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「フィリピンと日本、2つのルーツは私の強み」秋元才加が学んだ、共生のヒント

World Now
俳優の秋元才加さん=山本和生撮影

あきもと・さやか  1988年生まれ。2006~13年、アイドルグループ・AKB48で活躍。今年公開の「山猫は眠らない8 暗殺者の終幕」でハリウッドデビュー。14年からフィリピン観光親善大使。

■人と違う自分への周囲の目

――AKB48に入って、すぐにフィリピン人と日本人のミックスだと公言しました。

いろんなメンバーがいる中で、二つの国のルーツを持っているのは私の個性。一つの売りになると思いました。芸能界に入る前は普通に公言していたので。最初は「言わなくていい」と言われ、やっぱり欧米系のミックスと、東南アジア系とは違うのかなと感じました。それでも半年ぐらい考えて、やっぱり自分を差別化する強みだという気持ちになりました。

――自分がほかと違う存在だと気づいたのは、いつごろですか。

フィリピンで生まれて、すぐ日本に来て、千葉県松戸市のアパートに住んでいました。当時は今ほどミックスの子はいなくて、小学校に数人ぐらい。春休みの思い出を発表する授業で、フィリピンでTシャツを着てお葬式に出たり、ティラピアっていう魚を、母が揚げて食べたりした話をしました。すると、「なんだよ、それ。おかしいじゃん」みたいな雰囲気になって。みんなとどうやら違うらしいと気づいたのは、その頃でした。

俳優の秋元才加さん=山本和生撮影

――いじめもあったのですか。

同級生からは「フィリピン人」と呼ばれ、たぶん下に見ているんだろうなとは伝わってきました。先生に、幼児洗礼であけたピアスの穴や、染めた髪を注意されたこともありました。でも、フィリピンでは一般的なことなので、何が悪いか分かりません。いちいち「違う」と言われるのが面倒くさくなって、学校に提出する日記も日本ナイズした内容にしたり、母親のことは書かないようにしたりするようになりました。

両親から「悔しかったら勉強して、いつか見返せるようになりなさい」と言われていましたが、裕福でなかったので塾には通えない。学校の焼却炉近くに捨ててある教科書や参考書を持ち帰り、放課後は先生に「ここを教えてください」と、ずっとへばりついていました。見返したいという気持ちは、今でもあります。

俳優の秋元才加さん=山本和生撮影

■違うことへの耐性、低いのでは

――家庭でも異文化の問題で困ったことはありましたか。

実は大人になってから、母に日本語で話しても、半分ぐらいしか理解していないと気づいたんです。母は来日前、日本語が全くしゃべれず、テレビの子ども番組を見ながら少しずつ覚えていったそうです。最近、私が英語で会話できるようになって、ようやく細かいニュアンスが伝えられるようになりました。

子どもの頃から母に深い話をした記憶が無く、学校の書類も自分で調べて書きました。両親のことも客観的に見ていて、夫婦でも文化が違うとこんなにも分かり合えないものなのかと思っていました。

――達観した感じの子どもだったんですね。

その頃から、人って基本、分かり合えないものと考えています。家族でさえ分からないのだから、他人様のことなんて分かるはずがないと。私は子どもの頃からフィリピン人など、いろんな外国の方と触れ合ってきたので、「違う」ことへの拒絶感があまりない。その点、日本の方は日本のコミュニティーだけで過ごすことが多いから、違和感への「耐性」が結構低いと思うんですよ。大事なのは、「得意なことは協力しよう」と「最低限、人に迷惑をかけないように心がける」という気持ちではないでしょうか。私は、それ以上のものは期待していません。

■「あなたの文化」を思いやる心

――そんな秋元さんから日本の社会はどのように見えているのでしょうか。

まずは「純日本人か」「純じゃないか」みたいな考えが無くなったらうれしいですね。いまだに「嫌なら国に帰れよ」とネット上で言われますから。私、日本人だし、みたいな。伝統芸能やアニメ、その他にも日本には素晴らしいものがたくさんあります。私も日本人だから日本の文化を守りたい。でも、今のやり方が正しい守り方なのか、時に疑問に思うこともあります。

俳優の秋元才加さん=山本和生撮影

――外国人労働者についてはどうでしょうか。

今は時代の過渡期。もうちょっと門を開けてもいいのかなと思います。もはや外国人労働者に頼らない社会は難しく、世界基準に合わせないと、日本がどんどん縮小していきそうな気がします。移民を受け入れてきた海外では、まだまだ解決していない問題もありますが、乗り越えようとしながら今がある。日本がそれを避け続けていたら、世界との距離もどんどん広がっていくのでは、という不安もありますね。

――ただ、文化や習慣の違いからあつれきも生まれています。

日本に住んでいるんだから「郷に入っては郷に従え」と言う人の気持ちもわかるし、そうしなきゃいけないこともあるとは思う。でも、「あなたの文化はこうなのね」と歩み寄って、思いやる気持ちが共生への第一歩。簡単には言えないけど、あきらめたら歩みは止まっちゃうんだろうなって思います。

俳優の秋元才加さん=山本和生撮影

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