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女性監督、女性主演の韓国映画、続々日本へ 今月「夏時間」公開

現地発 韓国エンタメ事情 更新日: 公開日:
「夏時間」主人公オクジュ(右)と弟のドンジュ (C)2019 ONU FILM, ALL RIGHTS RESERVED

近年の韓国映画の特徴の一つは、女性監督作、女性主演作が目立って増えていることだ。近く日本で公開される作品としては、ユン・ダンビ監督の「夏時間」が挙げられる。ユン・ダンビ監督は1990年生まれの女性監督で、「夏時間」が長編デビュー作だ。主人公は女子高校生のオクジュ(チェ・ジョンウン)。

ユン・ダンビ監督

若手女性監督の長編デビュー作で、主人公が10代の女の子といえば、昨年日本でも公開され、話題になったキム・ボラ監督の「はちどり」がある。50冠の「はちどり」ほどではないが、「夏時間」もロッテルダム国際映画祭をはじめ、韓国内外で多数受賞し、高い評価を受けた。

「夏時間」の原題は「ナムメの夏の夜」で、ナムメは漢字で「男妹」と書き、姉と弟、または兄と妹を指す。「夏時間」には、二組のナムメが登場する。一組は、オクジュと小学生の弟ドンジュ(パク・スンジュン)、もう一組はオクジュのお父さん(ヤン・フンジュ)と、お父さんの妹ミジョン(パク・ヒョニョン)だ。

オクジュのお母さんは離婚して家にいない。学校の夏休みの間、お父さんとオクジュ、ドンジュの3人は、一人暮らしのおじいちゃんの家で過ごすことにしたが、そこへミジョンも加わっての5人生活が始まる。ひと夏の5人暮らしを描いた映画だ。

おじいちゃんの家の存在感が非常に大きく、むしろ家が主人公と言ってもいいくらいだった。多くの人の郷愁を誘う、昔ながらの二階建ての家。日光がたっぷり入ってくる造りで、庭には緑がいっぱい。韓国はマンションが増え、再開発も多く、昔ながらの一戸建ては珍しくなりつつある。誰かが長年住んだ痕跡の見える家は、それだけで懐かしく感じる。

実は現に人が住んでいる家だったが、ユン監督がこの家にほれこみ、住人のいる状態で家の中でシナリオを書き、撮影中は一時的に移動してもらったのだという。

ひと夏を共に過ごす5人の家族 (C)2019 ONU FILM, ALL RIGHTS RESERVED

ミジョンは当初、体調の優れないおじいちゃんのために来たが、実は夫とけんかして家を出てきたらしい。オクジュとドンジュは複雑な大人の事情を身近に感じながら、お母さんに会いたい思いを秘めている。お母さんのことをめぐってケンカするオクジュとドンジュ、おじいちゃんの家をめぐって関係がぎくしゃくするお父さんとミジョン。ノスタルジックな空間で、誰もが経験するような家族の現実的な葛藤、そしておじいちゃんを囲む温かいひと時が印象的だった。

1月に日本で公開された「チャンシルさんには福が多いね」も女性監督、女性主演。映画プロデューサーのチャンシルさん(カン・マルグム)が失業するところから始まるが、キム・チョヒ監督自身がホン・サンス監督作のプロデューサー出身で、自身の経験がモチーフになっている。これまであまり映画の主人公として描かれることのなかったアラフォー独身女性だが、実際は多いはず。日韓の多くの女性の共感を生んでいるようだ。

3月公開予定「野球少女」のチェ・ユンテ監督は男性だが、主演は、日本でも人気のドラマ「梨泰院クラス」でトランスジェンダーのマ・ヒョニ役を演じたイ・ジュヨン。天才野球少女を演じ、プロ野球という男の世界に挑む。

日本では小説「82年生まれ、キム・ジヨン」をきっかけに韓国のフェミニズムへの関心が高まり、その流れでこれら女性監督や女性主演の映画にも注目が集まっているようだ。2018年に韓国で広まった#MeToo運動で映画界でも大物監督、著名俳優が次々告発されたことにも起因しているが、実力ある女性たちの活躍の機会が増えてきたのは映画ファンとしてもうれしい限りだ。