはり批判の声が上がらないと、気がつかないということだと思います。彼らが無意識に持つ日本人像がすでに差別的なわけです。

こうした問題について、先日、イギリスのインデペンデント紙にコラムを寄稿したところ、なんと、アジア系と非アジア系のルーツを持つアメリカ人俳優たちから共感のメッセージが届きました。「私たちもアジア系のはずなのに、ハリウッドの考えるアジア系アメリカ人に見えないという理由で、差別されてきた」と。

「私は両親が日本人と白人で、自分では日系アメリカ人だと思っているが、私は『ハリウッドが考える日系アメリカ人』の見た目ではないから、ハリウッドは私を日系アメリカ人の役で選ばない」と訴える人もいました。

日本人のハリウッド俳優と同じように、アジア系アメリカ人たちも、自分たちの差別について声を上げるチャンスはあまりなかったのでしょう。アメリカの公民権運動指導者、ジョン・ルイス(1940~2020年)の言葉で「Get in good trouble, necessary trouble(良いトラブル、必要なトラブルを巻き起こそう)」というのがあります。これは、和を重んじる日本の考え方の真逆となるわけですが、マイノリティーにとって非常に有効な戦い方なんですよ。まずは問題の存在自体に気づいてもらわなければ、その問題を解決する方向には一切動かないですよね。

――声を上げられずにいるマイノリティーの俳優は、まだまだ多そうです。

ハリウッドのある作品で在日(コリアン)の役を募集した時のことです。普通に考えたら在日の俳優を呼べばいいんですけれども、なんとハリウッドの製作陣は、韓国名で活動する俳優だけに限定していたんです。実際の日本社会では、韓国名で活動する在日の俳優は非常に少ないにもかかわらず、ハリウッドは、日本名を使っている在日の俳優を「在日」として認めず、排除したんですよ。

僕は「帰化した俳優も含め、日本名を使う在日の俳優が大多数なのに、それはおかしい」と抗議しました。在日もしくは元在日だと自ら公言し、日本名で活動する俳優のリストを送ったんですが、ハリウッドの製作陣は聞く耳を持たなかった。結局、日本で暮らす韓国名の在日の俳優ではなくて、アメリカ在住で韓国名を持った韓国系俳優、つまり韓国人か韓国系アメリカ人しかオーディションに呼ばなかったんです。

抗議し続けた結果、僕がクビにされました。ただ、その後、この製作陣は「これはやってはいけないことなんだ」と反省したのか、そのキャスティングが、少しだけまともになりました。

「ピンクパンサー2」で、感情豊かな機械オタクのケンジ役を演じた松崎悠希さん
「ピンクパンサー2」で、感情豊かな機械オタクのケンジ役を演じた松崎悠希さん。ハリウッド作品によって「寡黙な日本人像が変わった」という=本人提供

――ハリウッドでは、日本人への差別・偏見について、今まで誰も抗議してこなかったのでしょうか。

「ラストサムライ」(2003年)の頃は、ハリウッドで日本人の役者が使ってもらえるだけでも儲けもんだったんですよ。「ラストサムライ」が出た当初も、私含めほとんどの日本人が、トム・クルーズが日本に来てくれて、日本を題材にした作品に出てくれたことを、嬉しいし、ありがたいと思ったんです。たとえ「ラストサムライ」で描かれている「日本」がめちゃくちゃな描写だったとしても。よく見ると、民家に巨大な仏像があったり、ソテツが生えていたり、ゴルフ場みたいな所で合戦していたり。少し違和感があっても、みんな、目をつぶっていたわけですね。

ところが、僕たちがどれだけ指摘しても、その時は直るんですけど、別の作品、別のチームになると、また元戻りになる。それを繰り返していると、さすがに「いい加減に学ぼうよ」という気持ちになってきますよね。

つい数年前も、あるアメリカのコメディードラマで、金屏風や、ちゃぶ台、盆栽が並んでいて、その前で新聞を読むという「日本」のシーンがありました。また、アメリカのドラマ「高い城の男」(2015年)では、僕が合気道の先生を演じたんですが、道場の掛け軸に「ハブ薬局」って書いてあって「何じゃこりゃ!」と。そして、道場の奥には大きなドラが置いてありました。このレベルが、この20年間、ほとんど改善されていない。

しかも、そこにミックスルーツの日本人などへの差別がベースとしてあり、それすらも改善されてないわけです。その差別や偏見に基づいた、ステレオタイプの日本人像を変えなければ、マイノリティーの日本人を排除する差別的なキャスティングの構造も改善されないと思うのです。

