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新型コロナでも問題に 外国人風の容姿の人に出身を聞く「ルーツ探偵」

ニッポンあれやこれや ~“日独ハーフ”サンドラの視点~ 

世界で猛威をふるっているコロナウイルス。仕事がリモートワークとなったり、プライベートでもなるべく人と会うことを避けるなど、人とかかわること自体が少なくなっています。コロナウイルス以外の話題はニュースで「埋もれてしまいがち」でもあります。今回は今月上旬に行われたドイツのIntegrationstag(和訳:統合サミット)をはじめ、そんな埋もれてしまった話にスポットを当ててみたいと思います。

自らのルーツに触れたドイツのメルケル首相

コロナウイルス騒動が始まったばかりのころ、ヨーロッパではアジア系の住民への差別が問題となっていました。でも「何々人に見える」というふうに「人を肌の色などの見た目で判断する」ことはコロナウイルスが登場する前から行われてきました。先日ドイツのメルケル首相がドイツ政府によるIntegrationstag(和訳:統合サミット)のスピーチの中でそういった理不尽について語りました。

メルケル首相はこう語っています。「私は曽祖父がポーランド人です。私自身は「4代目」ですね。けれども、誰も私を見て「統合の余地はあるか?」と疑問は持ちませんし、私はドイツで「貴方はどこから来たの?」とも聞かれません。しかし黒人の人は私と同じ4代目であっても常に「貴方はどこから来たの?」と聞かれてしまいます。理由は彼らはこの国(ドイツ)でマイノリティーにあたる肌の色をしているからです。ドイツで学校に通い、キャリアを築き、子供を持っても(それらのことはまるで無視され)相手から聞かれる一番最初の質問は決まって「貴方はどこから来たの?」です。答えは「ドイツ」であるにもかかわらず、です。前に黒人の俳優さんが私に言いました。「僕には犯罪者の役柄しかまわってこない。僕も市長さんの役をやりたいよ」と。現時点でもこういった問題はあるわけですから、現状を変えるために、私たちはこのことについて考えなくてはいけません」

短いスピーチの中で「今さら統合なんて必要なの?と聞く人がいますが、それは必要です」とはっきり語っていたのが印象的でした。

ドイツのテレビ司会者による「ルーツ探偵」が問題に

ドイツには外国にルーツを持つドイツ人が多いにもかかわらず、白人でないドイツ人はあいかわらず初対面で「どこ、出身?」と聞かれがちです。ドイツで育ち、ドイツ語を話し、ドイツ国籍であるのに、毎回同じ質問をされることは当事者からしてみれば理不尽に感じます。ところが白人のドイツ人のなかには「そんなのは気にし過ぎだ」と考える人も少なくなく、温度差が目立ちます。

昨年、ドイツのテレビ番組に出演した小学生の女の子に対して司会者のDieter Bohlen氏が「君は、どこ出身?」と聞き、女の子が「Herne」(ドイツの町の名前)と答えているにもかかわらず、司会者が「お母さんとお父さんはどこ出身?フィリピン……?」と聞き返しました。女の子は「親もHerne出身」と答えますが、Bohlen氏は納得せずに、またもや食い下がり、女の子に「元々は、どこの国の出身なの?」と聞きます。女の子が「わからない」と答えるも、司会者が更に「おじいちゃんとおばあちゃんは、どこ出身?」と質問をしする様子がテレビで放送され、さすがにこれはやり過ぎなのではないかとドイツで物議を醸しました。

実はその後、観客席にいた母親が「タイ」と答えていますが、最近のドイツでは、この司会者のように「元々は、どこ出身?」としつこく聞く人のことを皮肉をこめてWurzeldetektiv(和訳:「ルーツ探偵」)と言います。探偵のごとく、白人風の容姿をしていない人に対して、しつこくルーツを聞き出す人のことを指す言葉です。

子供に対して好奇心丸出しの「ルーツ探偵」をしてしまい、非難を浴びたBohlen氏でしたが、同氏は今年の2月にも、同番組に出演した女性の「Siegen(ドイツの町の名前)出身です。」という自己紹介に対して、「え~?でも両親は?(どこ出身なの?)」と食い下がりました。

これに対して、トルコ出身のドイツ人ジャーナリストであるFerda Ataman氏は「Bohlen氏はまたもや『ルーツ探偵』をしている。」とツイートし非難しています。

「その人の元々のルーツを聞き出す」という行為は、質問する側にとっては単なる好奇心の場合が多いのですが、質問された側からすると、その国(この場合はドイツ)での自分の歩みやキャリアを否定されたも同然です。長くその国で暮らしてきたにもかかわらず、「まるで観光客のような扱い」をされてしまうわけです。

最近のドイツでは「容姿が昔ながらのドイツ風ではないドイツ人もいるのだから、元々のルーツをしつこく聞き出すのは失礼だ」と考える人も増えてきています。一方、日本の場合は「日本人風の容姿でない人も日本人である」という考え方をする人はまだ少ないように感じます。日本で「多様性」が語られるときは、「色んな日本人がいる」というよりも、どちらかというと「ルーツについて語りましょう」「色んな国の文化を大事にしましょう」という点が重んじられているように思います。

ドイツのサッカー試合の観客席から追い出された日本人

最近、危険とされる国の対象国が増えるなど、2~3日前の情報はもう「古い」といえるほど、新型コロナウイルスに関する情報は毎日変化しています。3月上旬にはドイツのRBライプツィヒの保安関係者が何の根拠もなくサッカー試合を観戦中の日本人観光客20人を追い出したことが人種差別だと話題になりました。白人風の容姿をしていない日本人が保安関係者の目に留まってしまったという、まさに「見た目で判断」の悪い例だといえます。

冒頭に書いた通り、コロナウイルス騒動が始まった当初、ヨーロッパではアジア人が主に差別対象でした。しかしその後、イタリアやドイツなどで感染者が急激に増え、今のヨーロッパでは「誰もが(感染を)疑われる立場」となり、当初と比べると「白人でないからコロナ感染を疑われる」例は少なくなってきているようです。ウイルスが全世界に広がったことで、世界中の人が「同じ悩み」を抱えることになったのは、なんとも皮肉な話だといわざるを得ません。