合気道の道場にあった「ハブ薬局」と書かれた掛け軸
松崎悠希さんが出演したアメリカのドラマ「高い城の男」では、合気道の道場に「ハブ薬局」と書かれた掛け軸があった=本人提供

――私自身は母親が中国出身ですが、日本でも、ミックスルーツ像や日本人像が限定的に決めつけられていると感じています。日本の映画やドラマでも、ミックスルーツの俳優の出演は少なく、日本社会の多様性を映す鏡とは言えませんね。

日本では、ミックスルーツの日本人俳優を起用する場合、その「理由」をつけたがるんですよ。例えば、「今回はこういうストーリーだから、どこそこの国のルーツを持つ俳優が必要なんだ」と。

今の日本の映画やドラマでは、いわゆる「『日本人』に見える俳優」は普通に活躍しています。一方で「外見で『ミックスルーツ』とわかる日本人俳優」が、いわゆる「普通の日本人役」で登場しているのを見たことがありますか。非常に少ないですよね。実際の日本社会では、ミックスルーツの日本人は、「普通に」生活しているにもかかわらず、それが一切、映像の世界で反映されていないわけです。

なぜ、こんなことになってしまうのか。製作側・出演側にマイノリティー当事者がほとんどいないからです。マジョリティーからの視点に基づくと、多くの場合、マイノリティーが「普通ではないもの」として描かれ、発信されてしまう。そして、実社会でも偏見が無意識に刷り込まれるので、マイノリティーが差別的な扱いを受けることになるわけです。

――ミックスルーツの日本人俳優は、ハリウッドだけでなく、日本でも排除されていたんですね。

日本の映像業界ですら、こんな状況なので、たとえハリウッドの映画人が日本の作品から「本当の日本」を学ぼうとしても、その作品にもマイノリティーがほぼ存在しないわけですよ。特に、ハリウッドの映画人が大好きなクラシック作品内の日本像って、今の日本社会とさらにかけ離れているんですよね。彼らが、そうした作品にリスペクトを払うたびに多様な日本・日本人が、排除されていくのです。

ハリウッドがうたう「多様性」は建前で、実際は外見の問題なんですよ。様々な外見の俳優を起用することで、「人種的に多様ですよ」と見せているだけです。「ハリウッドが想定する外見の俳優」の中に入らない人は、全て排除されるんです。ハリウッドが「日本人をキャストしましたよ」と言っても、ミックスルーツの日本人は入ってこないわけです。

つまり、「多様性」とは言ってはいるものの、グラデーションのレインボーカラーではなく、レインボー1色1色が区切られている。境界線が曖昧なグラデーションにいる人々を排除しているのです。

ミックスルーツの日本人俳優たちは、ハリウッドの宣伝文句である多様性(ダイバーシティー)や包括性(インクルーシブネス)を信じ込み、日本から渡米します。そして、多くは2度目の失望を味わうことになるのです。

――ミックスルーツの私自身も、過去に「親が中国人だから、大ざっぱなの?」「中国の血が入っているのに、声が小さい」などと、言ってくる人が周りにいました。当時は、松崎さんのように抗議することはできず、今となって悔やんでいます。松崎さんがリスクを背負いながらも、差別や偏見と闘う原動力はどこにあるのでしょうか。

一人一人の言葉に反応して怒るのは、ものすごいエネルギーを使いますよね。しかも、その一人は直ったとしても、また別の人が同じ差別発言をするわけで、ずっと怒らないといけない。それなら、我慢すればいいと思うのは、仕方のない面もあります。

今でも、日本のドラマや映画では、ステレオタイプな中国人の描写が多いですよね。こうした描写は、人々が持つ中国人のイメージに、大きな影響を与えているわけです。

僕が声を上げるのは、そうしたマイノリティーのイメージを改善させるためなんです。それは、自分が同じような差別的な扱いを受けてきた過去の経験が、大きな原動力になっています。

僕は新人時代、ハリウッドで「Radio Silence」という短編の戦争映画に、零戦乗りの役で出演したことがあったんですよ。監督が撮影前、僕の役について説明しました。「私は日本兵を悪人だとは思わない。家族があり、一人の人間である日本兵を、激昂したアメリカ兵が打ち殺す、この理不尽さを描きたいんだ」と。

当時、ハリウッド映画では「日本兵=悪人」が常識でしたが、こういう考えの監督もいるのだと感動しました。僕の日本語のセリフは、「私は捕虜となってまで抵抗は一切しない。本国において私は死んだも同然だ」でした。

ところが、なぜか出演者で僕だけ完成披露試写会に呼ばれず、完成したビデオテープだけが送られてきました。再生すると、僕の日本語のセリフと英語字幕が全く違う内容だったんです。

「You must all perish. Soon your ship will sink. You and I, I take to the Bottom! (お前らは全員死ぬべきだ。この船はもうすぐ沈む。俺が海の底まで連れていってやろう!)」と、完全な悪役になっていたんですよ。ステレオタイプな日本兵のイメージを払拭できると思って出演したのに、騙されたわけです。怒り心頭でしたが、もうすでに手遅れでした。

その後、「硫黄島からの手紙」(2006年)では、嵐の二宮和也さんと同じ陸軍の一兵卒を演じました。この時、ようやくハリウッドが、日本兵を「普通の人間」として描いてくれたんです。この作品に参加できたことは自分の中でとても大きかったですね。

「硫黄島からの手紙」の撮影現場で、クリント・イーストウッド監督(右)と並ぶ松崎悠希さん
「硫黄島からの手紙」の撮影現場で、クリント・イーストウッド監督(右)と並ぶ松崎悠希さん=2006年4月、米カリフォルニア州バーストウ、松崎さん提供

――日本人やマイノリティーの役を「普通の人間」として自然に描くということは、重要ですね。

僕は、「ラストサムライ」(2003年)、ドラマ「ヒーローズ」(2006~2010年)、「ピンクパンサー2」(2009年)などに出演してきましたが、日本人が同じ人間として、世界中の視聴者に見てもらえるよう、努力は怠りませんでした。日本人が悪人だった時代からは、だいぶ「人間」に近づいてきた手応えがあり、特に、「ピンクパンサー2」のケンジは、感情豊かな機械オタクの役で、これまでの寡黙な日本人像が変わりました。

アメリカのドラマ「ニュースルーム」(2012年)で、東京電力の広報担当者を演じたことがありました。これは、原発事故について噓をつく役で、本当はやりたくなかったんです。「日本人は悪人」というイメージを助長したくなかったのと、被災地の風評被害につながるかもしれないと思ったからです。

それでも、ドラマが世に出ることはすでに決まっています。ならば私が出ることで少しでも改善できればと思い、オーディションを受けました。完全な悪人にはならないよう、人間の葛藤がにじむような演技を心がけました。また、事実とかけ離れないよう、作中の日本語のセリフは、実際の東電の会見をもとに、私が書き直しました。

実際に放送されたら、僕の予想と逆の反応でした。日本人の皆さんから叩かれると覚悟していたんですが、日本のテレビが描けないことをハリウッドが描いてくれたって喜んでいる人が多くて。これは、東電の広報官が「悪人」ではなくて、追い込まれた1人の人間が会社のために嘘をついているという描写だったから、共感を呼んだのだと思います。叩かれるリスクを背負ってでも、出演した意義があったなと思いました。ちなみに、出演料は全て福島県の災害対策本部に寄付しました。

――松崎さんは、マイノリティーの俳優が出演する短編ドラマ「モザイク・ストリート」を製作しましたね。今年2月、YouTube上で公開され、日本語圏と英語圏の両方で大きな反響がありました。

見ている人に「マイノリティーのいる世界」が普通だという体験をしてもらうことが目的の一つです。

無料公開するために、出資には頼らず、全て僕の自腹で作りました。逆に言うと、多様性のある作品って、個人のレベルでも作れるものなんです。

じゃあ、なんで日本やハリウッドの皆さんに、こういった作品が作れないんですか?と言いたかったんです。実際、映画人の方々からも反応があって、「モザイク・ストリート」の影響を受けて、製作され始めた作品もあります。

松崎さんが作ったドラマ「モザイク・ストリート」=松崎さんのYouTubeチャンネルより

我々は、これまでマイノリティーの役を、マジョリティーの俳優が演ずることに、あまり疑問を抱いてきませんでした。ゲイやレズビアンなどの場合は「挑戦的な役」「難しい役」と言って褒め称える風潮すらありますね。マジョリティー側の視点しかないから、「禁断の愛」などと、あり得ない表現で宣伝してしまうのです。

でも、これからは変わっていかなきゃいけない。そういう風が吹き始めています。

和を保つことは同調圧力となり、誰かを抑圧してしまうことがあります。一人一人が和を保とうとすることで、無意識に差別を肯定することにつながっているかもしれないのです。

だから、僕は、少しぐらい和を乱すことになったとしても声を上げ続けたいと思っています。

「モザイク・ストリート」の出演者たち。右から、松崎悠希さん、グレイス・エマさん、コウタさん、Ami Ide(アミ・イデ)さん、渡辺裕之さん
「モザイク・ストリート」の出演者たち。右から、松崎悠希さん、グレイス・エマさん、コウタさん、Ami Ide(アミ・イデ)さん、渡辺裕之さん=2021年7月、東京都八王子市、藤えりか撮影